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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第5章 竜と鬼、贄と咎

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     ★  レフ魔導帝国 天幕街  ★




「どうなってんだよ、クソッタレ!」

「大きな声は出さないように。すぐにここにも人が来るだろうけどね、それが5分後なのか、1分後なのかは大きな違いだろう?」


 アバの天幕へ逃げ込むようにやってきたのはダンテス、ミミノ、ノンの「銀の天秤」メンバーだった。

 会議の後、ダンテスたちは関所を通過して帝国内に入っていった。

 迷宮攻略第4課のメンバーとともに戦利品の持ち運びに同行して3日、戻ってきたら——急にアバに捕まって天幕まで連れてこられたのだ。

 来る途中で簡単に事情は聞いていた。

 英雄武装が奪われたこと。研究に精を出していたムゲもケガを負ったが無事であること。ルルシャは被害者であるというのに「ありもしない英雄武装を実在するように偽り、帝国を混乱させた」と言われルルシャが捕縛されたこと。そして「銀の天秤」がルルシャを「そそのかした」のではないかということで兵士がダンテスたちを探していること——。


「英雄武装は確実に手に入れてたじゃねえか! むちゃくちゃ言いやがる」

「怒るのはもっともだがね、今は君たちも姿を隠したほうがよかろう」

「お前、ルルシャが捕まったってのになに冷静ぶってる!」


 怒りにまかせて言葉を発したダンテスは、気がついた。

 アバの手が握りしめられ、拳が震えていることに。


「……冷静であれと自らに言い聞かせていないと、今にも暴走しそうでね。君から見て冷静のように映るのならばよかった」

「アンタ……」


 アバは、自分が思っていた以上に熱い男だったのかとダンテスは初めて知った。


「……すまねえ。いきなりのことでカッとなっちまった」

「いえ」

「それよりもこれからどうするべきか考えましょう」


 ノンが言うと、アバは、


「ルルシャが捕まったとは言っても、これまでの功績もある。だからすぐにどうこうはならないだろう。聡明な皇帝陛下に英雄武装を持ち帰った記録を吟味していただければいずれ解放されると見ているね」

「その間、私たちは姿を隠したほうがいいと?」

「そうだね。君たちは帝国国民ではないから、守り切れないかもしれない」

「——おい。そんなことより英雄武装を探したほうが早いんじゃねえか?」


 ぽん、と手を叩いてダンテスは言ったが、アバは首を横に振った。

 すでに天幕街の捜索は終わっていたのだ。


「そんじゃどこにいったんだよ」

「それがわからないから困っているのだね」

「——あ、そう言えば」


 とそこへ、それまで黙っていたミミノが口を開いた。


「『憤怒の迷宮』から戻るとき、ちょっと危ないけど街の真ん中らへんを通ったべな?」

「ん? ああ、そういやそうだな。レッドゲートからモンスターは落ちてくるが、街を突っ切ったほうが近道だからなあ」

「そのとき、ダンテスは見なかったべな?」

「ん、なにをだ?」

「冒険者だ」


 ミミノたちは冒険者であり、冒険者を見間違うことはほとんどない。逆に帝国兵士だったら誰が誰だかわからないので見間違えることばかりだろうが。

 ミミノが言うには、建物の陰から陰へとこそこそ移動している5人ばかりの冒険者がいたということだった。ヒト種族の冒険者がもしもいれば、このあたりだと非常に目立つ。だから覚えていた。


「それがなんなんだ? どっかが雇ったんじゃないのか」

「そりゃ、そうだべな。雇い主がいるんだと思う」

「? なにが言いたい?」

「冒険者が単独で、雇い主といっしょでもなく帝国内をうろうろしてるのは怪しいべな」

「そりゃ……そうだが」

「そこで、英雄武装だ」


 ミミノは人差し指をピンと立てた。


「天幕のどこを探しても英雄武装は見つからなかった」


 ピンと中指も立てた。


「国外に運び出した記録はない」


 ピンと薬指を立てた。


「だから——英雄武装はない。だな? だけどもう一箇所隠せるところがあるべな」

「!」


 ダンテスだけでなく、アバやノンもわかったようだ。


「まさか——関所を通って、戦闘地域である街中に隠したってことか?」

「そうだべ」

「んなバカな。大体、ただ隠すだけにしても危険過ぎるだろう」

「でもメリットはある」


 アバが口を挟んだ。


「街中なら、ここにはない研究設備がある。おおっぴらに研究までできる!」


 ぐっ、と両手を握りしめたときだった。


「——アバ副局長、今、天幕内にどなたかいらっしゃるのですか?」


 外に複数の気配があった。日が差すシルエットは兵士たちのそれだ。


「いや、ひとりだ」


 あわててウソを吐いたアバは、ダンテスたちに、


(天幕の反対側を切って脱出するといい。急いで)

(わかった)


 指示を出す。


「——現在、犯罪者とおぼしき『銀の天秤』という冒険者を追っております。中を確認させてもらっても?」

「すまないが今着替えている。すぐに出るから待っていてくれ」


 アバが時間を稼いでいる間にダンテスは天幕の奥へと行き、出やすい場所を探す——。


(そうだ、ここを離れる前にレイジくんのことだけ確認しておかなきゃ)


 ミミノはひとり、魔道具を確認し——絶句した。

 皿のような銀製の金属が、真っ二つになっていたのだ。


(これは、なに? レイジくんはどうなったべな!?)


 すると彼女の腕がつかまれる。


(早くしろ、ミミノ!)

(だけど、ダンテス。レイジくんの——)

(いいから今は逃げるぞ!)


 引っ張られ、先に出ていたノンがまくってくれている幕をくぐってミミノは外へと出た。

 こうして、レフ魔導帝国の領内にある「九情の迷宮」、その攻略に尽力し多大な功績を挙げたはずの冒険者パーティー「銀の天秤」は、追われるように逃げ出すこととなった。


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― 新着の感想 ―
どんだけ投獄されんだよww 悪質な誤情報流したやつ前回で罰しろよ 威厳のある王様(笑)無能すぎて臣下に舐められてますやん こんな短いスパンで重犯罪者に仕立て上げられりゃおかしい言動してるやつの特定簡単…
[一言] もうある意味滅んだ方が世のためなんじゃないかな・・・
[一言] 何度同じパターンをやるのか
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