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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第4章 離界盟約《ワールド・アライアンス》

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「——それじゃ、アーシャのこと、よろしくお願いします」

「もちろんダ。ハイエルフ様にはなに不自由なく生活いただくことをお約束しよう」


 族長は力強く請け負った。

 竜人都市へ「ゆで卵判別機」を取りに戻ることについて、アーシャとふたりで戻るかちょっと迷ったのだけれど、アーシャを連れていくなら、「我ら全員ついていきます」と平伏されたのでさすがにそれは勘弁してもらいたく、結局僕ひとりで行くことにした。

 ダークエルフたちを信用しすぎるのもどうかと思ったけれど、竜人都市でもすでにやったことだし、ダークエルフが僕らを騙すために一芝居打っているということは考えにくい。


「……必要な、ことなのですよね?」


 やはり不安はあるのだろう、アーシャに聞かれた。

 朝日を浴びた彼女の金色の髪は美しく輝いている。


「はい」


【離界盟約】という天賦がどんなものかはわからないけれど、2つの世界に関する「盟約」の名を冠した天賦なので、きっとなにか役に立つはずだと思った。

 僕が竜人都市に戻っている間、ノックさんたちダークエルフはラ=フィーツァの痕跡を探してくれるらしい。ありがたい。


「それじゃ、いってきます」

「お気を付けて」


 僕は身を翻すと枝から飛び降りた。

 近くの枝へと降りて、順々に降りていき——最後は【風魔法】で落下スピードを落としながら着地する。


「——お気を付けて!」


 アーシャの声が頭上から聞こえてきた。

 僕は見上げて手を振った。


(まだ……話してない。僕が星16までの天賦珠玉を使えることについては。だけどアーシャは僕を信用して……心の底から信頼してくれている)


 少しだけ、良心が痛んだ。


「——よし。アーシャの信頼に応えるには、なるべく早くに戻ってくることだな」


 気合いを入れ直し、走り出す。

 目指すは竜人都市。

 数日前に旅立って、すぐに戻るなんてちょっと気まずいけどね。



     ★  地底都市  ★



「もう、アンタにぶっかける酒だってもったいないって思うくらいにはなったのよォ」

「…………」

「この能なしがァッ! グズ! さっさと星6つを探し出してこい!!」

「はっ」


 最敬礼した元帥はウルメ総本家の当主サルメの前を辞した。

 地底都市に侵入者が出る——そんな、天地を揺るがすような出来事から半月以上が経った。

 彼も、彼が連れ出した竜人(・・)も、そしてスーメリアも行方がわからない。

 おそらくは竜人都市にいるのだろうが、竜人都市の場所はわかっていない。


(サルメめ、だいぶ荒れているな)


 地底都市の最大の強みは「場所がわからないこと」だった。だというのに、バレた。そのせいでいつ竜人が攻め込んでくるのか、という妄想に駆られているのだ、サルメは。


(冷静に考えれば竜人がこちらに攻め込んでくる理由もないだろうに。大体、都市の所在がわからないほど遠くにいる彼らが遠征してくるとでも本気で思っているのか?)


 最近、サルメの情緒不安定は度を超していると元帥は思っていた。いつも侍らせている若い男も、たまに顔に青あざを作っているのでサルメに殴られているのだろう。


(そうだとしても、連中はサルメに媚びるのを止めない。それしか生きる道がないからな……)


 元帥はサルメだけでなく彼女のそばにいる、甘い蜜に群がる虫のような連中を蔑みながら軍の総本部に戻る——と、そこには女軍人の参謀と、気弱な設計士のふたりが残っていた。


「おっ、元帥。今日は酒臭くないっすね」


 からかうように言われ、


「私に酒を掛けるのももったいないと、言われたよ」

「あちゃあ……やっぱし星6っすか?」


 元帥はうなずいた。

 サルメの情緒不安定に輪を掛けたのが、天賦珠玉【狂乱王剣舞(インセインブレイド)★★★★★★】の紛失(・・)だ。

 元帥が天賦珠玉を受け取ったのは他の軍属たちも見ており、元帥はそれを保管庫に入れた。だがその天賦珠玉は、翌日には消えていたのである。

 当然、誰かが盗んだのだ。

 真っ先にサルメは元帥を疑ったが、元帥にはまったく心当たりがなく徹底的に捜索をしたが見つからなかった。その姿を見たサルメはかすかな疑いを残しつつも元帥は一応無実(シロ)ということになった。

 盗み出したのはここにいる参謀だった。


「まあ、あんだけ強けりゃ残しておきたくなるっすよねえ」


 へらり、と笑ったその顔はいつもの参謀だ。

 彼女はあのときもそんなふうに笑いながら懐からサッと天賦珠玉を出した——あのときのことを思い出すと、元帥はいまだに身体が反応してしまう。身体が震え、膝から崩れ落ちそうになった。


(とんでもないことをしやがった)


 そう思う一方で、


(これを使え、ということか)


 とも思った。

 これほどの力を持つ天賦珠玉だ。元帥が心に描いていたクーデターは、この天賦珠玉があれば成し遂げられる。

 その天賦珠玉は、元帥が隠している。


「……サルメはもう限界だ。百人長が戻ったら、計画を実行する」


 今日、元帥は決意した。

 いつもは飄々としている参謀は表情を引き締め、設計士はますます気弱そうに震えた。

 百人長は部隊を率いてダークエルフの縄張りに踏み込んでいた。サルメからの注文で、もっと天賦珠玉を集めてこいというのだ。竜人が攻めてきたらどうするのか、と——。


「設計士。百人長の帰りは……」

「いつもどおりなら、明後日じゃないでしょうか」


 答えを聞いて元帥はうなずいた。


「信頼できる人間にあたりをつけておけ。百人長が仮に、帰らなかったとしても……作戦は決行する」

「百人長は、自分が【狂乱王剣舞(インセインブレイド)】を使うって言ってたっすよ」

「そのときは俺が使う」


 参謀も設計士もハッと息を呑んだ。

 彼らもまたこの天賦珠玉のデメリットは理解している。


 ——その【狂乱王剣舞(インセインブレイド)】を使うことは絶対に勧めません。というのも、天賦の使用により記憶の欠落が起きるからです。これが進むとやがて日常生活に支障を来し、死にいたる……と僕は考えます。


 スーメリアという実例が、彼の言葉を裏付けていた。


「で、でも元帥、あなたがいなくなったら、誰がサルメ亡き後の地底都市を……」

「後継者を選ぶところまではやるさ」


 設計士に微笑みかけると、元帥は彼の肩を強めに叩いた。


「さあ、計画を詰めるぞ。サルメを追い詰め、絶対に逃がさないルートを考えなければな」


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― 新着の感想 ―
[一言] きっと盗んだのはあの外人だな
[一言] 面白いです更新ありがとうございます!!!
2020/09/07 18:53 退会済み
管理
[一言] ゆで卵かどうかしかわからないんだから、対して役に立たないよね?
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