第35話:あの約束をもう一度
青葉に「とりあえずお風呂に入るから下で待ってて」と言われたので、リオンは大人しく階段を降りた。良く考えれば当然の結論だが、青葉はここ三日間風呂に入っていなかったらしい。いくら男じみた振る舞いをする彼女でも、そんな状態で他人と顔を合わせるのは確かに嫌だろう。
リオンは階段を降りると食卓で待機していた青葉の両親に声をかけ、彼女が部屋から出てきたことを告げた。その報告に母親の方は安堵した顔を浮かべ、父親の方は心なしかリオンに悔しそうな視線を向けてくる。大事な一人娘が父親の説得ではなく、見目良い若い男の説得に応じたのだから口惜しい気分になるのも無理はないだろう。そこはリオンも大人の対応として、軽い微笑を返しておいた。
青葉の母親に促され、リオンはこの間来た時と同じように食卓の椅子に腰をかける。彼女がお茶を出してくれたが、リオンはそれよりそこらへんに転がっている調味料やら食器やらが気になってしまった。数日前の小奇麗な部屋の中はどこへやら、万国旗のように干された台ふきんと、水きり棚いっぱいに伏せられた茶碗が目にしみる。
思えばリオンの母親は、台所に生活観を漂わせたことがなかった。台所、と言うよりもキッチンと言った方がふさわしいそこはいつもピカピカで、シンクには曇り一つついていなかった気がする。それはリビングも同じで、あるのは必要最低限のものと飾り付けようの英字新聞だけ。モデルルームもかくやというハイセンスぶりだった。
百人に聞けば、百人がリオンの自宅の方が良いと答えるだろう。なのに青葉の家の方が落ち着きを感じるのが不思議でしょうがない。
その理由を探すため、失礼にならないようさりげなく部屋中に視線を放っていると、リオンは壁に写真が貼ってあることに気付いた。メモに埋もれかけたソレに写っているのは、どうやら幼い頃の青葉らしい。
「あの写真、青葉さんのですか?」
リオンが聞くと、彼女の母親はわざわざ席を立ってソレを持ってきてくれた。
「これ、あの子が小学校二年生の時のものなんですよ」
嫌そうにする父親を尻目に、母親の方が嬉しそうに写真を見せてくる。その写真の中で、幼い青葉は父と母の真ん中に挟まれなんの屈託もなく笑っていた。
「かわいいですね」
リオンはお世辞でも社交辞令でもなく、心からそう言った。と同時に、青葉に対して羨ましさがこみ上げる。リオンはあんな風に笑って両親と過ごしたことなど今まで一度もなかったし、これから先もあるとは思えなかった。
得体の知らない力を持ち、自分の思いどうりに動かないリオンを虐げた母親。リオンが母親にどんな目に遭わされているか知りつつも、見て見ぬふりを決め込んだ父親。結局リオンの境遇に憤った星見院家と藤之崎家、そして金治の尽力により二人は離婚したが、父は今でもリオンと向き合わない。逃げるように単身赴任を繰り返し、先日爆発で殺されかけたときも、入院先に見舞いにすら来なかった。
この写真の青葉のように、両親に愛されて暮らせたらどんなに幸せだっただろう。それと引き換えにこの容姿を失ったって、二人に認められて大切にされるならそれでいい。
リオンは青葉の写真を眺めながら、当たり前のように両親に愛される自分を思い描いた。まるで平凡な高校生でも、家に帰れば母親が「おかえりなさい」と言ってくれる生活。
リオンが空しい空想に身をゆだねながらぼんやりとしていると、後ろからペタペタと足音が聞こえてきた。
「リオン、お待たせ」
振り返ると、青葉がキャミソールにホットパンツという姿で立っていた。水が滴る髪を肩にかけたタオルで無造作に拭いている。少しやつれたようにも見えるが、湯上りの肌はまるで剥きたての桃のようで、リオンは思わず良からぬことを考えそうになった。
「コラっ青葉、またリオン君にそんな口きいて!」
「べっ別にいいですよ」
「そーだよお母さん。同い年だもん」
「同い年でも住んでる世界が違うのよ!」
出てくるなり母親に怒られて、青葉はしょげた様子で椅子に座る。彼女が座った場所は座席の都合上リオンの真横だったが、そのおかげで短いパンツから伸びた太ももが嫌でも目に付いた。しっとりとした石鹸の匂いも上気した白い肌も、リオンの男心を容赦なくくすぐってくる。風呂上りの女なんて何人も見てきたのに、これほど動揺しそうになるのは相手が青葉だからだろうか。
