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Ep. 4-5〝師弟の絆〟〝目覚め〟


英霊界ーー《オデルニア》


数多ある英霊異界の中でもとりわけ鍛冶能力に長けたものが多いこの世界ではーー《古代の鍛冶師》ヘパイストスを超える者はそうそういなかったーー。


再現不可、修復不可、ヘパイストスの作った《古代武器》を超える精度の武器の錬成不可ーーそれがこの約1500年の鍛冶師間の常識だったーーある()()()()()()()()が現れるまではーー。


彼女ーーフレアは師であるヘパイストスの技を吸収し、己のオリジナリティとして昇華し、遂にはヘパイストスを超えるまでに至ったーー。


()()()()では〝一部の者〟を除いてその名が広まる事の無かったフレアーー彼女の武器はかつての人々の間でこう呼ばれたーー。


大鎚を振りし再来する〝()()()()()()〟とーー。



カキィィィィィィィィィンッーー!!



「で……………………できた……………………!!」



丸3日ーー工房に籠っていたポピィは一食一睡もせずただひたすらに自身の金槌を振るっていたーー。そして遂に…………自身の打っていた短剣が遂に完成したーー!!



連日の徹夜で(まぶた)にクマができているポピィーーしかし自身の〝最高傑作〟とも言える出来栄えの短剣を前に、あらたな光を見たように目を輝かせていたーー!!



「ヘパイストスさ〜ん!!見てくださいこれっ!!やっと…………やっとできました〜!!」


出来上がった短剣を両手で持ち上げてニカッーーと笑顔を向けるポピィ。


「ふっーー遂にできたか…………ならもう、ここにいる意味は無さそうだなーー」


そう言ってポピィの頭を撫でるヘパイストスーーそれはまさしく、()()()()()()()()()()であり、撫でられて自然と綻ぶポピィの笑顔は()()()()()()()()()()()()()()()()()()そのものだったーー。



途端ーーポピィの体がふわふわと光りだすーー。



「っーー!!あれっ!?えっ、うっ……うえ、!?何これー!!?」



それに対して何が起こっているのかさっぱりわからないポピィは、いい知れぬ焦燥感にあたふたとオロオロする。



「とりあえずーー()()()()にしてやれるのはここまでだーーよくやったな…………フレア」


「っーー!!…………私はーー」


そこまで言いかけたポピィの口が詰まる。ふとーーポピィの脳裏に微かに……されど鮮明に映し出される記憶ーー。



『ははっ!!いろいろとさんきゅーな鍛冶の師〜!……もしいつかーーまたあたしが来る事があったら一緒に酒でも飲み交わそうぜ〜!!』



「…………どうした?」



ヘパイストスの問いかけにーーポピィはふと口からこぼれ出た。



「本当にーーいろいろとありがとうございました…………!!ヘパイストスさん…………いやーー鍛冶の師!!」


「っーー!!お前ーー」


驚嘆の顔をするヘパイストスを前に、ポピィは太陽のような満面の笑みをニコッーーと向けて、そのまま光となって消えていったーー。


「ふっーーとんだ厄介な弟子を持っちまったもんだよ…………」


頭をぽりぽりと掻いてヘパイストスはーー少し寂しそうにポピィを現世へと見送っていったーー。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



カーヴェラの屋敷ーー705号室。



現在この部屋はセシリアが管理しており、ポピィがいつ目覚めてもいいように料理や部屋の掃除を行っていたーー。


〝灰色のダンジョン〟帰還からおよそ一ヶ月の時が過ぎたーー。現在はカーヴェラの屋敷にセシリアだけでなく、華麗やレックス達も屋敷内に滞在しており、皆一様にポピィが目を覚ますのをずっと待っていたーー。


「この子…………本当にすごい子ねーー。みんながずっと、あんたを待ってる…………。」


白金色の髪に紫色の帽子を被った少女ーードロシーがふとため息と共に言葉を漏らす。


「そうだなーーまるで、()()()を見ているようだったよーーポピィ」


「ん?アイツって誰だよ、おやっさん?」


額に傷のある騎士の男ーーグレイスもまた、ドロシー同様にポピィの寝顔を見ながらフレアの姿と重ね合わせる。それに対して、訝しむようにユウキが問いかけた。


「ねーねー、カーヴェラ〜…………ポピィ起きぅ?」


「ああーーこの子は強い子だーー。大丈夫なハズさーー」


翠色の髪と瞳に、もちもちおもちのようなーー今にも落ちそうなほっぺのヒュイがカーヴェラに問いかけ、それもまたカーヴェラはヒュイの頭を撫でながら優しく微笑みかける。


「しかし実際ーーこれだけ長い間目覚めないという事は…………お嬢様」


「うむーー確かに…………趙龍の言いたい事もわかるーーが、《精神界》と呼ばれる異世界の事については謎が多いと聞く…………。断定はせぬがーー戻ると信じたいな…………カーヴェラよ?」


