Ep..3-19 〝絶望〟
ぱちっぱちっぱちっぱちっーー
とーー、誰かの拍手をする音が。
「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……誰だ?」
息を荒げるユウキを前に、砂煙の中から一人の男がーー。
「素晴らしいーーまさか君たち程度の者が〝邪竜ーーバルトロス〟を撃ち倒すとはーー!いや〜、見に来た甲斐があったよ」
砂煙の中から姿を現したのはなんとーー
「っーー!!そんな……な、……んで、」
セシリアが真っ青な顔つきで絶望の表情を浮かべる。
「いや〜……君の潜在能力は素晴らしいと思ってパーティーに加えたんだが……正解だったよセシリア。それに……かつて〝勇者パーティー〟で表向きはお荷物係のお荷物君と呼ばれたユウキーーいや、あえてここは敬称で呼ぶとするかーー。〝名無しの英雄〟ーーユウキ。会うのは三年ぶりかな〜?」
「っーー!!なんで……テメェがここにいやがるーー!!」
体力も限界の中、ユウキの額に脂汗がひたりと垂れる。
相対するその男はーーとても暗く、冷たい声色をしていた。
「〝名無しの英雄〟ーー!!ユウキさんが…………あの?」
かつて聖国で名を轟かせた名無しの英雄ーー。正体不明、目撃者多数ーー。唯一残されたその特徴は白髪白眼の男というだけ。
その正体は、〝勇者パーティー〟のお荷物と呼ばれたユウキだったーー。
この事実を知っているのはユウキの元勇者パーティーメンバーであるSランク冒険者にして、《天賦の隊》リーダーのエドワードと、ユウキの幼馴染であるエリ。あとはカーヴェラの屋敷にいる数人だけであったーー。
「それにしても《転生者》ポピィ・レッドーー。彼女の力もここまでのものとは思わなかったよ……。一瞬とはいえ、バルトロスに一切手を出させない圧倒的な剣技ーー実に見事だった。敵であるのが惜しいくらいにね……。ここで彼女を始末すれば、魔王様もヘル様もお喜びになるだろう……。どうだい〝英雄〟?ここは取引をしないか?」
男は、余裕の笑みを浮かべながらユウキ達に提案をする。
対してセシリアは、その男が放つ魔気に触れて嗚咽寸前であったーー。
「何……なんで……なんであなたが……しかもこの魔気……明らかに魔族のものじゃないーー!!レックスは……アレンはどうしたの!?ねぇ、答えてよ!?ゼルーー!!」
その正体は、セシリアとパーティーを組んでいたBランクの《防御職》ーーゼルであった。
「セシリア……まあいい。とりあえず君はまだ置いておこうーー。取り引きの内容は簡単だ。そこにいる赤髪の小娘を大人しく渡したまえ。そうすれば君たち全員の命は保証しようーー」
「……………………断ったら?」
「もちろん、皆殺しだーー」
「チィッーー!!!!」
ユウキ、セシリア共にダウン状態ーースライムもほとんど限界で、ポピィは気絶状態。
正直言って、絶対絶命である。
「それにしても、まさかお前が生きてるとはなーー。《魔将十傑》第十席、〝暗黒騎士〟ーーロブルス・J・クロフォード!!!」
「私こそ君に会えて光栄だよーーユウキ。かつて私を打ち破った〝君〟に出会えてね……。それと、今の私は《魔将十傑》の中でも第七将まで昇ったのだよ」




