第57話
「あ、あの!大丈夫です!間違ってないので!!」
セシルは慌てて言う。
「分かっています!うちの愚弟は思い込みが激しく、動かないかとにかく前進するタイプ!!突っ走っていきなり求婚し、ドンびかれて今度は毎日通いつめ、友達宣言でありえない浮かれ方をしていたルイスが、セシルさんの心をすんなり射止められるはずが・・え?間違ってない?」
随分長くしゃべってから、今の会話を反芻すること数秒。
「「どういうこと、ですか?!」」
(仲のいいご夫婦だな。)
グランとフィネルは、まったく同じ反応をしながら、セシルに顔を近づけた。
「ですから、あのう・・ルイスさんからの求婚を、お受け、しました。」
「「なぜ?」」
「あー・・ええと・・ルイスさんのこと、ちゃんと異性として好きだなあって。それに、もう逃げられないことを受け入れちゃおうかな、みたいな・・。」
言いながら、不安になってくる。
(貴族の方を相手に、こんな曖昧な言い方で失礼よね?認めていただけないかも・・。)
見ればグランもフィネルも、そしてなぜかルイスまで、小刻みに震えている。
「だめ、ですよね?こんな理由だけじゃ。私、やっぱり・・。」
恐る恐る身を引こうかとそう言った時。
「いいえ!全然だめじゃありません!!」
フィネルが力強くセシルの手を握った。あげたその顔は涙に濡れている。
「すみません。感動のあまり言葉を失っていました。ルイスが・・ルイスがついに花嫁を得るとは。・・良かったな、ルイス!!」
「僕は、今初めてセシルから好きって言われた・・!!」
ルイスだけは若干ずれているが、どうやら彼らはセシルを歓迎してくれている、ということは分かった。
「ケーキの用意がととのいました。」
そう告げる執事。続いて、ろうそくの幻想的な光を揺らめかせて大きなケーキが運ばれてくる。
「セシルさん。ルイスがセシルさんでなければ駄目だということは、おそらく我々の方が充分に分かっています。どうか、捨てないでやってください。」
「あなた、始まったばかりの二人にそんな言葉、野暮ですわ。さあ、セシルさん。私たちからのお祝いの気持ちです。ろうそくの火をふき消して下さいな。」
フィネルに促されて、セシルは思いを込めて一息で火を吹き消す。
(どうか、これから、ルイスやこの素敵なご家族と、幸せに過ごしていけますように!)
大きな拍手がセシルを包み込んだ。
「ありがとうございました、ルイス。」
夜。ジストで送ってもらったセシルは礼を言う。
ルイスは手をかざし、「解除」と詠唱した。
時が動き始めて、風が吹く。
「あのね、セシル。」
ルイスが前を見つめたままポツリと呟く。
「いつか、僕らが二人の家を持ってどこかで暮らすことになったら・・また、セシルの家の時を止めさせてほしい。」
「え?」
セシルは聞き返した。
「時の魔法は、そのために修得したんだ。」
ルイスはただ、続ける。




