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不登校男子、顔出しナシでバズった結果→元委員長Vと恋愛コラボするハメに  作者: はりねずみの肉球
【第1章 】 顔を隠して、声だけで世界とつながるはじまり
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交錯する視線――画面の向こうに

次の日の朝……というか昼近くに目が覚めると、俺のスマホには見慣れない通知が来ていた。

 配信サイトのDMボックスに未読メッセージがいくつも。大半は「配信お疲れさまでした!」「また楽しみにしてます」などのファンメッセージだったが、その中に数通だけ“個人”からのコラボ依頼らしきものも混ざっている。

 まさか本当にこんなに早くコラボの話が来るとは――驚きながら開いてみると、「ぜひ一緒に雑談配信したい」「私は○○というVです」など、具体的な打診もあれば、単なる挨拶の域を出ないものもある。

 正直、どの人も俺にとっては初対面。しかも相手の活動歴やスタイルがよくわからない。すぐに返事をするわけにもいかないので、とりあえず保留にした。

 そんな中、一通だけひときわ短く、しかし妙に気になる内容のDMがあった。


《はじめまして。以前からあなたの声を聴いていました。

 一度、お話ししてみたいです。――MIZUKI》


 MIZUKI……。一瞬、あのSNSで見かけた清楚系お姉さんVが頭をよぎる。まさか同じ人だろうか。

 プロフィールを確認すると、確かにアカウント名が“MIZUKI”で、フォロワーも結構多い。アイコンは黒髪ロングの清楚キャラのイラスト。ツイート内容を見ても、どこか真面目で落ち着いていて、ちょっと委員長感が漂う文体が多い。

 そして何より気になるのが「以前からあなたの声を聴いていました」という一文。俺の初配信から知っていたということなのか。それとも、切り抜き動画などでたまたま見かけてくれていたのか。

 なんとなく胸がざわつく。MIZUKIという名前に、俺は勝手に小学校の頃の瑞希を重ねてしまうけれど、そんなの偶然に決まっている。

 DMの文面は短いが、妙に自信というか、こちらの気を引くような雰囲気を感じた。どうしようか迷った末、とりあえずお礼の言葉だけは返しておくことにする。


《DMありがとうございます。ユウマと申します。

 まだコラボ慣れしていないのですが、機会があればお話できたら嬉しいです》


 送信ボタンを押すと、画面の中に既読の印がつく。少しだけ胸がドキリとするが、相手のレスポンスはすぐには来ない。大物Vは忙しいのかもしれない。

 ふと、そのアカウントのタイムラインを覗くと、「今夜、久々に配信します。ちょっとした告白があるかも……?」というツイートがあった。

 “ちょっとした告白”? なんだろう。一ファンの気分で気になってしまう。いや、待てよ、勝手に盛り上がってどうするんだ。でも素直に気になるのも確かで、俺はついアカウントをフォローしてしまった。


 夜になり、俺は自分の配信の準備をしながら、MIZUKIのチャンネルを開く。ちょうど配信が始まったところらしく、「やっほー、皆さんこんばんは、MIZUKIです」という落ち着いた声が響いた。

 それをイヤホン越しに聞いた瞬間、なぜか心臓が跳ね上がる。

 自分でも理由がわからない。別に聞いたことのある声というわけじゃない……はずなのに。でも、不思議な懐かしさが胸を掻き立てるのだ。

 MIZUKIは配信の冒頭から雑談を始め、「実は最近、とても素敵な新人Vさんの配信をよく観ていたんです」と笑みを含んだ声で語りだす。

 まさか、それって……俺のこと? いや、それは考えすぎかもしれない。しかし、名言の引用が多いVが気になる、と語るあたり、少しドキドキしてきてしまう。

 コメント欄では「誰? 教えて!」「もしかしてあの人?」とリスナーが盛り上がっている。MIZUKIはちょっと意地悪そうに「企業秘密です」と濁したまま、配信を続けていく。


「この声……どこかで……いや、それはないだろう」


 俺は一人、イヤホン越しに彼女の声に耳を傾ける。クリアで少し落ち着いたトーン、言葉遣いは丁寧で真面目そうだが、時々「本音」が漏れるときは砕けた口調になる。

 どことなく“瑞希”を連想させる。でも、それは名前の響きが同じなだけで、考えすぎだろう。そもそもリアルの瑞希がVtuberやっているなんて、聞いたこともないし……。

 配信を最後まで観たい気持ちはあったが、自分の配信開始時間が近づいている。俺は残念に思いながらウィンドウを閉じ、マイクを立ち上げる準備に入った。

 それでも頭の片隅からは、あの懐かしさの正体が拭えない。もし、本当に――そんな可能性は、どれくらいあるんだろう。


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