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かの者は高潔であった

かの者は皆に慕われていた

かの者は強かった


ある者は言った、あの御方は、騎士の中の騎士、騎士道精神の体現者であると

ある者は言った、あの御方の剣技は世界一、向かうところ敵なしの天才であると


事実、あの者は純粋で高潔な正義感を持ち、民から慕われていた、そして彼女の持つ天才的な剣技がそれらを支えていた。その姿は、騎士の中の騎士、まるでおとぎ話の登場人物のよう。

しかし、あの者には致命的でどうしようもないミスが存在していた。

それはあの者が女に生まれたことである。


【勇者伝説・騎士編】序文、『エミーリエと言う騎士』より

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


私は今、非常に憂鬱な気分だ、だからといってここで嫌だ嫌だと駄々こねるわけにも行かないのがお嬢様の辛い所、しかも今、私が悩んでいるのは実にお嬢様らしい問題であるから更に憂鬱だ。

何がそんなに憂鬱なのかといえば今日、私はお母様にいきなり言われたのだが、何でも国王名義で届いた手紙の王位継承権第二位の王子様主催のパーティーに参加して欲しいらしいそれも明日、いきなりだ、もっと早く教えてくれ。


それにこのパーティーというのが、貴族のご子息とご令嬢を集めて、王城の中庭で行われるそうなのだが、此処で社交界デビュー前の慣らし運転のようなことをするついでに、友達作ってこい、ってイベントである。まあ詰まるところは王子様や貴族の子供達の婚約者候補探しである、行きたくねぇ。


最近自分の性別を忘れがちではあるが、外見は非の打ち所の無い美少女だが中身は享年16歳の思春期男子である、絶対精神的BLは避けたい、というか今も何方かと言えば女の子のほうが好き。とは言え歳のせいなのか恋愛に対して興味が持てない。私はいま五歳、今日のパーティーと言う名のお茶会にお呼ばれしているのも、私と大差ない年の子どもたちばかり、これは周りもそこまで意識していないだろうから今回はまだマシではあるが、12~3歳で国立の学園に入学するまで、半年に一回程度の頻度で定期的に開催されるそうで、これでゆっくりと婚約者選びをしていくそうだ。

半年に一回学園に入学するまで続けられるそうだ、更にあと五年、早ければ3~4年で貴族の地位や利権を掛けた泥沼の戦い、婚活戦争が始まることだろう、この戦いは最早避けることなど出来ない、決定付けられた未来。この戦いをどう乗り切るかで今後の進退、生活、全てが決まると言っても過言ではあるまい、故に皆必死なのだ、だから私がいろんなドレスを取っ替え引っ替えして、一人ファッションショーをしているのは仕方なく、仕方なくなのだ。あ、コルセットはいらね。


今日は黒のレース生地のフリルがたくさん付いた黒のドレスに身を包んだお人形さんファッションで、王都にある我が家を出てからガタゴトと馬車に揺られ、やって来たのはこの国の中心、琥珀城に来ている、すごく日本語な名前だが、由来はこの国の建国王である勇者サマの名前に有るそうだ、相変わらず安直なネーミング、作sy...ご先祖様達にはもう少し考えて名を付けてほしかったですわね。

ですが名前の適当さとは違いそれは豪華絢爛なお城の中庭にておこなわれるパーティーと言う名のお茶会に来ている、いやもうね、次元が違いますね、子育てには王都の方が都合がいいんだとかで、まだ実家?には行ったことがないがそれでもここまでの庭はないだろう。もう何か、手入れがしっかりされてるとか、お金かかってる、とかがもう想像出来ない、何人使って手入れしてるんだとか、年間いくら掛けて維持してるんだ、とか、もうさっぱり分からん位広い、やべえ、噴水クソ立派なんだが、え、此処でやんの?場違い感が半端ねぇです、あいや、わたくし貴族令嬢でしたわ。


メイドさんに頂いたお紅茶を会場の端の方の席で頂いてるのですが、このお紅茶家で飲む紅茶よりも間違いなく良いものですわ、何かもう香りが違いますわ。まあ私甘い紅茶が苦手で無糖しか飲めないんですけど、わざわざ砂糖抜いてもらって良かったですわ、これには私も珈琲裏切りそうですわね、美味しい。


適当にお茶菓子をつまみながら、待っていたら、先程までチラホラとしか居なかった参加者達も続々と集まってきて大分賑やかになってきた、そろそろ王子様もいらっしゃってパーティーが本格的に始まりそうですわね。王子様に挨拶が必要とかそういう感じじゃないみたいだし、適当に顔見て適当なところで退散しますかね、まあでもその前にお紅茶をもう一杯。


ガヤガヤしてたのがいきなり静まり返って...3、2、1

『キャー!!』

おぉっとこれは、少女たちの黄色い咆哮!決まったぁ!!

リリーは耳を塞ぎそこねた!

リリーの耳に大ダメージ!リリーは混乱している!


馬鹿なことやってないでご尊顔を拝して、適当に時間つぶして帰りますかね始まったばっかだけど、30分か40分ぐらい時間つぶしてから帰ればバレへんやろ、問題は30分程度で王子様の顔がここから見えるようになるかが問題だね。しかし、私と同い年ぐらいの娘達が黄色い悲鳴を上げるほどのイケメンってどんなのかしら、うらめs、気になるわね!


