第47話
ルイスは思いの外柔らかい衝撃でうけとめられた。
それでも吹き飛ばされた衝撃は重く、身体が動かない。
(くそっ!セシルを探さないと!)
焦るルイスに、空から獅子が降りてくるのが見えた。
まだ若い。
しなやかな体つきとたてがみの長さからそれが分かる。
「ガルルル・・」
敵対心を剥き出しにした唸り声。
だが、攻撃は仕掛けてこない。
ルイスはかろうじて体を動かし、上半身を持ち上げた。
「・・ヒール。・・?」
詠唱する。しかし、起こるはずのことがなぜか起こらない。
(魔法が、使えない?)
『静かにしろ。こやつは大丈夫だ。』
突然、腹に響く低温の声がした。
(後ろ?)
顔だけ後ろを向き、自分を受け止めたものが、白い毛並みであることを知る。
「もしかして、精霊の王?」
小声の独り言は、正確に声の主に聞かれたようだった。
『ああ。そうだ。もうすぐ先代、になるがな。青年、うちのが悪かったな。この場所を守るために、脅威を取り除こうとしたんだ。』
そう言うと同時にルイスの身体は光に包まれ、痛みが消えていく。
身体が動かせるようになったルイスは、寄りかかっていた毛並みから離れ、立ち上がった。
「ウゥ・・グルル。」
相変わらず若い獅子は隙のない目でうなる。
「彼は、息子さんなのかな?次期精霊の王?」
ルイスが尋ねると、王である獅子が目を細める。
『やつ、セルシオは、息子ではある。次期王かはわからん。条件を満たしておらんからな。』
「それじゃあ、森で目撃されたのは彼かな?」
『そうかもしれぬな。あるいはもう一人か。』
(報告が難しそうだ。)
ルイスは顔をしかめる。
魔獣ではなく、聖獣であることは間違いない。
だが、精霊の王か否かまでジャンニは求めるだろう。
ただ今は、それより大切なことがあった。
「聞きたいことがたくさんあるけど、とりあえずこの空間に入ったもう一人のめちゃくちゃ可愛い女の子のことが聞きたいんだけど。」
精霊王は少し笑ったようだった。
『セシル、だろう?心配いらぬ。ジルダが時期に、ここにつれてくる。』
「なぜ、分かるの?というか、ジルダさんって、セシルのおばあちゃんだよね?幽霊的な話?」
「ガウ!」
セルシオと呼ばれた若い獅子が吠える。血の気が多そうだ。
『セルシオ。黙っておれ。こやつからは竜の気配がする。多少の無礼は大目にみてやれ。』
(ああ、失礼を怒ってたのか。)
理解はできても、改善する気はあまりないルイスである。
『セシルは、わが血を引く者だからな。わしはよく知っておる。ジルダは、セシルの祖母であり、わしの妻だ。』
説明しているようで、いまいち核心が分からない言葉に微かにイラつく。
「要するに、ジルダさんは何者なの?」
ルイスがそう尋ねた時、奇しくも精霊王のもとに向かう道すがら、セシルがジルダ本人に、同じ質問をしていた。




