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宇宙人のスパロボが現代日本で発見されたようです ~国家予算で全力解析(リバースエンジニアリング)します~  作者: パラレル・ゲーマー


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第2話 鷲の眼(Eagle's Eye)

2025年12月13日 04:18(EST / 米国東部標準時)

2025年12月13日 18:18(JST / 日本標準時)

アメリカ合衆国 ヴァージニア州 シャンティリー

国家偵察局(NRO) 軌道監視センター 第4解析室(アジア・太平洋担当)


 静寂。

 数百のサーバーが発する低い唸り声と、空調の風音だけが支配する巨大な空間。


 「異常アノマリー」の第一報は、当直の画像解析官の小さな呟きから始まった。


「おい、冗談だろ。……バグか?」


 解析官のジム・コリンズは、メインモニターに表示されたスペクトル画像を何度もリフレッシュした。


 担当する偵察衛星『KH-15(通称:キーホール)』は、現在日本列島上空の静止軌道から、地上の解像度一〇センチメートルという精度で監視を続けている。


「どうした?」


 上級解析官が、背後から覗き込む。


「長野県南部、南アルプス山中。座標N35・36、E138・03。……データが『欠落ロスト』しています」

「欠落? 雲でもかかっているのか?」

「いいえ、光学映像ではありません。合成開口レーダー(SAR)と、重力偏差計の数値です」


 コリンズはキーボードを叩き、3Dマッピング画像を呼び出した。


 画面上の日本列島は、地形データに基づいて精密に描画されている。

 しかし南アルプスの一点、リニア新幹線の工事現場周辺だけが、ぽっかりと黒い穴――『無』になっていた。


「レーダー波が返ってきません。吸収されているのか、散乱しているののか。……いえ、もっと奇妙なのは重力値です」


 コリンズは声を震わせた。


「この『穴』の中心部、重力加速度がゼロ……いや、マイナスを示唆しています。局所的な反重力反応。ありえません。計器の故障でなければ、そこに『地球の物理法則に従わない質量』が存在することになります」


 上級解析官の目が険しくなる。


「日本の地下核実験か?」

「放射線反応は皆無です。熱源反応もなし。ただ、そこにあるはずの空間が『認識できない』のです」

「……他国の衛星の動きは?」

「中国の『高分ガオフェン』シリーズが、三〇分前から軌道を修正しています。奴らも気づいたようです」


 上級解析官は、即座に赤い受話器を掴んだ。


「ペンタゴンへ回せ。レベル1のアラートだ。日本が山の中で『ブラックホールもどき』を作っている可能性がある」


2025年12月13日 05:00(EST)

アメリカ合衆国 メリーランド州 フォート・ミード

国家安全保障局(NSA) 中央作戦室


 NROからの物理データ異常検知を受け、世界最大の通信傍受機関であるNSAも、また別の角度から「日本の異変」を捉えていた。


「日本国内の通信トラフィックおよびパケット解析結果が出ました」


 東アジア担当の分析官が、壁面の巨大スクリーンにグラフを投影する。


「本日1300(日本時間)以降、長野県飯田市周辺の携帯電話網および警察無線において、特定キーワードの出現頻度が爆発的に上昇しています」

「キーワードは?」

「『崩落』『事故』が上位ですが、1400以降、奇妙な語句が混じり始めました。『消失』『老化』『銀色の壁』……そして『タイムスリップ』です」


 作戦室長が眉をひそめる。


「タイムスリップ? SNSのデマか?」

「いえ、発信元は現場の警察官および消防隊員の業務用無線、並びに暗号化されたJR東海の社内回線です。デマにしては、発話者の音声ストレス値が異常に高い。彼らは『現実に起きていること』として報告しています」


 さらに分析官は、別のウィンドウを開いた。


「そして決定的なのがこれです。1530、内閣官房副長官・海堂蓮の公用回線から、防衛省および文科省の特定人物への発信履歴を確認。その後、官邸地下の危機管理センターが『レベル5(最高機密)』の遮断モードに入りました」

