表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不登校男子、顔出しナシでバズった結果→元委員長Vと恋愛コラボするハメに  作者: はりねずみの肉球
【第1章 】 顔を隠して、声だけで世界とつながるはじまり
12/29

はじめてのロング配信――深夜の語り

週末の夜、俺は思い切って“ロング配信”に挑戦してみることにした。3時間から4時間くらい、雑談やアニメ語り、リスナーとのやり取りを中心に長時間配信してみたい。

 叔父の作ったドールハウス“洋館風セット”の写真を背景に合成し、スタート画面に表示。まだ簡易的な合成だけど、それでもグッと雰囲気が出る。

 21時の開始直後から、コメント欄はにぎわいを見せていた。


「こんばんは、ユウマです。今日はちょっと長めに雑談してみようかなと思ってます。皆さん、夜更かし大丈夫ですか?」


<余裕っすよ!>

<もう眠気MAXだけど聞く!>

<ドールハウス背景かわいい!>


「この背景、うちの叔父が作ってくれたんですよ。ドールハウス職人っていうか、海外でもファンがいるらしいんです。俺も詳しくは知らないんだけど、こう……すごく細かいところまで作り込んであって、写真で見ると本物の洋館みたいなんだよね」


<うおーすご!>

<叔父さん優秀ww>


 リスナーの反応に手応えを感じる。配信画面には、手の平サイズほどの豪華な洋館の内部が映し出されている。小さなシャンデリアや窓枠、壁に掛けられた絵画など、すべてが手作りなんて信じられないほどの精巧さだ。

 俺がそれを紹介していると、いつのまにか視聴者数が100人を突破していた。わずか数日前に始めたばかりの配信にしては、信じられないペースだ。


「あと、最近のアニメでよかったのは――」


 そこからはいつもの調子で、好きなアニメやマンガの感想を述べ、コメント欄と絡みまくる。俺の“声”を聞きながらのんびりしたい人もいれば、「この作品の考察してほしい」というリクエストを投げてくる人もいる。

 集中して語っていると、あっという間に1時間、2時間が過ぎる。夜更かし覚悟のリスナーたちも徐々に増えたり減ったりしながら、常にコメントが絶えない。

 “深夜のまったり感”が心地いい。学校のない明日だからこそ、こんな深夜配信をしても問題ない。むしろ、時間を気にせず本気で語れることが嬉しい。

 気づけばリスナー同士がコメント欄で雑談を始めている。「ユウマくん、どこかで台詞朗読とかしてほしいね」「歌枠まだ?」という話題さえ出ている。歌に関しては興味はあるけど、まだ踏み込めていない。

 そんなやり取りを眺めていると、ふと1件のコメントが目に留まった。


<声、やっぱり女の子っぽいって言われませんか? でもそこが好き>


 ドキリとする。“女の子っぽい声”という指摘は、いつもなら心がチクッと痛むはずなのに、なぜか今はそこまで嫌じゃない自分がいる。

 この配信を通じて、「それが俺の個性なんだ」と思えるようになってきたのかもしれない。実際、リスナーにとっては魅力の一つとして受け取ってくれる人が多いのだから。


「あ、そうですね……まあ昔から言われます。顔も声も、女っぽいって。でも今は、こうして“声”だけで皆さんに会えてるんで、むしろ武器かなって思ってます」


<その姿勢好きだわ!>

<声がユウマくんのアイデンティティ!>


 コメントの勢いは深夜にも関わらず衰えない。嬉しさと高揚感で、どんどん言葉が溢れてくる。

 ――気づけば配信開始から3時間が過ぎ、時計の針はもう深夜1時を回っていた。

 そろそろ切り上げようかと思った矢先、ふとコメントがひときわ目立った形で流れてきた。


<ユウマくんさ、いつかコラボとかする予定ないの?>


 コラボ。そういえば、他のVtuberと共同で配信するということか。もちろん興味はある。けれど、まだ始めたばかりで、そんな縁があるとも思えないし、何より正体がバレるリスクが大きい気がする。

 考え込んでいると、別のコメントも立て続けに飛んでくる。


<ユウマくんと雑談コラボしたいVたくさんいそう>

<一緒に歌とか、絶対盛り上がるっしょ>


「うーん、興味はあるけど、まだそこまで余裕がないかも……。まぁ、もしそんな話が来たら、考えてみるよ。ありがとね」


 そう言って笑ってごまかした。実際問題、この“顔を隠す”スタイルを守りつつコラボができるのか、検討しようにもわからないことだらけだし。

 とはいえ、配信を続けるうちに知り合いのVが増えたら、自然とコラボの話が出ることもあるかもしれない――ほんの少し、そんな未来を想像するだけで胸が躍る。

 そうして長時間の深夜配信は、最終的に平均視聴者100人超えでフィニッシュ。視聴者に「おやすみ、ありがとう」と挨拶をして配信を終えると、達成感と微かな疲労感が同時に押し寄せた。

 正直、こんなにのめり込むとは思わなかった。引きこもりの俺が、夜中にパソコンの前で声を張り上げて語り尽くす――あり得ないと自分でも思っていた。

 ベッドに転がり込むと、瞼がとろんと重くなる。頭の中に、先ほどのコメント欄の賑わいがまだ残っている。コラボ……か。いつか誰かとやれたら面白いだろうな。

 そう思ったまま、意識が闇に沈んでいった。今日はいい夢が見られそうな気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