第五話 迷いびと。3
レイシュが少女に見惚れている横で、エルオーネは驚愕に目を見開いていた。
『この子、なんで・・・っ。』
汚れた地だったはずの、この場所が。
完全に、浄化されていた。
もう、人の手を加えなくても生命が生きれるほどに。
それほどの魔力を持つ、この少女は、何――――――――?
考えて、エルオーネはため息をつくと、レイシュに声をかけた。
『それで、どうするの?この子。』
突然言われたことに驚いたのか、肩がビクッとはね上がった。
いつも何事にも動じない――――というか、ふてぶてしい態度のこの王子にしては、珍しい反応だ。
・・・面白い。
「・・・とにかく、保護する。早急に、城へ戻ると伝えさせろ。
それと――――寝室を一つ、用意させるように。」
対処はそれからだ――――――――。
口調には、いつもと何ら変わりないが、少女を抱き上げる手つきはぎごちなくも丁寧に見えた。
更には、その軽さにわたわたし、頬も少し赤く染まっている。
・・・本当に、面白い。
レイシュに。ほとんどの人を道具としか見ていない、レイシュに。
こんなことをさせるなんて。
レイシュについていきながら、いつもの彼女らしからぬにやりとした笑みを浮かべる。
精霊にこれ程までに好かれている少女は、どんな性格をしているのだろうか。
ああ、本当に楽しみだよ。
愚かな聖霊にとりついた私に、気付きもしない王子も。
餌になってくれそうな、この少女も。
一体、何を私に与えてくれるのか――――――――。
『・・・?』
あら。私は、何を考えていたのかしら?
分からない。・・・けど、考えてはいけない気がする。
頭の奥で鳴り響く不穏な警鐘を聞きながらも、いつの間にか遠くなっていたレイシュの背を追う。
ほら、あの精霊の愛し子に。そして、レイシュに。
闇から守る魔法をかけなくては。
あの子たちを。
絶対に、暗闇に落としてはいけないのだから。
『レイシュの側近に伝えて。伝えることはわかるわよね?』
『はい!』
新たに私の指先から作り出された精霊が、ふわりふわりと城に向かって飛んでいく。
この先の予兆を持って。
読んでくれた人、ありがとうございます!
感想大歓迎です!
では、ここまで読んでくれたひとのために、ショートショートを作ってみました。
どーぞ~。
◆ ◆ ◆
【エルオーネの作った精霊。】
ふふ~んっ。エルオーネ様からの伝言、しかと伝えなければいけません!
この大役、逃してなるものですかっ!
さあ、行くっ「ゴンっ」・・・うぅ、痛いです。痛いですけど、早く行か「カァァァッ!」いーやーぁあああああっ!嫌いぃ!あの真っ黒い鳥、追いかけてくるぅぅぅぅっ!たーすーけーてぇ――――――――!エルオーネさまぁぁぁぁぁぁぁ!
・・・エルオーネ・・・
「あ、ららら。そこ、木なのだけれど。うわ、痛そうね・・・。」
しかし、それでも助けはせず、楽しそうに見ていたのだとさ。
※なんとか伝言は伝えられました。