Ep.3-35〝華麗の怒り〟
「ヒヒヒヒヒッ《羅生門》ーー〝鬼斬波〟!!」
「ぬるいーー!!《魔界技・十三番》ーー〝暁月の訪れ〟!!」
ゴゴゥゥーー、とジェイクの放った無数の斬撃の中、華麗は優雅にただひたすらに歩いている。目には見えない〝彼女の魔術〟がーー全ての攻撃をいなしていた!!
「力……技、知恵に魔法に身体能力ーーキサマが我に叶うモノなど一つもありはしないーー何故我に勝負を挑んだ?《魔将十傑》よーー!!」
オレンジ色の髪と瞳の流麗な淑女ーー華麗が、苛立ち混じりに問いかける。しかしフヒヒッーーと、ジェイクは不気味な笑みを浮かべーー。
「確かに……さすがは《元・魔将十傑》第一将にして……《闇の眷属》二番族族長・華麗様……ワタクシのこの〝分身体〟では手も足も出ませんなぁーーワハハハハハ!!」
不気味な笑い声をあげながら、顔を手で覆うジェイクーー。
「分身体か……なるほどな。どうりで我の《血の匂い》からはいつまでたってもおぬしの〝死〟が匂わんかったわけかーーして、その身体の元の持ち主は誰なのじゃ……?」
ジェイクはニヤリと笑いながらーー、華麗の問いに答える。
「この体は部下の魔族のモノに《洗脳魔法》と《霊魂憑依》を施したあとで、意識をワタシの支配下に置いたものでですなぁ〜……今では完全にワタシの意思が反映されてされておる……故にーーこんな事でもできるのだ!!」
バババババッーーと、両手から魔気を連射して弾丸のように放つジェイクーーそれを華麗は、目視で回避した。
「ワハハハハハハッ!!《連射装弾》〝魔気連射〟!!アナタの体力でいつまで持つか……見物ですなぁ〜、ワハハハハハハッ!!」
しかしやはり、ジェイクは華麗の事を少々侮っていたようだーー。華麗はかつてカーヴェラでさえも手を焼いた存在ーー。この程度何の問題も無いのである。
華麗はジェイクの魔気連弾を鮮やかに回避しーー少しずつ距離を詰め寄る。
「それが限界か……?力と利便性に頼り切るやり方など、弱者のやる事だな!!」
ダンッーーダダンッーーダダダンッーーと、華麗は三連続で天地を蹴り飛び一気にジェイクの眼前まで迫った!!
「っーー!!バカな……!!」
「これで終いだ……ジェイク!!」
しかしその刹那ーージェイクの首元に手を掛けようとした華麗は一瞬身を硬直させる。華麗の《血の匂い》が、自身に向けて反応したのだ。
「フヒヒ……さすがは《吸血姫》華麗様……あっぱれでございました。どうやらこの体ではアナタ様にはどうやっても傷一つ付けられないようで…………ならば!!」
ピカッーーとジェイクの体が光だし……やがて!!
「っーー!!これは!!」
「〝目的〟は十分に果たされた!!いつかまたお会い召されようーー!!《吸血姫》華麗様ーー!!ワハハハハハッ!!!」
その次の刹那ーー大きな音を立ててバゴォーンッ……とジェイクは自爆する。その振動と余波に当てられて……ダンジョン内部は大きく揺れ始めた……。
「目的ーー他に一体何が……?いや、それより……《魔将十傑》第五将ーージェイク・バルワッハ……か。昔と変わらず悪趣味な奴だな。」
ボソリと呟く華麗の元に、タッタッタッタッと誰かの近づく足音がする。
「ご主人様〜……ご主人様〜!!今すぐここから脱出致しましょう!!ここは、まもなく崩落されますわ〜!!」
胸をたわわと揺らしながらーー華麗の下僕であるラティが駆け寄ってくる。
「ご主人様……どうかなさいましたか……?」
華麗は爆散しーー無惨な死を遂げたジェイクの部下だった者の身体の一部を拾い上げる。
「せめて……安らかに眠れるようーー地上で埋葬でもしてやろうの……あんな奴の部下になって……かわいそうに」
ギリッーーと、歯噛みをする華麗。華麗は元々、《闇の眷属》の二番族・族長を引き受ける程同族愛の強い性格なのだ。かつて同族を守る為に《魔将十傑》第一将の座を代理で受けてカーヴェラと戦った程にーー。
「ご主人様ーー?」
「……………………。わかっておる。急ごう……」
(《魔将十傑》第五将ーージェイク!!我はーーキサマのような外道を決して許しはしないーー!!)
そう決意した華麗の瞳はーー先程のジェイクとの戦いの時以上の殺気を孕んでいたーー!!
……………………。
こうして……茶のダンジョンもといーー〝灰色のダンジョン〟内で起きたーー一連の事件には片が着く形になったーー。カーヴェラ、華麗の一向はとりあえずカーヴェラの屋敷へと帰還し、セシリア達もその恩恵に預かり休息を取ることとなった……。
しかしーーあるところではまた、別の事件が勃発していたーー!!
……………………。
エルフの森ーー。
そこでは、無惨に荒廃し焼け野原となったところに……二人の少女が戦っている姿がーー。
その一方はカーヴェラ、ポピィがよく知る《星の魔術師》アシュリー・ホワイトだったーー。
ついに茶のダンジョンもといーー〝灰色のダンジョン〟編が終了しましたーー!!ここまで読んでくださり、ありがとうございます!!引き続き、次回作もよろしくお願いします!!