太ももの誘惑を振り切るようにしてリオンがどうでもいい方向に視線を向けていると、機嫌を損ねたと思ったのだろう、青葉の母親がわざわざカステラを差し出してくれた。ここで断るわけにも行かないので、リオンはお礼を言うとそれをいただく。ところが一口ほど食べた所で、リオンは青葉がカステラを物欲しげに眺めていることに気付いた。
「あ、ゴメン。おなか空いてるよね」
「ううん。平気」
そうは言いつつも、青葉の目はリオンが口に運ぼうとしているソレから微動だにしない。三日も物を食べずにいる人間に黙って見ていろと言うのはそれこそ酷な話だろう。リオンはまだ口をつけていない方のカステラに爪楊枝を刺すと、青葉の前に出した。
「いいよ食べても。これならおなかにも悪くないでしょ」
「いいの?」
リオンがうなずくと、青葉は目を輝かせて受け取ろうとする。だが次の瞬間、青葉の母親が法螺貝を吹いたような声で叫んだ。
「ああおばあぁ!!だめえええぇぇ!!」
「うひゃあああ!」
彼女の大声に驚いた青葉は、当然のことながら手にしようとしていたカステラを取り落とした。リオンは床に落ちる寸でのところでその哀れなカステラを拾い上げる。
「お母さんヒドイ!何すんのさ!」
「ヒドイのはアンタの方でしょー!リオン君の使いかけの爪楊枝で食事するなんて、羨ま――何だと思ってるのよ!」
「いいじゃん!くれたんだからさ」
「くれたからってもらうんじゃないわよ。だいたいリオン君がアンタのために家に来てくれるってどういうことなの!リオン君は皆のものなのにいぃ!!」
いくら自分の熱烈なファンとはいえ、三日ぶりに会った娘に喚き散らす彼女に、リオンはうんざりしてきた。きっと普段はいい母親なのだろうが、「リオン君」のことになると周りが見えなくなってしまうらしい。リオンは「嗚呼、美しさって罪」と悦に入りながらも、せっかくのカステラを食べ損なって涙目になっている青葉が気の毒になる。
「青葉、口開けて」
「ん?なんで」
「いいから」
青葉が戸惑いつつも口を開けると、リオンは手に持っていたカステラをその口に押し込んだ。最初目を白黒させていた青葉だったが、文句も言わずにしっかりと咀嚼している。
「おいひい」
「そ、良かった」
「ああああ、あおばあぁ!!今リオン君から!!」
青葉の母親は言葉も出ないようで体中をわなわなと震わせていたが、リオンは彼女が大人しいうちにさっさと帰る支度をすることにした。呆然とする青葉の母親と、申し訳なさそうに頭を下げる父親に挨拶をする。リオンが玄関を出ようとすると、青葉が外まで見送りに来てくれた。
「ごめんね、ウチのお母さんあんなで」
珍しく青葉がリオンに向かって頭を下げる。
「別にいいよ。あんな感じのファンはいっぱいいるし」
本当は余りいい気分ではなかったが、何ともないかのようにリオンは笑ってみせた。
「今日はありがとね……」
青葉は先ほどまで「死にたい」と言っていたとは思えないくらい朗らかな笑顔を浮かべていた。この笑い顔だけでも彼女がまっすぐな志しの人間なのだと、たくさんの人間の笑顔を見てきたリオンには分かる。
巷で絶大な人気を誇るリオンにも媚びへつらわず、あくまでも一人の人間として接してくれた青葉。彼女のそういう性格が好きなのだとリオンは今始めてはっきりと自覚する。
金色の夕日に照らされながら微笑む青葉の顔がやけに眩しい。いつの間にか空は赤く色づき、秋を予感させる涼やかな風が二人の頬をなでる。夕焼けを横目で見ながら、リオンは「いいムードじゃん」と感傷的な光景に似合わない思いを抱いた。
「ね、ねえ、青葉」
「ん、どうかした」
「今度、どっか遊びに行かない?」
このムードを利用しない手はないとリオンは思った。いくら彼女に友達としてしか見られていなかったとしても、ロマンチックな雰囲気の中でデートに誘えば嫌でも異性として意識するはずだ。
青葉の習性を考慮して、リオンは余り色っぽくなり過ぎない程度の、それでいて意味深な笑顔を浮かべてみた。不審がられないよう堂々とした態度を取ってみたものの、内心は始めてテレビカメラの前に経った時と同じぐらい緊張している。あまりの自分の動揺ぶりに、リオンは思わず苦笑を漏らしそうになった。
「んー、別にいいけど?」
リオンは彼女の返事に心の中でガッツポーズをする。嬉しいが、まるで少女マンガのヒロインになったような気がして少々恥ずかしい。
「怪我は平気なの?」
「平気平気。で、どこに行く?」
「うーん。そーだなー」
