第46話
頬を温かいものが撫でる。
少しざらついたそれは、安心する温度で、でもくすぐったい。
「ん・・。」
セシルはわずかに身じろぎして目を開ける。
その瞬間、白い影が飛び退いて、草影に隠れるのが見えた。
そんなに大きくない。
頬に手をやると微かに湿っている。
「なめて、起こしてくれたの?」
不快感はない。なんとなく、優しい起こし方を選んでくれたような気がした。
草むらに一歩近づこうとした時。
「みつけた!」
ふいに髪の長い女性が現れて、草むらから白い生き物を抱き上げた。
『わあ!』
抱き上げられた生き物は声をあげる。
(あら?言葉か分かるわ?)
抱き上げた女性は、セシルに目を止めると、大きくその目を見開いた。
「セシル!?」
驚いたのはセシルの方だ。
その女性は、白いワンピースに身を包んだ美しい人だったのだが。
(知らない人、よね?)
「セシル!おまえ、なんでここに?王都の森にいたんじゃないか?いや、モルベール領に来ることはあっても、ここは・・一体どうしたんだい?」
矢継ぎ早に質問されるが、セシルは混乱するばかりだ。
「あ、えーと。」
『知り合いなの?』
抱き上げられている動物・・猫に近いが少し違うような・・が女性に聞くが、女性は「はい、はい。」と頭を撫でる。
『だから、知り合いなの?って!』
「いいえ、どなたかわからないんです。」
セシルは思わず答える。
女性と動物が、それぞれの理由で、驚いた顔をする。
「私が分からないのかい?」
『ボクの言葉が分かるの?』
「・・はい・・。」
どちらにも当てはまる答え。
それに対する反応は真逆だ。
「ショックだね・・」
『すごい!嬉しい!』
(順番に解決した方がいいかもしれない。)
セシルはまず女性から話をすることにした。
「以前お会いしたことが?」
「会うもなにも・・。」
そう呟いた女性は、ハッと気づいたように、
「ああ、そうか。これならどうだい?」
と動物を地面に置き、両手を開いて目を閉じた。
女性の顔が急速に変わっていく。
別の人になっていくというよりは、
(年を取っていく?)
怖くはなかったが不思議な気持ちで見ていると、その顔はやがて・・
「ジルダ・・おばあ・・ちゃん?」
「そうだよ、セシル。分かるだろう?」
目の前で、死んだはずの祖母が微笑んでいた。
騙されているのかもしれないと思わなかったわけではない。
だが、そう言われてみると女性のもつ雰囲気は祖母と全く同じで、疑う気になれなかった。
「今は、こっちだけどね。」
そう言ってぱん、と手のひらを叩くと、女性の姿はもとの若さに戻る。
「ジルダおばあちゃんが、なぜここに?いや、だって、私、お葬式したし、庭に埋まってるわよ?」
そういうことを本人に言うのはどうかとは思うが、頭に浮かんだままに問い詰めてしまう。
『君、ジルダの孫なの?』
前足をセシルの足にかけて聞いてくるのに、
「そう、みたいです。」
と答えるセシル。
「セシル、フィンネルの言葉が分かるのかい?」
ジルダが驚いたように聞いてくるのに、
「そう、みたいです。」
と答えるセシル。
変な会話が続く。
「あー、なんだか、質問したいことはたくさんあるんだが、とりあえずなんでここにいたか、聞いてもいいかい?」
ジルダの言葉に、説明しようとして、セシルは重大なことを忘れていたことに気がつく。
「あ!ルイス!もう一人、男の人が来ているはずなんです!無事を確かめなくちゃ!!」
「『ルイスって、だれ?』」
今度は二人(?)の声がハモった。
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力を振り絞って頑張りますので、どうか最後までお付き合いよろしくお願いいたします!




