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不登校男子、顔出しナシでバズった結果→元委員長Vと恋愛コラボするハメに  作者: はりねずみの肉球
【第1章 】 顔を隠して、声だけで世界とつながるはじまり
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もうひとつの夜明け

その日の夜、俺は再び配信ソフトを立ち上げる。

 昨日よりは少しだけ心が落ち着いている。話したいことも、頭の中で整理できている。それに、自分の声が「悪くないかも」だなんていう小さな自信もある。

 開始の合図を出す前に、ふと手を止める。ヘッドホンをつけ、マイクを軽く撫でながら自分に言い聞かせるように呟く。


「俺、今までは“顔”でしか評価されてこなかった。……でも、これからは“声”で勝負できる。顔を見せなきゃ、誰も俺を“美少女”なんて茶化さないから」


 ここには、自分をバカにするクラスメイトも、陰でSNSに投稿する連中もいない。コメントを書き込むリスナーはいるかもしれないけど、その人たちに見えているのは俺のアバターと声だけ。

 ――だからこそ、自由に話せる気がする。むしろ、俺の中にある“好き”や“熱量”を、全力でぶつけられそうだ。アニメやマンガの名言を交えたトークだって、誰に遠慮することもない。


「さて……行こうか」


 俺は配信画面の「Start」ボタンをクリックした。

 夜の静寂が、また新しい物語の扉を開く合図になる。深く息を吸って、ヘッドホン越しに自分の声が返ってくるのを確認する。

 ――小さな光が差し込むような気分。きっと、今日の配信は昨日よりもスムーズに話せるはず。少しだけど、そんな予感がある。


 これが俺にとっての“もうひとつの夜明け”だ。窓の外は夜なのに、不思議と心には朝日が差してくるような明るさがある。

 いつか本当に朝日を浴びながら、胸を張って“外の世界”を歩く日が来るのだろうか。その日はまだ想像できないけれど――今はそれでもいい。

 声だけでいいから、誰かとつながりたい。顔を隠してでも、自分の想いを伝えたい。そんな小さな想いが、確かな希望へと形を変えていく兆しを感じながら、俺は再び配信の世界に飛び込んだのだった。

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