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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

狂った兎

作者: 野沢 和存

いや、存在を忘れてましたね、すみません。

一応「僕が召喚された日。」と主人公は同じですが、ストーリーは完全に独立していますのでご安心を。

うだるような暑さの夏の昼下がり。そんな中、避暑を兼ねてこの僕、羽柴将期はカフェで宿題を片付けていた。


「...よし。あと2ページで今日のノルマは終了...か。」


...さて、続きは...って、うえ、敬語かよ...。


「すみません、相席よろしいでしょうか?」


「えっ、はぁ、どうぞ...」


相席だなんて珍しい。そう思って顔を上げると、目の前には美人。様々な系統の顔を足して割ったような不思議な見た目をしている。


「相席させていただいたお礼に、面白い話をさせていただきますね。」


キャロットパイを齧りながら、彼女は目を朱く輝かせてこんな話を語ってくれた。



「ったく...なんで兄さんが付いてくるんだよ...」


「当たり前だろう?烈火くん。弟の初任務なんだから、付いていくのが長男の務めってもんだろう?こんな夜中の仕事なんですし…」


「うぜぇ!自分のことぐらい自分でなんとか出来るっつーの!」


「四の五の言うんじゃありませんよ、中学生が。ったく...」


「着いたぞ、兄さん。ちょっとー、霞さーん!」


…こんな会話を交わしているのは、陰陽師一家、鞠智家の長男、鞠智霞とその弟、鞠智烈火。そうこうしているうちに、二人は目的地にたどり着いた。


二人の眼前には、赤く、紅く、毒々しく見える大きな城のような建物。


「なあ...本当にここで合ってるのかい?なんだかとってもイヤな予感がするんだが...」


「え、何?兄さんビビってるの?やーい、チキンチキンー!」


「そ、そんなことを言うんじゃない!さっさと入るぞ!」


中に入って見ると、そこは荒れ果てたリサイクルショップだった。


「うわ、暗くね...?一番奥にそいつはいるつってたけど...兄さん、付いてくる?」


「愚問だね。烈火くん。ここまで来て逃げる阿呆がどこにいるって言うんだい?」


「それもそーだな!」


二人はずんずん奥へと進んでいった。その時、目の前をふわっ...と白い光のような物が横切った。


「ん?何だ?今の?」


「き、きっと蝶か何か...だと思いますよ。」


「ふーん...まあ何でもいいや。行こうぜ!」


ずんずん進む烈火と、恐る恐る付いてくる霞。バターンと棚が倒れたような大きな音が後ろからした。


「「うわぁっ!」」


と思わず振り返るが、後ろには何もない。


「「びっくりした...」」


前を向くと、そこには、


「お待ちしていました。鞠智烈火さん。」


黒髪ロングでうさみみの生えた女性がいた。


「ひいっ...」


驚く霞を余所に、烈火は、


「よぉ、こんちは。こんな所にいるなんて、どうしたんだ?」


「ちょっと烈火くん...まさかこいつがターゲットなのかい?」


「あぁ...そうだけど?」


「あら...霞さんも来て下さったんですね。」


「ひっ......あぁ。弟のことが心配だったのでね。」


「鴨が葱を背負ってくるとは...このことね。」


そう言い放つと彼女は、瞬きする間に消えていた。...否。目を血走らせた、人間サイズのウサギがいた。両手に包丁を持ち、2つの足ですっくと立ち上がって。


「「ギャー!」」


二人は叫びながら、ポケットに忍ばせた御札を取り出した。


「久し振りに遊び甲斐のありそうなニンゲン...しかも二人も。貴方たちの血は、どんな色をしてるのかしら?」


そう話しながら、切りかかってきた。


「うぉっ...危ねぇ」


間一髪で、なんとか避けた烈火だったが、ウサギのスピードはとてつもなかった。


「これはこれは...殺らないと殺られる、ってやつですねっ...」


振りかぶった御札は、ウサギの首に貼り付いた...はずだった。しかし、


「......?!」


傷を負ったのはウサギではなく、何故か兄の方だった。ウサギの首ではなく、兄の首から噴き出す血...


「兄さん!大丈夫か!?」


「私は大丈夫です。でも...え?どういうことですか?え?」


「ん?どうしたんだ?」


「いや、見てましたよね?私が貼ったんですよ?何で私が傷を負うんですか?」


「んふふふ...あははっ!やっぱり美しい深紅の血液...この建物を塗るのにふさわしい...もっと、もっと血が必要なのよ...ねぇ、私を楽しませて。もっと、私と遊んでよ...!」


狂ったように嗤うウサギ。包丁を振り回し、兄たちの方へ突進してくる。


「と、取り敢えず、お前のことを祓ってやるよ!」


「いえ、だめです!あのウサギを傷付けようとすると、自分が傷付いてしまいます!」


「ちっ...じゃあどうすりゃ良いんだよ!」


「あ、もしかして...」


そう言うと、兄はウサギの攻撃を腕に受けた。当然、兄の腕は切れた。


「ちょっと兄さん、何やってんの!?」


「いえ...ウサギへの攻撃がこっちに帰ってきたので、反対に私が攻撃を受ければ向こうにダメージが行くのでは...と、思ったのですが...打つ手無し...ですね...」


「こんなやつと戦うだけ無駄だよ...さっさとずらかろうぜ!」


「私の巣穴から逃げ出せるとでも...?」


「走れるか?弟!」


「大丈夫だぞ!」


全力で走り出す二人。その二人の後を、ウサギが飛び跳ねながら追い掛けてくる。


「逃がさない...絶対に逃がさない...」


包丁を次々と投げつけ、動きを止めようとしてくる。が、


「その程度の攻撃なら、余裕で避けられますよ。」


「あぁ、だな!」


流石鞠智一族、包丁のカーテンを物ともせず、出口までたどり着いた。


「「はぁ、はぁ、はぁ...」」


外に出て、後ろを振り返ってみると...そこには何もなかった。さっきまでいた、赤く、紅くそびえ立つ城のような建物は消え、ウサギもいなくなり、ただの更地になっていた。兄が首に触れると、ぬるり...とした血の感触。その血が、今までの現象が夢でも、幻でもないことを告げていた。


「...っていう、少し不思議なお話。面白かった?」


キャロットパイを食べ終え、指に付いた粉を舐めながら彼女はこちらを見てきた。


「はい。まぁ、不思議...というか、怖いというか。」


これは、何かの怪異の話なのだろうか?だとすれば、何の怪異だろう?


「このウサギはねぇ...きっと寂しかったのよ。兎は、独りぼっちだと寂しくて死んじゃうの。一人っきりで死んでしまった兎が、遊び相手が欲しくっていろんな人とじゃれてるの。」


「じゃれてる...にしてはちょっと過激な気もしますが...」


「そう?...ご馳走さまでした。また今度、縁があったらまた遊びましょう。」


そう言うと、彼女は僕の席から立ち去っていった。























ところで...彼女の頭に、ウサギの耳が生えていたような気がしたのだが...気のせいだろうか?

お読み頂きありがとうございました!

是非評価、感想等していっていただけると幸いです!

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