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不登校男子、顔出しナシでバズった結果→元委員長Vと恋愛コラボするハメに  作者: はりねずみの肉球
【第1章 】 顔を隠して、声だけで世界とつながるはじまり
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「朝のベッドと、カーテンの隙間」

挿絵(By みてみん)


朝だ、と気づいているのに、体が動かない。

 枕をぎゅっと抱きしめながら、うっすらと光るスマホの画面をぼんやり見つめる。時刻は午前十時を少し回ったところ。世間一般の高校一年生なら、すでに一時間目の授業は終わっている頃だろう。


「今日も……行かない、か」


 窓のカーテンは閉め切ったまま。外の光は細い隙間からわずかに射し込むだけ。部屋の中は半暗がりで、まるで自分が世界から取り残されているような気分になる。

 ベッドサイドに山積みになったマンガの単行本や、昨夜動画の参考にと観ていたアニメのブルーレイディスク。自分の興味は尽きないはずなのに、そのモチベーションさえ薄い。やりたいことはあるのに、外に出る元気がない。そんな倦怠感が朝から身体にまとわりついて、言いようのない息苦しさを感じる。


(顔さえ……この顔さえ、もう少し普通なら。俺は今頃みんなと同じように教室で笑ってられたかもしれないのに)


 自分でも自嘲気味に思う。いつからこんなに“顔”のことを気にするようになったのだろう。中学に入った頃から加速した、あのからかい。美少女みたいだとか、まつげが長いだとか、口紅してる? と嫌味を言われたり、休み時間に友達を装ってスマホでこっそり撮影されたり。

 なんだかんだ言われても最初は我慢していたけれど、高校入学直前に流された“ある写真”が決定打になった――そう、見た目をおもちゃ扱いされ、「女装?」と嘲笑されたあの投稿。クラスのSNSにアップされて嘲られたあの瞬間を思い出すと、胸がちくりと痛む。

 それからだ。俺が「学校に行きたくない」と口にしたのは。


「悠真、おはよー。起きてるか?」


 ドア越しに聞こえる軽い声。俺が住む家の主――叔父である蒼井道隆あおい みちたかだ。両親は仕事で海外赴任中。代わりに俺の面倒を見てくれているが、世間一般の“保護者”のイメージとは少し違う。芸術家肌の人で、他人に干渉しないし、自分にも干渉させないタイプ。

 だが、俺の部屋の扉をノックして「起きてるか?」と声を掛けてくれるのは、いつもこの叔父だけだ。


「うん……もう起きてるよ」


 とりあえずベッドから上半身を起こし、寝癖のついたやわらかなパステルピンクの髪を手で抑えた。いつもならこれで一日がスタート、というのもおかしな話だが、どうしようもない。

 この部屋の中にいれば、安全だ。誰にも笑われない。誰にも「美少女みたい」なんて言われない。と同時に、誰ともつながらない――そんな空虚な安心感に、俺はすがっているのかもしれない。


 カーテンの隙間から細長く差し込む光を見つめながら、俺は大きく息を吐いた。

 静かな引きこもり生活は、俺の心を微かに傷から守ってはいる。けれどこのままでいいのか――その疑問が、胸の奥にいつもうずく。

 今日もまた、時計の針はどんどん進んでいく。だけど、そんな“外の世界”から一歩踏み出すのは、まだ怖い。例えここが閉鎖的な箱の中だとしても、今の俺にはそれが精一杯だった。


 そんな朝のはじまり。けれど、この日を境に、俺は少しずつ変わっていくことになる――まだそんなこと、夢にも思っていなかった。


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