ここは闇の中、希望はあるのか プロローグ
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。このまま消えるのは嫌だ。いやだぁあああああああああああ」
わたし、リスティア・ヴァズ・クラウンは声の限り叫んだ。誰も返事はしない。
闇組織の地下神殿のゴミ捨て場。わたしと同じように捨てられた人形たちの墓場だ。
何のなぐさめも無い。希望も無い。親に売られ、人体実験の果てに失敗作として捨てられた。
何だコレは。こんな人生ってあるのか。
って、ありふれているな。わたし以外にも数えきれない人形の死体の山。
ただ消えていった人形たちと違い、わたしだけ知っている事がある。
たしかに失敗作だった。しかしながら、わたしは完成品の人形を見てしまった。
必要なのは悪魔との契約。それも下級悪魔じゃ意識が消えて死ぬ。
上位魔将以上の悪魔。
それを実行に移すには、下級悪魔の魂を喰らい、かつ、悪魔の王をって。
くふ。くふふふふ。
ダメだ。どうやって喰らうかも分からない。
優等生は拒絶の魔神、魔力の根源を宿して帰って行った。わたしは下級悪魔との契約しかできなかった。
そうだよ。わたしは名も無き下級悪魔と契約しただけ。
このゴミ捨て場で消えて行く脇役。いやだ
いやだ
いやだ
いやだぁあああああああああああ。あれ?でも待てよ。
「おい、下級悪魔。わたしと契約した下級悪魔!聞こえているなら返事ぐらいしろ!」
肩まである黒髪と赤い目、わたしそっくりの姿で下級悪魔はやってきた。
「何でわたしの姿?」
「・・・嫌なのか」
「ああ、まあ、そうだな。名前をつけるから力を貸せ。」
「私を食べるのか?」
「いや、たしかにそう考えたけど・・・というか、このままだとお前もわたしも消えてしまうんだろ?」
「ああ、そうなるな。何もしなければ・・・数日後には消える。ここに捨てられた人形たちと同じように」
「どうすればわたしは生き延びられる?」
「まず私に名前をつけてくれるんじゃないのか?」
「ええい、じゃあそうだな。ニュクス。それでいいか?わたしの好きな女神の名前だけどな」
「くふふ。いいな、ニュクスか。もらい受けよう」と、下級悪魔ニュクスは自分の衣服を黒に染めた。
青いワンピースは黒いワンピースに染まった。
それと気のせいかもしれないが、下級悪魔の魔力が底上げされたような。
まあ、些細なことかもしれない。
「それで教えてくれ、どうすればわたしは生き延びられる?」
「そうだなぁ・・・地面に転がっている他の人形たちを食べろ」
「え?食べれるのか?」
「リスティア・ヴァズ・クラウン・・・もう人間では無い事を忘れてしまったのか?」
「リズでいい。そうだな。食べてみる」と、わたしは人形たちを食べれるサイズに破壊して、口に入れた。それはちょっと硬い肉を食べているみたいで、ただ石と同じで味はとくに無く、おいしいわけでも無かったけど、わたしの中のエネルギーが増大したのは理解できた。
「どうだ?食べれるだろう?そして理解できたか?」
「ああ、魔力が増大した感じがする」
「じゃあ、どんどん食べろ。それが最初の仕事だ、リズ」
「ああ、わかった。どんどん食べる」
わたしは夢中になって、どんどん食べ始めた。