このままめぼしい場所が思い浮かばなければ「遊ぶのはまた今度」という事態にもなりかねない。リオンは普段は嫌味と悪口ばかりに使っている脳みそをフル回転させる。しばらく考え込んでいると、素晴らしい名案がリオンの中で閃いた。
「そうだ!夏休みの終わりにこの辺でお祭りあるでしょ?それはどう?」
「あ、そうだね」
「前は八月半ば位にやってたやつ。花火大会もあるじゃん。ちょうどいいでしょ」
「うん……」
青葉は笑っていたが、その顔にはどこか翳りがあるような気がした。リオンは不安になって彼女の顔を覗きこんでみる。
「どうかしたの?具合悪くなったとか」
「あはは、何でもないから」
「ならいいけど。無理しないでよね」
「分かってるって」
青葉はリオンを安心させるかのように、顔を上げてにっと笑った。
「リオン!」
「何?」
「一緒にお祭り行こうね!!」
青葉はなぜか右手で拳を作ってブンブンと素振りしていた。その間の抜けた光景に、リオンは思わず噴出しそうになる。
「絶対、絶対だから!!約束破ったらただじゃおかない!」
「分かってるよ。僕から誘ったんだし」
青葉はリオンが歩き出しても「絶対だからね〜!」と大きな声で手を振っていた。少し歩いてリオンが振り返った時、彼女の顔は西日でできた影のせいか、ひどく悲しそうに見えた気がした。
―――――――――
オカルト局の会議室に入るのは本当に久しぶりだった。もう二度とここに来ることはないと思っていたが、巡りあわせとは不思議なものである。
青葉は部屋のを囲むように備え付けられたソファーの一つに腰を下ろし、腕を組んで唸っていた。リオン、月音、誠治、そして金治も青葉と大して変わらない渋面でオーク製のテーブルを睨み付けている。
「はふぅ。どうしてこう次から次へと事件が起こるでありますか!」
潰れた肉まんのような顔をしながら、誠治がぶつける先のない不満を漏らした。
「確かにこの一ヶ月ちょっとで色々ありすぎですよね。発明兵器が関係している事件なんて、今まで滅多になかったのに」
月音は何か考え込んでいるのか、ある一点を見つめたまま誠治の言葉に同調する。
「リオン君のコンサート会場爆破事件までは全て大賢者関係でしょうけどね。先日の青葉さんの学校の事件は――」
「二年前の事件と間違いなく関係しているでありまする」
「つまり、大賢者関係の事件と二件の穴だらけ事件――この二種類の事件が同時進行で起こっているワケですか」
月音の出した結論に誰も異論は出さなかったが、その代わりにそれぞれため息を漏らした。大賢者についてもまだほとんど進展がないのに、さらに別の調査対象が出現するとは厄介なことこの上ない。青葉にとって千代子と藤野を殺した犯人と対決できるのは、望んでもないことなのだが。
「でも何でわざわざ同じ時期に事件を起こすかなぁ。面倒くさいったらしょうがないよ」
「こらこらリオン三等兵!なんてこと言うでありますか。被害者に謝るであります」
「だってさ、一体アイツら何が目的なの?大賢者は単なる妬み僻みみたいだけどさ、穴だらけ事件の犯人はさっぱりだよ」
「うーんソレは拙者も――」
会議室内に再び沈黙が降りる。その中で青葉は恐る恐る手を上げた。
「ハイッ、青葉猫耳軍曹!発言どうぞ〜」
「コレはあたしの推測なんだけど……」
青葉は誠治の口から変な単語が聞こえた気がしたが、構わないことにした。
「穴だらけ事件の犯人は、やっぱりあたしを狙ってるんだと思う」
「アオバカ、またそんなコト言って――!」
「リオン違うから。あたしの被害妄想じゃないって」
「じゃあなんで?」
「あたしと藤野が同じ髪型だったから、犯人はあたしと間違えて藤野を殺したんだと思う」
青葉の答えにすかさず金治が「それだけじゃ分からんだろう」と突っ込みを入れる。しかし青葉は首を横に振って話を続けた。
「皆も知ってると思うけど、藤野が殺された場所は昇降口だったんだ。その昇降口、日が当たらなくて昼間でも暗いの。ニュースで藤野は背後から殺されたって言ってたけど、同じ髪型でその明るさ、しかも後姿だったら、あたしと藤野の区別はつかないと思う」
「君と被害者が良く似てるのは分かったけど、何で青葉が狙われるワケ?」
「ソレは分からない」
きっぱりと断言する青葉に、誠治が椅子からずり落ちるオーバーリアクションを見せた。
「青葉猫耳軍曹〜。ソレじゃ何の解決にもならないでござるよ〜。だいたい犯人が青葉猫耳軍曹と藤野氏を間違えたのも根拠が弱いでありますし」