黒髪ロングに黒服の執事趙龍がーー緋色の髪と瞳のチャイナドレスの少女ーー華麗に問いかけ、華麗もまたポピィの心配をしていたーー。


そんな沈黙が包む室内にーーコンコンッとドアをノックする音が。ガチャリとドアを開け入っていきたレックスとアレンの二人が、トレーニングを終えて戻ってくる。


「皆さんーーここにいたのですね。その後ーーどうですか?」


「見ての通りだろレックスーーとは言え、この子は俺たちの恩人だ…………確かに気になるのも致し方無いーー」


レックスとアレンもまたーー昏睡状態のポピィに目を向け肩をすくめる。


そんな中ーー、一人…………いや、一匹の生き物が、ポピィの枕元で飛び跳ねる。


「にゅにゅい!!」


ぴょんっぴょんっぴょんっぴょんっーー


「…………スライムさん……ふふっ、励ましてくれているのですねーー」


「にゅにゅにゅい!!!」


スライムが元気に飛び跳ねるのを見て勇気づけられる皆々ーー、途端ポピィに異変が生じる。


「っーー!!これは!!」


目を見開くカーヴェラ…………その目線の先にいるポピィは、精神がだんだんとこの世界に戻りつつあった。


「カーヴェラさんっーーこれってーー」


心配そうなセシリアが、カーヴェラに問いかける。


「ポピィの魂がこの世に戻って来ているーーだが、この感じーー今ポピィの魂は光の粒子となって宿りどころを探している状態だ!!皆、ポピィに声をかけてやってくれ!!」


普段からは想像もつかないようなカーヴェラのただならぬ表情にーー、皆もコクッと頷きポピィに声をかける。


「ポピィさんーー私、ポピィさんとまだまだたくさん冒険がしたいです!戻って来てください!!」


「ポピィーーおめぇ…………まだ《上限色覚》を覚えただけじゃねぇかーーまだまだやらなきゃいけねぇ事があんだから、さっさと戻って来やがれーー!!」


セシリアとユウキがーー、願うように問いかける。


「ポピィーーお前は本当に勇敢だ。今まで数多く色んな奴と出会って来たが…………お前ほど精神が強く、逆境にも立ち向かおうとする者と出会った事はそう多くはなかったーー皆待っているぞ…………お前の帰りを…………」


「もう…………演技はいらないわよねーー。私ね、この数日ずっと自分に問いかけて来たんだーー。他人を偽って仮面を被って人と接するよりもーー大事な人と過ごす時間は何よりも尊いってーー。あんたが帰って来るならーーわたしがどんな生き方をしてきたのかーーどんな酷い事をしてしまったのかーー、かつての《聖国》で六年前に何があったのかも…………全部話すからさーーだから、戻って来てよーー!!」


グレイスとドロシーがーー、祈るように語りかける。


「ポピィ…………パパもママも、ポピィの事ーー大事に思ってるよ!!もっともっといっぱい遊ぼうよーー!!」


ヒュイがーー、涙ぐみながら喋りかける。



そしてーー



「ポピィーーお前はかつて、()()()()()全ての責任を背負って……………………たった一人でーーお前を慕う者たちを置いていって、この世から去っていった……………………。もうーー私はお前を失いたく無い…………記憶は一生戻らなくてもいいーーお前が還って来るならーー私の命だってくれてやる!!だから…………帰って来てくれーー」


あのカーヴェラがーー《伝説の魔法使い》と呼ばれた世界最高峰の魔法使いが、()()()()()()にーー()()()()()向かって、心を繋ぐように呼びかける。


皆の願いがーー皆の祈りがーー皆の涙と心が、ポピィの粒子状の魂を少しずつ一つの光りへと変えて行きーーそしてーー。


 

「………………………。あれ…………ここは?」



やがて遂にーー、ポピィが目を覚ます。



「「「「っーー!!!やったぁぁぁ〜〜〜!!!!!」」」」



その日ーー、ポピィの魂がおよそ一ヶ月ぶりに現世へと還って来たのだったーー。

ドタバタしており更新遅れてしまってすみません!!《アシュリー・ホワイトと白のダンジョン》も随時更新していきますのでご拝読よろしくお願いします!!

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