「君、隣良いかな」

お紅茶に隠れて目立たなかったけれど、このクッキークッソ美味いわね、でもいちごジャムやマーマレードジャム、ナッツが入った物はあるのにチョコチップがないのは残念ね。そもそもチョコレートを見たことが無いから、カカオ豆を輸入してないのかしら?あれ?でもこれぐらいの時代にはどっかの貴族が薬とか媚薬的な感じで使ってたっけ?

「あの、まあいいか、座るね」

この世界の海運事情は今どうなってるのかしら、航海用の羅針盤は発明されてるのだろうか、活版印刷は有るっぽいからすでにあるか、無いとしても直ぐに発明されるだろう、そうすれば時間はかかるだろうがチョコレートが伝来することだろう、貴族相手に売る付けるとなればきっと媚薬としてこの国に入ってくるだろうがそれはチョット困る、私が買い辛い。お父様名義で仕入れるか?怒られそうね。

「おーい」

「はーい」

うん?今の誰に返事した?

クッキーしか見てなかった目を掛けられた声の主がいるであろうほうに向けて驚愕した!誰だこのイケメン?!顔を上げたらそこには可愛いと称されるタイプのイケメンが居た、低身長で女顔、青みがかった髪を肩まで伸ばした男の娘。服装のお陰で誰が見ても可愛良いイケメン男子に見えるがこれ、格好が違えば女の子です、と言われても分かりませんわよ、いやむしろ男装した女の子なのでは?


「あ、やっとコッチ見てくれたね」

「ご、ごきげんよう」

えーと、誰?うんまあ、ほとんど家から出ないから知り合いなんて居ないんで知ってるわけ無いんですけどね。じゃホントにコイツ何処のドイツだよ...ナンパか?

まあ!わたくし!美少女で す か ら!イケメンに声掛けられちゃったゼ☆全然嬉しくねぇ☆


「僕はロッソ・カヴァリエーレ、君は?」

ロッソは確か、イタリア語で赤、でもカヴァなんたらって花は聞いたことありませんわね、花には大して詳しくは無いのできっと有るのでしょう、アベリアも知らないし。でもカヴァリエーレは聞いたことありますわ結構な名家だった気がします、どの本の話かは思い出せませんが。おっと自己紹介しなくちゃ。

「私はノワール・リリーと申しますわ」

えーと、どうしましょ、あちらさんはニコニコしてらっしゃいますが、どうしましょう話題なんてさっぱり用意してませんわよ、お天気の話しはやめといた方が良いわよね?と、取り敢えず私もニコ♪っとしとけば良いのかしら、良いわよね?


「リリー家といえば、海に面する領土を持っているんだよね?」

「ええ、そうですわね、王都からではかなり距離がありますので行ったことはないのですが」

あちらの世界のイギリスで言う所のロンドン辺りにリリー家の領土があり、この国の王都は城が元々魔王城とされていた城を改装して使われている関係であちらの世界で言う、アイルランドのど真ん中を大胆に開発したような感じだ、だから実家までは大分距離がある。


「そっか、僕は海が見てみたいんだ、見たことのある人からどんな物なのか聞いてみたかったんだけど」

「そ、そうですのね、私も見てみたいですわね」

まあ、日本人だし見たことありますけど今世では海は見ていないし嘘じゃ無いね、うん。


会話が続きませんわ...。


「えーと、あの、何時になるか分かりませんが、いつか私がリリー領を案内して差し上げますわ」

「本当かい?それは楽しみだけど...君も行ったこと無いんだよね?」

「ゔ」

そりゃ行ったこと無いよ、家から殆ど出たことも無い箱入りよ、でも多分名家のご子息であらせられるお方とのパイプが有ったほうが良いと思って、誘ったのだけれど失敗したかしら。

「あはは!、君面白いね!うん、海が見れる日を楽しみにしているよ」

「ええ、わたくしも楽しみですわ」

うーん?なんとかなったぽいぞ、「へぇ、おもしれ女」みたいな事言いやがりましたよこのイケメン、こんなこと言って不自然じゃ無いって顔って大事なんだな、裏山。

「あ、王子の周りが空いたね、お仕事に戻らなきゃ」

「お仕事?」

この場で仕事?主催者側の人間か?となると王族に関係がある人間、カヴァなんたらカヴァなんたら...あれ?教典?やべぇ、予想外の大物かも。


「うん、お仕事、うちの家は代々王家の護衛を仰せつかってるからね、似合わないでしょ?」

「えっと、だ、大丈夫ですわ!これからですわ!」

いやまあ、うん、似合うようにはなりそうに無いけど、その顔でゴツくなられてもそれはそれで嫌だし、まあ、この世界には魔法が有るんだからきっと、うん。

「ふ~ん、ほんとにそう思ってる?」

「...まあ、ほら、王族に使える人たちは一人じゃ無いのですから、得意な人に任せてしまっても良いのではないですか、貴方はまた別の得意なことを見つければいいですわ、うん」

フォローできたんじゃなかろうか、まあ、私家の責任とか、決まりとか全然知らないから、責任なんて取れないですが。

「ふふ、ありがと、お仕事頑張ってくるね」

「ええ、行ってらっしゃいませ」


行ってしまいましたね、よし、また他の人に話しかけられる前に帰りましょ、うん、お母様には遠回りして帰ってロッソ・カヴァリエーレさんとお話したって説明すればよかろう、そうと決まれば王城探索だ。


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