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Ep.3-13 〝待ち構えし者〟


「グルルルルルルーーグアアアアアアアアアアア!!!」


「ハァ……ハァ……まだーーまだだ!ハァ……ハァ……」


〝最下層の主〟を前に、折れた剣を向けるレックス。


ゼルとアレンは気絶してしまったのかーーボロボロの状態でそれぞれ打ち倒れていた。


あまりにも無残なその姿を前に、わずかばかりの士気も消え失せかけるレックス。


しかしーー、


「ボク達は負けられない……お前なんかに……お前みたいな化け物を前に、逃げてはいけないんだーー!」


もう一度近づき、剣を振るう。


「〝雷鳴よーー屠れ!〟」


バリバリバリィィィッーーと、雷の落ちるような重低音のある音響と斬撃が〝その竜〟を襲うーーしかし、


「これでも……無傷、なのか?」


〝上級剣術〟ーー雷斬(らいざん)でさえも、〝その竜〟にはまるで手応えが無かったーー。


その直後ーー、〝その竜〟から攻撃を受けて彼方まで吹っ飛ばされる。


「はーーははっ、…………化け物め…………」


歯軋りをしながら、竜の尾の攻撃によって死ぬ一歩手前までのダメージを受けるレックス。


悔やみながら目の前の竜を睨みつけて、暗い意識の中に身を落としていったーー。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ブォンーーパアアアアアアアッーー  



「着いたかーー、」


ドロシーの作った〝転移型魔法陣〟により茶のダンジョンーーもとい、〝灰色のダンジョン〟の前まで飛ばされたカーヴェラ&華麗&グレイスの3人。


と、少ししてーー。


「よっと〜、お待たせ〜」


魔法陣の中から出てくるドロシーの姿が。


これで潜入準備が整ったーー、かに思えたのだが。


「全く……やれやれ、だな」


カーヴェラがぶつくさと文句を言う。


「我達が来るのを待っておった……と、言わんばかりじゃのう〜」


華麗もまた、面倒くさそうに額に手を当てる。


「こ、……これはーー!?」


周囲の様子に驚くグレイス。


「なるほどね……どうやら、よっぽどあのダンジョンには〝触れられたくない何か〟があるのは間違いないないみたいね」


帽子を深く被り直すドロシー。


見れば移動した先には、〝聖騎士〟達が囲い込むようにして待ち構えていた。


それも、《聖国》の紋章をつけた聖騎士がーーである。


「今回の一件ーー、偶然では無いにしても、少々奇妙な部分があったーー。私が以前《星の魔術》を使用しても出て来なかった〝違和感〟の正体ーー。やはりこれは〝魔族〟の仕業だろう。これだけの〝魔気〟を放つモンスターを飼っているのは《魔王軍》くらいのものだからなーー」


カーヴェラは腕をゴキゴキッ、と鳴らして前へと進む。


「それにしてもずいぶんと面白いことになったのう〜、〝憎み合っている〟《聖国》と《魔王軍》が手を組むなんてなーーふふっ!」


意気揚々とカーヴェラの後ろをついていく華麗。


「…………〝弱き民を守る事こそが、騎士たる者の真なる務め〟……それを忘れたのかーーお前ら!!」


同じ〝元・聖騎士〟として、怒りを露わにするグレイス。


「恩師ーー、普通に末端の騎士までいるようだけど、どれくらい倒す?ざっと見た感じ千人近くいるわよ?」


不適な笑みを浮かべ、カーヴェラに問いかけるドロシー。


その発言に対してカーヴェラはーー。


「無論ーー全てだ。だがこいつらは〝生き証人〟でもある。殺してもいいが、できれば生け取りにしろ。無闇やたらにトドメは刺すな」


そう言いながら一番殺しそうな顔をしているカーヴェラがーー、


「全く……《聖国》もどうやら()()()()()()()()()ようだなーー!」


そう不敵に笑いながら、待ち構える騎士達の中に飛び込んでいったーー。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





