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平穏な時間

作者: 雉白書屋

 ――ウーラ、ウラウラ、ランラララー。ラーウーラーウウラララララー。ウーラン、ランララウララーララララーウウラン、ランララウラーウララララーウーラーララウラウラララララー


 紅藤色の空。流れる小川。麦わら色の芝生のような大地が広がるウーラモス星。

 そこで暮らすウーラモス星人は、やや丸みを帯びた五芒星のような形をしていた。ヒトデのような見た目と言ったほうがわかりやすいかもしれない。

 彼らは単為生殖であるが親愛の情を伝えるように、ぎゅっと抱き合うことを好み、個体同士が近づけば必ず優しくハグを交わす。

 歌と平和をこよなく愛し、彼らの小さな小さな星は常に優しい歌声が流れており、穏やか。まるで夢を見ている最中の緩慢な脳のよう。そんな優しい世界。

 

 ――ウーラ、ランララララーウーラーララララー


 今、この瞬間もだ。トテトテと歩き、個体同士がすれ違い様に寄りあい、ぎゅっと抱き合った。

 それだけで彼らの小さな小さな脳は多幸感で満たされるのであった。


 ――ウーラン、ランララウラララー


 このようにして彼らは長い長い時間、平和な日々を送ってきた。


 ――ウーラーララウラララウラララララー


 

 尤も、それは彼らの世界の時計。小宇宙の中の時間の話である。


『世界は実は五分前に始まったのかもしれない』

 

 そんな仮説がある。神により今ある形に記憶も過去も人も何もかも、宇宙さえも作られた。

 これはそれよりも短い、僅か一秒。彼らからしたら悠久のような時だが、その始まりと終わり。


 第三動力炉並びに第四電気室そして第二資源保管室で起きた爆発によって水素、ヘリウム等、保存されていたあらゆる成分が混ざり合い、そして凄まじい衝撃により偶然にも小さな宇宙。星々が作られた。

 そう、地球を離れ、住みよい星を探し宇宙を当てなく彷徨う宇宙船、ルーントレス号。その本体の爆発により彼らウーラモス星人は生まれたのだ。 

 そして、宇宙船その全てが大宇宙の塵となるその寸前。刹那の時。排水溝に流す絵の具が混ざりあい、一つの色を作ったように生まれたウーラモス星。本人の視界に入ったそれがそれとは知らぬが間違いなく唯一の観測者である第二資源室室長、遠野修平。その脳内ではまるで走馬灯のようにゆっくりと穏やかな歌声が流れていた。

 

 ――ウーラ、ランラララーラーウーラーララララー……

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