拓真の友達
──さらに数年後。
手元のスマートフォンが震える。
それは、かつて一緒に研究をしていた木村からのメッセージだった。
送られてきたのは写真。
制服姿の少女。屈託のない笑顔。
『中学生になりました』
緋依は、ゆっくりと打つ。
『本当に大きくなられましたね。木村さんも、娘さんも幸せそうで何よりです』
送信。画面が暗くなり、顔を上げる。
緋依が立っている場所。そこは墓地だった。
風が静かに吹いているのを感じる。
私は、目の前の墓石に花を供えてから、手を合わせる。
(今まで、いっぱい振り回してごめんね)
指先がわずかに震える。
(あなたを追いかけて、あなたを使って、あなたに縋ってしまった)
風が、頬を撫でる。
(もう、楽になってね)
長い沈黙。
(あなたのお陰で、たくさんの人がこれから幸せになるよ)
研究は完成した。救われる人がいる。以前とは違って、やり直せる家族がいる。
(本当にありがとう)
息を吸う。
(そして、さようなら)
瞼の裏に、笑顔が浮かぶ。
(私の一番大切な人)
ゆっくりと目を開ける。空は、どこまでも静かに晴れていた。
その時、背後から声がした。
「あの、もしかして緋依さんだったりします?」
振り返ると、青年が立っていた。落ち着いた雰囲気で、穏やかな声だ。
「……どなたですか?」
緋依は手を合わせたまま、警戒を抱えつつ尋ねた。
「私は、拓真の一番の親友の優心です」
そこに立っている男性は、少し肩をすくめて、緊張した笑みを浮かべる。
彼の口調は自然で、硬すぎず柔らかすぎず、丁寧な敬語だった。