「官邸が口を閉ざしたか」

「はい。さらに一〇分前、陸上自衛隊松本駐屯地から車両部隊が出撃。行き先は当該事故現場。……不可解なのは、彼らが装備しているのが武器ではなく、化学防護車と『大型の輸送用コンテナ』である点です」


 作戦室長は腕を組み、天井を仰いだ。


「……物理的な重力異常。現場のパニック。そして自衛隊による極秘回収作戦。日本政府は、我々に黙って何かを掘り起こしたな」

「新資源でしょうか? それとも旧日本軍の遺産?」

「わからん。だが同盟国われわれに隠蔽しようとしている時点で、それは『日米安全保障条約上の脅威』になり得る」


 室長は決断を下した。


「ホワイトハウスへ報告。CIAとも情報を共有しろ。……東京の『協力者エス』を動かせ。海堂副長官が何を隠しているのか、今日の夕食のメニューまで洗い出せ」


2025年12月13日 06:15(EST)

ワシントンD.C. ホワイトハウス 地下

状況判断室シチュエーション・ルーム


 早朝にもかかわらず、重厚な会議テーブルには国家安全保障会議(NSC)の主要メンバーが顔を揃えていた。

 コーヒーの香りと、張り詰めた緊張感が漂う。


「結論から言おう。日本は何か重大な発見をした。あるいは重大な事故を起こした」


 国家安全保障担当大統領補佐官ロバート・ケインが口火を切った。


 手元にはNROの衛星写真と、NSAの通信解析レポートが束ねられた極秘ファイル『Blue Folderブルーフォルダー』がある。


「南アルプスの地下で検知された重力歪曲反応。これは既存の兵器カテゴリーには当てはまらない」


 国防長官が頷き、補足する。


「統合参謀本部の分析では二つの可能性が示唆されています。一つは、日本が秘密裏に開発していた次世代エネルギー・プラントの暴走。もう一つは……地球外、あるいは未知の起源による『オーバーテクノロジー物体アーティファクト』の発見です」


「宇宙人の船だとでも言うのか?」


 国務長官が呆れたように言った。


「映画の見過ぎだ」


「笑い事ではありません」


 国防長官は真顔で返した。


「NROのデータは正確です。あの地点だけ、物理法則がねじ曲がっている。もし日本がこの技術――仮に『重力制御技術』だとしましょう――を独占し軍事転用した場合どうなるか。……インド太平洋のパワーバランスは崩壊します。第七艦隊は無力化され、我々の核抑止力すら意味をなさなくなる可能性がある」


 室内がざわめいた。


 同盟国である日本が、アメリカを超える技術を持つ。

 それは彼らにとって、悪夢以外の何物でもない。


「中国の動きは?」


 ケイン補佐官が問う。


 CIA長官が答えた。


「北京も嗅ぎつけています。すでに在京中国大使館を通じて、日本外務省へ『リニア工事現場での環境破壊に関する懸念』という名目で探りを入れています。ハッキング部隊も総動員されているでしょう。日本政府のセキュリティなど、彼らにかかれば紙くず同然です」


「日本政府に、我々が守ってやる必要があるな」


 ケイン補佐官は冷徹に言った。


「日本単独では、この『未知の物体』を管理しきれない。中国に奪われれば最悪だ。その前に我々が『保護』し、適切な『管理下』に置く」


「どう動く? 大使を通じて正式に引き渡しを要求するか?」


 国務長官の問いに、ケインは首を振った。


「いや、まだ早い。今の段階で公式に要求すれば、日本側は『ただの事故だ』とシラを切るだろう。証拠がない。それに、あまり露骨に圧力をかければ、日本のナショナリズムを刺激し、逆に中国側へ接近させるリスクもある」


 ケインは指先でテーブルを叩いた。


「まずは揺さぶりだ。日本政府が『隠し通せない』と悟るまで、外堀を埋める」


【作戦コード:サイレント・プレッシャー】


情報の確証:在日米軍およびCIA東京支局を総動員し、現地のヒューミント(人的諜報)で「物体の正体」を視認する。写真一枚でもいい、決定的な証拠を入手せよ。


外交的圧力:国務省ルートで「長野県における異常な地殻変動に対する共同調査」を打診する。断られれば「在日米軍基地への影響懸念」を理由に、独自の調査(偵察機による強行監視)を示唆する。