コツッコツッコツッコツッ


暗闇の一本道を、ゆっくりと進んでいく。


「たぶんもうそろそろ着くと思う……覚悟しとけよ、お前らーー」


「ひ……ひぃぃぃぃ、本当に行くんですか〜……?」


土壇場になって、すこしぷるぷると足が震え始めるポピィ。


それに対してセシリアは、コクッと強く頷いていた。


「大丈夫ですよポピィさんーー、ポピィさんの事はわたしが守って見せますから!」


グッーー、とガッツポーズをするセシリアに抱きつくポピィ。


「ありがとう〜、セシリアちゃん……何かあったらお願いね!!」


「ったく……元はお前の修行で来たのに何がなんで守ってもらおうとしてんだよ……」


〝上限色覚〟ーーポピィに習得させるつもりで始めたこの訓練だが……やはりポピィには少々早かったようだ。


とーー、そうこうしているうちに、遂に一本道が抜けて大きな広い空間にたどり着くーー。


「はぇ〜!ずいぶん広いんですね〜!」


あまりの広さに感嘆するポピィ。


「こ……こんなに広いなんて、一体どこにいるのでしょうか?」


あまりの広さと薄暗さに萎縮するセシリア。


「ハァ……メンドクセ。さっさとセシリアの仲間回収してずらかるぞ」


気だるげそうに淡々と冷静に、頭を掻くユウキ。


「にゅにゅい!(行こう!)」


意気揚々とポピィ達を守りながら、探索をしていくスライムだった。


……………………。


『ねぇねぇユウキーー、ユウキは大きくなったら何になりたいの〜?』


ユウキはふと、思い出す。


日も落ちかけている夕焼けの中、怪我して帰る道すがら。


白紫色のアイツーーおせっかい焼きの〝幼馴染〟エリの事を。


『私はね〜、カーヴェラさんみたいにすごうでの《魔法使い》になりたいんだ〜!ユウキは〜?』


〝反転血種〟ーー悪魔の血と呼ばれた俺は毎日のように大人子供問わず殴られ、蹴られ、足を投げつけられていた。


そんな俺に対して唯一、エリだけはいつも何の偏見も無く接してくれた。


別に大した理由なんてないのだろう……ただの〝幼馴染〟。ただの〝変な奴〟だったーー。


『…………別に、なんでもいいや、オレに夢なんて無いし』


そっぽ向きながら、そう呟く。


とーー、


『なんでもいいや……じゃ駄目でしょ!?』


むぎゅっ、とほっぺを両手で挟まれる。


エリは物凄く真剣な目で見つめていた。


『じゃあ〜、こうしよ!私はすごうでの《魔法使い》になるから、ユウキは《なんでもできる人》になってー!それで、私とか困っている人達を助かるの!いい?』


『ふぁっ?なんなにょしょへ〜?(ハァッ?何だよそれ〜?)』


いつも勝手で気まま、冒険者になったのもアイツが誘ったからだったーー。


『ぶっーーあっはははは!変な顔〜』


ケタケタと笑い、腹を抱えるエリ。


今でもよく覚えている……他愛もない昔の記憶だ。


でもーーなんで今?


いや……そうだ。アイツのあの〝おせっかい焼き〟な所が、妙にエリに似ていたからーー。


ふと、ポピィの方に目をやる。


しかしその直後、ポピィの目の前にいる〝何か〟の気配が、妙な胸騒ぎを誘った。


「っーー!まさか……!!」


「ん?変だな〜……ここだけ妙に柔らかい……」


ポピィは〝壁〟と思しきところをふにふにと触る。


「やめろポピィ!それに触るなーー!」


「えっ……?」


そんなユウキの静止も既に遅かったのか、一瞬遅れてポピィも〝その姿〟を目の当たりにする。


「っーー!こ、これって……」


「グルルルルルルルルル」


手足がそれぞれ二本づつ、六つの瞳に四本の翼、二本のツノが生えた〝その竜〟が、遂にポピィ達の前に姿を現したーー。


 

   

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