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Ep.4-1 〝久々の団欒〟〝《反逆の使徒》〟


長かった激闘の末ーーポピィ、ユウキ、セシリア達は〝邪竜バルトロス〟を撃破し、同時襲撃をかけてきた《魔将十傑》の二人、〝第五将ジェイク〟の分身体と〝第七将ロブルス〟を撃破する事に成功ーー。見事、ポピィも一時的ではあるがカーヴェラの出したお題の《上限色覚》習得も完了し、一向は屋敷へと帰っていた。


「すぅ〜、ぴぃ〜、すぅ〜、ぴぃ〜……」


「相変わらず爆睡だな……こいつ」


ドロシーの魔法陣で屋敷に着いた皆は各々自由行動とし、セシリア達は来客用の部屋をカーヴェラから当てがわれていたが、クタクタで大広間のソファに寝かせられたポピィは、姉ーーヒュイとユウキ、セシリアが見守る中すやすやと眠っていた。


「ポピィ、治る?」


「ん?……ああ、まあ〜心配ねぇよ。こいつ、図太いし」


「大丈夫だよ、ヒュイちゃん!!ポピィさんってば、すっごいんだから!!」


側にはダンジョン内でポピィと友達になったスライムのゼリーが、グレイスの作った夕食を持ってくる。


「お前達の分も作っておいた……どうせ心配で食卓まで来ないだろうと思ってなーー」


グレイスの気遣いにキョトンとする一人と肩をすくめる二人、結局一階の大広間で、皆がこぞって食事を持ってくる顛末(てんまつ)となったーー。


「はぁ〜、おやっさんのメシが体に染みる〜!!」


「ん!?本当……美味しい!!」


「まさか……あの《伝説の聖騎士》様が、こんなに料理上手だったとはーー!!」


「あはは……頼むから、《伝説の聖騎士》はやめてくれ……」


「グレイス〜、あたし!おかわり〜!!」


賑わいながら、皆楽しそうにワイワイと食事を摂り、ダンジョン内での出来事などを食事のネタ話に花を咲かせていた。


そんな中ーー。


「お嬢様ーー浮かない顔ですが、何かありましたか?」


華麗の従者の一人、趙龍が華麗に声をかける。


華麗は一瞬、深刻そうな顔をしてーー。


「いや……ちょっとな……グレイスの作ったこのエビドリアが、ほっぺが落ちる程美味くてのーー」


満面の笑みで振り返る華麗。しかし、内心ではジェイクの言っていた〝目的〟とやらが気になっている様子だった……。


「…………まあ、なるようになるじゃろうて」


そんな様子を、訝しむように見据えるカーヴェラ。しかし、そんな彼女もまたーーすやすやと眠りこけるポピィの方を見て心配そうに眉をひそめるのだったーー。



……………………。



エルフの森ーー。



そこでは、無惨に荒廃し、焼け野原となったところに……二人の少女が戦っている姿がーー。


その一方はカーヴェラ、ポピィがよく知る《星の魔術師》アシュリー・ホワイトだったーー。


「キャハハハハハハハハハハハハッ!!いいねぇいいねぇ!!さっすがSランク冒険者様だ!!しかもこの実力……聖国の抱える()()()()()()()の奴らとはまるで別格ーー()()でワタシに殺されなかった奴はそうそういないってのにさぁーーねぇ?アッハハハハハハハハハ!!」


ケラケラと甲高い声で笑いかける赤ピンク色の髪と瞳ーー布生地の少ない服を着ている少女。その背中には〝黒い天使の羽〟のようなマークがあったーー。


「それがお得意の《星の魔術》かいーー?噂じゃあ自身に干渉する全ての情報が知れるんだってねぇ!!じゃあーー()()()()()()も筒抜けな訳だ……いいねぇいいねぇ!!もっとやろうよ!!アシュリー!!!」


「はぁ……本っーー当に、めんどクサい……。《痛みを拡散せし者(ペインギヴァー)》がまさか、こんな面倒な奴だったなんて……」


対して白髪ツインテールで右目に眼帯をつけたゴシックロリータドレスの黒眼の少女ーーアシュリーは心底嫌そうな顔をしながら、先程から敵の物理攻撃を華麗に避け続けている。


(あの〝黒い天使の羽〟のマーク……間違いなく《反逆の使徒》である証ーー。しかもこれだけの手練れ……。かなり上位の達人のはずーー。魔法や魔術みたいな魔気を使った技で攻撃すれば、そのダメージがそっくりそのまま自身にダメージが来るなんて……《星の魔術》で情報を先読みしてなかったら、とっくに死んでたわねーーワタシ)


ドガッーーザザ、と純粋な鬼ごっこや格闘術を繰り返して一身一退を続ける二人。そんな中敵の少女は叫び出す。


「ねぇねぇアシュリー!アンタもアタシ達の仲間になりなよ!!絶対気に入ると思うよ!?…………アンタは知らないと思うけど、今の聖国の奴らは腐りきってるーー!!だから、あいつらを滅ぼしてさぁ〜、魔族の奴らも歯向かう奴らは全員ぶっ殺してさぁ〜、アタシ達だけの()()()()()を作ろうよ!!誰も傷つかない……誰も戦争で死ぬ事の無い平和な世界さ!!どう!?いいでしょ〜!?」


「あんた……何言ってるのかさっぱりわからないわよ……戦闘の最中に敵を勧誘するって……どういう神経してんの?」


ふとーー戦いの手を止める少女。そこには、心底()()を憐むような瞳があったーー。


「あたしね……あんたの事、すっごく気に入ったんだ……こんなにワクワクドキドキしたのは初めてだよ……()()()()()を守るには……()()()()()が上に立たないといけないーー!!でも今の聖国の連中は力を持っているのに……何もしやしない!!だからねアシュリー……」


少女はそう言って……自身の両目の色を変化させた。


()()()()()……()()()()()()()()()!!」


「っーー!!《上限色覚》……!!」


紫色の瞳に変わった途端ーー少女から今までとは比較にならない濃度の魔気が吹き荒れる。その様子により一層気を引き締めるアシュリーだったが……少女は呆気なく上限色覚を解除した。


「ハァ……ふふっ。いいね、アシュリーは。自分だけの正義をちゃんと持ってるみたい……わかったーー()()()諦めるよ」


そう言い残し、アシュリーと距離を取る。


少女はアシュリーに去り際、一瞥だけして。


「アシュリー……この世にはね、《転生者》って言う()()がいるんだよ……。私達を救ってくれる〝メシア〟がーー。私は、〝あの人〟を信じてるーー!!だからアシュリー…………いつか、もしいつか……今度また敵として出会う事があったらーー」


その瞬間、少女は再び両目の色を変えてーー。


「今度はーーもっと激しく()()()()()ね!!」


そう言い残しーー消え去った……。


「《転生者》……()()()が……英雄……。ねーー」


アシュリーもまた、少女が去った事を確認して《星の魔術》を解除する。


(今度会ったら……こっちも()()()()()()()しか無いみたいね……ペインギヴァー……いや…………ラキル・イミネア…………。イミネア族の生き残り…………。)


たゆたう風がーー夕焼けに照らされたアシュリーの頬をそっとなでた……。

今回から、新章ーー〝聖国の旅路編〟突入です!!前作よりは短いとは思いますが、気長にお付き合いくださいますよう、よろしくお願いします!!

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