軍事的示威:空母『ロナルド・レーガン』を緊急出港させよ。名目は「朝鮮半島情勢に対応するための緊急展開訓練」。だが、その進路は日本海側、長野を射程に収める位置に配置する。


「総理大臣官邸内の協力者は?」


 CIA長官が薄く笑う。


「何人か飼っています。海堂副長官の周辺にも情報のパイプはある。……彼らが『物体』をどこへ運ぼうとしているか、追跡させます」


「よろしい」


 ケイン補佐官はファイルを閉じた。


「大統領には私が報告する。……いいか、これは『同盟国支援』だ。我々は友人を助けるために動く。だが、その友人が危険なオモチャを持っているなら、取り上げるのも大人の義務だ。……絶対に日本に独占させるな」


2025年12月13日 21:30(JST)

東京都港区 六本木 某高級ホテル バーラウンジ


 ジャズが静かに流れる薄暗い店内。


 窓際の席で、経済産業省の若手官僚がグラスを片手に震えていた。


 彼の向かいには、仕立ての良いスーツを着た白人男性が座っている。

 表向きはアメリカの通信社特派員だが、その正体はCIA工作員ケース・オフィサーだ。


「……話が違うじゃないか。僕はただ、通商交渉の資料を渡す約束だったはずだ」


 官僚が小声で抗議する。


 工作員は優雅に微笑み、封筒を差し出した。

 中身はドル紙幣の束ではない。この官僚の「個人的なスキャンダル」に関する資料だ。


「落ち着いてください。新しいお願いがあるだけです。……今日、官邸で開かれた極秘会議。海堂副長官が出席した会議です。そこで何が話し合われたか、知りたい」


「知らない。僕は担当外だ」


「でも同期がいるでしょう? 内閣官房や防衛省に。……今、長野から『何か』が運ばれてきている。違いますか?」


 官僚は顔面蒼白になり、周囲を憚るように視線を泳がせた。


「……言えない。言ったら僕は消される」

「日本政府にそんな度胸はありませんよ。でも我々に協力しなければ、この写真は明日、週刊誌の編集部に届きます」


 長い沈黙。

 氷が溶ける音が響く。


 官僚は観念したように、搾り出すような声で囁いた。


「……『クロノス』」

「なんです?」

「コードネームだ。……会議のメモを盗み見た同期が言っていた。……彼らは『クロノス』を解析しようとしている。……場所は市ヶ谷じゃない」

「ほう。ではどこへ?」

「……代々木だ。かつて大日本帝国陸軍が使っていた地下壕。あそこの最深部にある対核兵器用のシェルターだ」


 工作員は満足げに頷き、スキャンダルの資料を官僚の手元に押しやった。


「素晴らしい。ご協力に感謝します。……今夜のことは忘れましょう」


 男が去った後、工作員は店を出て、路地裏でスマートフォンを取り出した。


「ターゲット確認。コードネームは『クロノス』。輸送先は代々木地下壕(Yoyogi Bunker)。……至急、監視チームを回せ。衛星の焦点も合わせろ」


2025年12月13日 22:45(JST)

東京都内 首都高速道路 4号新宿線 代々木付近


 渋滞の列の中に、一際異様な集団がいた。


 前後を警視庁の覆面パトカーに守られた、国籍不明の黒塗りのトレーラー。


 運転席には、私服を着た陸上自衛隊・中央情報隊の隊員が座っている。


「マル機(機動警察通信)、現在位置、代々木出口手前。後方に尾行車両なし」

「了解。地下搬入口を開放せよ」


 コンテナの中身は、厳重に電磁シールドが施されている。


 だが、それでも漏れ出る微弱な波動は、空の彼方の監視者(KH-15)と、地上で待ち受ける諜報員たちのセンサーを刺激し続けていた。


 アメリカという巨人が、その「目」を完全に開いた瞬間だった。


 彼らはまだ知らない。


 自分たちが手に入れようとしているのが、単なる兵器ではなく、人類の手に余る「神」そのものであることを。


(続く)

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