第1章幕間
部屋の明かりを落とすと、モニターに映った配信のログが瞼に残った。
悠真はベッドの端に腰を下ろし、深く息をつく。
「これが、俺の“声”なのか……」
たった数時間の配信で、思いがけず“バズ”の気配を感じ取ってしまった。
コメント欄にあふれる「癒される」「もっと聴きたい」という文字列が、胸の奥をくすぐる。
ずっと隠れていたはずの自分が、こんなにも誰かに響くなんて。
だけど……甘い余韻に浸る暇はない。
マイクを片付けながら、やり残した宿題のような違和感が心に残る。
それは、**“元学級委員長の瑞希”**らしき人物からのコラボ依頼。
引きこもりになった自分を、委員長だった彼女がどう思っているのか。
見捨てたのか、それとも……。
頭が混乱するばかりなのに、なぜか胸がうるさく高鳴る。
「本当に、あの子なのかな……」
そんな想いを抱えたまま、夜がゆっくりと更けていく。
この先、マスク越しの配信だけで逃げ切れるわけがない。
足がすくむけれど、どこか期待に胸が弾んでいる自分がいる。
不安と高揚。真っ暗な部屋に両方の感情が溶け合って、眠るに眠れない。
「第1章が幕を閉じました。前半では引きこもりの悠真がV配信に出会い、自分の“声”の可能性を初めて感じ取る様子を描きました。後半では、その配信が思いがけず注目を集め、“元学級委員長の瑞希”らしき人物からコラボ依頼を受ける衝撃の展開へ。」
自分の世界が一気に動き出してしまった。
眠れぬまま、布団に潜り込んだ悠真は、瞼を閉じてもSNSのコメントや“瑞希”という名が脳裏をかすめる。
正体バレの予感は、冷たい汗となって背中を伝う。
でも、もう後戻りはできない。
声が生まれた以上、引きこもりのままでは終われない──その感覚だけが、闇の中で悠真を奮い立たせる。
「第2章からは、いよいよ“コラボ初対面”と悠真の正体バレの予感が加速し、2人の距離感や過去の因縁が浮き彫りになっていきます。瑞希の真意、そして悠真が背負うトラウマがどのように絡み合い、物語を動かしていくのか。引き続きお楽しみに!」
静まり返った深夜、布団の中で悠真はそっと唇を噛む。
「俺が誰かに必要とされてるなら、もう少し頑張ってみたい」
逃げ続けた過去を変えられるかもしれない──そう思うと、差し伸べられた“コラボ”という機会が怖いはずなのに、どこか待ち遠しくてたまらない。
ここが新しい始まりなのかもしれない、と。
壁の向こう、かすかに聞こえる時計の針が刻むリズム。
悠真は小さく拳を握る。トラウマと期待が混じり合う中、彼の視線は微かな光を帯びたまま、夜の静寂の中を漂っていた。
次の幕が開けば、“瑞希”との再会は避けられない。
その先にある衝撃と揺れが、悠真の心をどう変えていくのか──。
目を閉じようとしても、瞼の裏にはマイクとコメント欄の光景、そして“瑞希”という名前だけが、鮮やかに焼き付いていた。




