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8.芝原スズカ その4

「最悪の流れだよ、これ!」


 入試二日目。私は昨日とは違う会場で常識問題を解きながら心の中で叫ぶ。


 まあはっきり言って常識問題はそこまで難しくない。


 主に出るのは「最近のニュース」「言葉の意味」「敬語」「表やグラフの読み取り」「日常生活」などを始めとした、文字通り常識的な内容だ。今年は特に簡単なようで、私も片っ端から倒していく。


 それがより流れの悪さを実感させる。


 まずは昨日だ。


 理科までは良かった。史上最高の出来だったかもしれない。




 そのあとがダメだった。


 英語で夢の話が今年も出されるとは! 脳をフル回転させて解いたが、何を言っているのかいまいち掴めず。動揺した私は次のリスニングも何度か聞き逃す始末。


 英語とリスニングはいつもより取れてないだろう。センスタイプの私は直感が働かないと弱い。




「英語ありえないよねーー! 人の夢とかどうでもいいし!」


 昨日の夜、愚痴るために親友のモナミに電話したときに言われた。その通り。モナミも学年でトップ10に入るくらい勉強できるが、数学と英語はダメだったらしい。




 で、そこのお兄さん、これですよ。トドメにこの常識問題ですよ。


 簡単すぎない?


 私は常識問題が国語社会に次いで得意だ。だって常識のある女だから。


 どんな問題でも高得点が取れる。つまり、難しければそれだけ点差を付けられると思っていたのに。


 常識問題が難しくなることをお風呂で寒さに耐えながら冷水被ってお願いしたのに。




 流れは戻らず、今に至る。


「『僕の家に先生が参ります』を正しい敬語の使い方に直しなさい」


 また簡単だ。全く勉強していなければ困るのかもしれないけど、ちょっとでもやっていれば解ける。正解は『僕の家に先生がいらっしゃいます』だ。「参る」は自分の行動に使う。




 解いていくうちに「このまま引き摺っていてもいいのか?」という想いが湧いてきた。常識問題が簡単なのはいつものことだ。それよりもこの焦った気持ちを次の選択科目に持ち越すことの方が危険だ。


 落ち着け、私。




 目を閉じ、深呼吸する。


 大丈夫、スズカ、あなたはできる。高校も合格するし、国家ランクも一番上になれる。勉強もたくさんやってきた。選択科目の「体育」と「音楽」も人並み以上にできる。あとは気持ちだけよ、がんばれ!私はやる気いっぱいだ。やる気マシーンだ!


「よっしゃ!」


 気合を入れ直す。




 試験官が来て、声を出さないように注意された。世知辛い世の中だ。




 気を取り直して問題に集中する。


「『高校入学及び国家認定クラス選抜試験』を始めた首相をフルネームで答えなさい」


 はい、「林シンパチ」ね、常識。




「昨年様々な世界国際会議が開かれ、IT産業が最も盛んなインドの都市を答えなさい」


 よくニュースでやっていた、「バンガロール」だ。




「『初志貫徹』の意味を次のア~エの中からひとつ選び、その記号を書きなさい」


 これも楽勝で「ウ 最初に決めた志を最後まで貫き通すこと」しかありえない。




 ネクスト能力「スーパーリーディング」を使うこともなく、十分前に解き終わり、ミスがないか見直しをしていく。途中の一問だけ記号を書き間違えていたので訂正する。


 チャイムが常識問題終了の合図を告げた。


 もう落ち込まない。私は次の科目に意識を集中させていった。


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