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Ep.3-23 〝カーヴェラの独白〟


〝灰色のダンジョン〟B2階層ーー。


先程ポピィがゴブリンを呆気なく倒したこの階層では、殊更(ことさら)異常な状況へと変貌していたーー。


「「「「グアアアアアッ」」」」


ローブを被っているが、体が存在しない謎のモンスターがドロシー達へと近づいていく。


「ウィンドウ!!」


ドロシーがステータスウィンドウを開く。


そこには《闇の(しもべ)》レベル236×36と書かれていた。


「レベル236!?いくらなんでも一階層降りただけで上がりすぎじゃない!?面倒ったらありゃしない!!」


悪態を吐き帽子を深く被り直すドロシー。


「面倒じゃが……やるしか無いの!!」


そう言って一匹一匹を力づくでねじ伏せるドロシー達だったーー。




「〝インフレア〟!!」


「〝死の吸血(デス・ブラッド)〟ーー!!」


膨大な炎魔法で、魂を吸う魔法で、危なげなく敵を倒していく。


二人が順調に敵を倒していくそんな中、一際やる気の滾っている者がいたーー。


「ふんっーー!ポピィ殿とユウキが待っておる……お主達なぞに邪魔はさせん!!ハァァァァァァッ!!」


大きな魔剣を振り回す元・聖騎士グレイスは、どうやら彼の琴線に触れたのかアンデットを前にやたらと意気揚々に切りかかっていった……。


「あ奴……確か〝不死王〟に身を堕としたから同じ魔の存在のはずじゃったよな……」


「彼〜……たまに自分が今は〝暗黒騎士〟である事を忘れちゃうから……」


そんな呆れ顔で遠目にしている二人に対してグレイスはーー。


「元でも〝暗黒騎士〟ではなく現役の〝聖騎士〟です!!」


「「聞こえとったんかい!!」」


騒がしいやり取りがしばらく続き、B2階層の敵はものの二、三分で掃討されたのだったーー。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「くっ……ハァ、ハァ……ここは?」


「はっ、気がついたか……レックス」


「アレンッーー!?そうか……そうだ。俺たちは……」


〝邪竜バルトロス〟との戦いで激しく体力を消耗した冒険者のレックスとアレンが、〝灰色のダンジョン〟B6階層で傷ついた体を休めていた。


「ゼルの姿が見当たらない……。セシリアはおそらく、どうやら〝何者か〟と合流できたみたいだ……それを証拠に今、誰かが戦ってくれている……」


ゼルの正体が《魔将十傑》の一人ロブルスであることを知らないアレンは、今誰と誰が戦っているのかも把握できない状況だった。


「なら急ごう……二人共心配だが、今戦っている人も心配だーー。それに、ここに出口があるのか、それも探さなければならないし、戦いに加勢もしなくちゃならない」


傷だらけでもさすがはAランクの冒険者といったところだろうか。責任感は強く、その瞳にはまだ光が消えていなかったーー。


「僕は今から戦いが続いている音の方へ行くーー。アレンはセシリアを探してくれ……ぺしゃんこになったその槍では、戦えないだろう……?」


ふらつきながら、なんとか身を起こすレックス。そんな姿を見てアレンはーー。


「ふっーーお前の剣も半分折れているがな……わかった。無茶はするなよ?」


そう言い残し、互いに抱き合う。


互いに信頼を確認し合った二人は、二手に分かれて行動を再開するのだったーー。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『なぁ師匠〜!なんで師匠はそんなに強いんだ!?』


()()()()()()が、体躯に見合わない大槌を持ちながら問いかける。


『そりゃ〜……私は長生きだからな。いや……私から見たら十代そこそこでお前みたいなバケモノの方がどうかしてると思うぞ?』


『弟子の事バケモノ呼ばわりするなんてひっでぇ〜!ははっ……でもそうか〜、わたしも師匠に認められてるって事だな!』


そのまま大槌で更に大きなーーそれこそ巨人が扱うかのような大斧をパキンッ……パキンッ、と叩く。


『全く本当にお前は…………』



()()()()()()()()


そうどこか俯瞰したような瞳で、夕焼けに向かって語りかけるカーヴェラ。


新手の騎士達はもれなく彼女の手によって戦闘不能の状態に陥っていた。


「くっ……この、魔女めーー!」 


倒れた騎士の一人が、カーヴェラに向かって文句を垂れる。


「魔女……ねぇ」


いつから自分が《伝説の魔法使い》などと呼ばれるようになったのかーーそんな事は昔のことすぎて心底どうでも良かった。


名声も、富も、力も……得てして尚、彼女の心が埋まる事は無かったーー。


そんな彼女が初めて心を満たされたのは、ある日の出来事。ある弟子との出会いだったーー。


「全く……《運命》ってのは、本当に残酷だねーー」


夕焼けに向かって、カーヴェラはそう吐き捨てた。

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