第七話 出会い。2
レイシュは部屋に寝かせたはずの少女を見に、別館にやってきていた。
今頃、起きているだろうか。
白くまぶしい光に包まれ、地面に横たわっていた少女。
あれ程の神々しさをまとった人を、俺は見たことがなかった。
いつの間にか早まる足に気づいて、困惑する。
あれはただの少女だ。見た者は、思わず引き込まれてしまうような黒い髪をもってはいるが。
いや、刺客なのかもしれない。しかし、それにしては無防備すぎでは―――。
そんなことを考えていたからか。
角を曲がると同時に、突然現れた足を思わず受け止めていた。
・・・ここにいるのは、エルオーネと俺。そして―――あの少女。
ということは。顔を上げてみると、案の定、少女だった。
少し迷った末に口から出てきた言葉は。
「起きたのか?」
などという、全くもって俺らしくない言葉だった。
「あなたは誰ですか?」
怯えるようなしぐさは一切見せず、ただこちらを睨み上げる視線を向ける少女。
新鮮で、思わず口の端を上げてしまう。
しかし、少女はそれをなにかと誤解したのか、目がますます鋭くなった。
「・・・私をさらっても無駄です。家族はみんな外国。
現金は全て指紋認証のあるところに預けています。
それに、忙しくて家族とは5年も連絡をとっていませんし。
それでも、なにかしたいことが?」
淡々と語る口調には、感情の欠片も見当たらない。
俺には分からない単語を行って入るが、危機に慣れた者の話し方だとわかり、内心眉を寄せる。
一体、どういう事だ?
「混乱しているようだが、俺は庭に落ちていたお前を拾ったのだ。
部屋に入れたのもまた道理。非難されるいわれはない。」
「しらばっくれるつもりですか?」
「だからなんのことだ。それに、どうやって鍵を開けた?」
「・・・鍵?そんなものついてはいなかったですけど。」
全く警戒を解かない様子に、ため息をつく。
助けただけだというのに、ここまでいわれるのは、気にくわない。
・・・まあ、こんな反応は初めてだが。
しかし、少しは怯えさせるために、無造作に閉めきっていた窓を開け放つ。
このフェルベーナ城の外観を知らない者など、この街には一人もいない。
少女が、かなり驚いたかのように目を開く。
それに、俺は満足したはずだった。
次の言葉を、聞くまでは。
「―――――――ここ、どこ?・・・日本じゃ、ないの?」
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