表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/64

第八話 新たな町へ。対策を

「や、やっと町に着きそうですね」


 フィーラが道の先を指差す。そこには小さな町の入り口があった。


「なんとか、辿り着けましたね」


 ここに至るまでに、いったい何体の魔物を討伐しただろうか。もはや数えることすら厭わしい。


 終わりの見えない魔物の大群に、シエステラたちは心底辟易していた。


 いっそ無視してしまいたいくらいの数だったが、近くには町もあるため、仕方なくすべてを駆逐していき、気付けば日も沈みかけていた。


(というか、あれだけの魔物が発生するなんて、各国の騎士団が協力して、大規模な討伐作戦が遂行されるレベルですよ。これもすべてニコラのせいだとしたら……)


 シエステラは遠目に町を捉え思案顔で立ち尽くした。そして、おもむろに口を開く。


「このまま、町に入るわけにはいきませんね」


 その言葉に、フィーラとニコラは真剣な表情を浮かべる。


 シエステラたちの道中は、まるで魔物の巣窟を歩いているかの如く大量の魔物が襲ってきた。


 もしそれが、この町でも起きるとなれば、町への被害は図り知れない。何の対策もなく、町に入るわけにはいかなかった。


「やっぱり俺は、町の外にいた方がいいよな」


 ニコラは苦笑いを浮かべて言う。

 その表情には諦めの色が色濃く滲んでいて、今までもずっと同じような思いを抱えていたのだろうことが見て取れた。


 ニコラの提案に、フィーラは強く頷いてそれを肯定する。しかし、シエステラは優しく首を振ってそれを否定した。


「そんな選択肢はありませんよ。私たちは一緒に旅をしているのですから」


 笑顔の裏でシエステラは、ニコラを馬鹿にしたように頭の中で呟く。


(というか、そんな仲間はずれみたいなことをしたら、聖女の名に傷が付くでしょうが)


 シエステラの本音は、あくまで自分本意のものだったが、ニコラはそんなシエステラに感動を覚えていた。


(シエステラは本当に優しいんだな。俺みたいな厄介者を見捨てる気なんてまったくないんだな)


 不運な身の上のせいで厄介者扱いばかりされていたニコラにとって、一見、優しさに見えるシエステラの対応は、味わったことのない暖かなものだった。


 だからこそ、シエステラに迷惑をかけるようなことはしたくなかった。


「でも、どうするんだ? 俺が近くにいるだけで不運なことが起きるのに」


(は? それは私の力があなたに劣っていると言いたいのですか?)


 ニコラの言葉の裏を取り違えているシエステラは口の中で舌打ちをする。しかし、それを表に出すようなことはなく、聖女の仮面を保ったまま平静を保って口を開いた。


「私がこの辺り一帯を守る結界を張ればいいだけですよ」

「そんなことまでできるのか?」


 聖女の加護は、この世界で最も強力な力だとされている。ましてや、歴代最高と称されるシエステラであれば、この辺り一帯の魔物が近付けないようなバリアを張ることは造作もない。


「えぇ、もちろんできますよ。ただし一つだけ問題がありますが」

「問題?」

「その場合、魔物が結界の外側に溜まってしまうのですよね」

「あー」


 シエステラの結界は、魔物たちを完全にシャットアウトする。その結果、行き場を失った魔物たちが結界の外で大渋滞を引き起こす可能性があった。


 結界の外側にいる無関係な人間に被害を与えたくないシエステラは躊躇していたが、


「その点については、私たちの方でなんとかしましょう。定期的に神官たちが結界の外側を点検し、駆逐すればなんとかなります」


 フィーラの対策にシエステラが心配そうに眉を下げる。


「でも、それだと皆さんの仕事が」


 シエステラが心配するのは、神官たちの仕事の負担だ。


 しかも今は、最高責任者である神官長フィーラが不在となっており、普段よりも遥かに忙しくなっているはずだった。


 そんな中で新たに仕事を増やし、負担を増えることをシエステラは躊躇していた。


 しかし、フィーラは特に気にした様子もなく、首を横に振る。


「問題ありません。実は神官たちは交代交代で遠巻きに私たちのサポートをしています。それに魔物の討伐が加わっても大した差はないでしょう」

「まあ、そんなことを」


 神官たちとの話し合いの結果、同行するのはフィーラ一人で、他の神官たちは教会に残ることになっていたはずだった。


(大丈夫だからいらないと言ったのに、フィーラは本当に心配性ですね)


「わかりました。それなら問題はなさそうです。町にいる間は被害が出ないように結界を張るようにしましょう」


 そう言って、シエステラは手の内に魔力を集めた。小さく淡い光が凝縮され一気に広がる。それは町の中心へと移動し、そこからドーム状に町を包み込んだ。


 町への被害を最小限にするために、円は大きめに設定する。


 ニコラのスキル『不運』がどこまで影響を与えるのかわからないため、シエステラはできるだけ大きな円を作っていた。


 完成した結界は透明化し、誰にも気付かれることはない。


「おぉ、すごいな」


 ニコラは感心した様子でシエステラを見る。


(ふふ、良い反応です)


 最近はニコラのスキルのせいで、あまり聖女の力を見せつけることができていなかったシエステラだったが、裏表なく素直に感心するニコラに満足げに胸を張る。


「さて、それでは町に入りましょうか。少し疲れてしまいましたし、ゆっくり休みたいです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