「根拠ならもう一つある!」
「オウフッ、なんでありますか」
「ケーサツから聞いたんだけど、藤野はあたしの下駄箱の真ん前で、しかも左手にあたしのローファーを持って死んでたんだって。――藤野はきっと殺される直前にあたしの下駄箱の前にいたんだよ。だから犯人はなおさら勘違いしたんだと思う」
「おっそれは新事実でありますよ。ケーサツからの情報には入ってなかったであります」
「おそらく事件に関係ないと思ったんでしょう。まぁ普通そう考えますが」
月音が先ほどとは打って変わった、微笑みすら浮かべそうなほど穏やかな顔で話に入ってきた。何か思いついたのだろう、両手を上品に顔の前で合わせながら青葉に向かって尋ねてくる。
「藤野さんは青葉さんと喧嘩して教室を飛び出したんですよね」
「あ、うん」
「それから青葉さんと藤野さんは入学当初から仲が悪かったんですよね。しかも藤野さんから一方的に」
「うん」
「あ、あと一つ。もしかして青葉さん、高校に入ってから細々したものなくしてませんか?」
「え?何で分かんの」
月音の言うとおり、青葉は一学期が終わるまでにペンケース、キーホルダーなど些細なものをいくつかなくしていた。自分の大雑把な性格は自覚しているから、どこかに忘れたり落としたりしたものだと思っていたが、彼女になぜ分かったのだろうか。
「なんでつくねさんソレが分かったの?」
「私も何度か経験あるんですよ。同性に一方的に嫌われたこと。」
「え?どーゆーこと?」
青葉は月音が何を言いたいのか分からず首をかしげる。いっこうに話が飲み込めないのは金治も誠治も同じようだったが、リオンだけは訳知り顔でにやりと笑っていた。
「ふぅん。なるほど、そーゆーことね」
「え?は?リオン何か分かったの?」
「つまりつくねは藤野が殺される直前、青葉のローファーをを隠そうとしてたって言いたいんでしょ?」
「えぇ!?どうしてそうなるの?」
「ホント鈍いね。君は藤野って奴に前から色々物を隠されてたんだよ」
リオンの言葉を青葉はなかなか信じられなかった。てっきり自分でなくしたのだと思っていたし、いくら藤野に嫌われていたとはいえ、彼女がそんなイジメまがいのことをするとは考えたくなかったのである。
「ウソだぁ。いくらなんでもそれはないって。つくねさんもそう思うよね?」
「残念ですが、リオン君の言ってることは当たっていると思います」
「だ、だけど」
「大体おかしいじゃないですか。何で鞄も何も持っていないのに彼女はわざわざ下駄箱の前にいたんですか?しかも自分とは全く関係ない位置に」
「それは……」
「それから犯行現場の写真、私見たんですけど、筆箱の上の方に全く血痕がありませんでした。立ったまま穴だらけにされたというなら、そんな風にはなりません」
「座ってたってコト?」
「そうです。彼女は殺される前、なぜか青葉さんの下駄箱の前に座っていたんですよ。なんのためにそんなことする必要があったのでしょうか」
適当な反論を思いつかず、青葉は押し黙った。彼女の言うとおりだとすると、藤野は青葉のローファーを隠そうとしたところを勘違いした犯人に殺されたことになる。青葉も彼女が自分の下駄箱の前で死んでいたことを不審に思っていたが、コレが真実だとはあまり思いたくなかった。
「しかしつくね姫、青葉猫耳軍曹――」
思う所があったのだろう、誠治が二人に待ったをかける。
「昇降口は暗かったんでござろう?そうしたらそこが誰の下駄箱かなんて分からないはずじゃあーりませんか」
「思うに、待ち伏せしてたんじゃないですかね。暗くても確実に青葉さんを狙えるよう、始めに青葉さんの下駄箱の位置を確認しておいたんですよ。普通下駄箱は本人しか使いませんから」
誠治が黙ると、今度は金治が口を挟んできた。
「だがな月音、お前は青葉が狙われている前提で話しているが、その根拠はないんだろう?犯人は始めから藤野さんを狙っていたと考えるのが自然ではないか?」
「そうかもしれませんが、彼女が狙われる理由がないんです」
「それは青葉も同じだろう」
「しかし藤野さんよりはあります。青葉さんは二年前の被害者少女と面識があり、殺される直前まで一緒にいました」
「だが二年も経って今更口封じか?」
「それに青葉さんはオカルト局員です。発明兵器を使いこなせる犯人なら、オカルト局の存在を知っている可能性は高い――こちらのセンもあるんじゃないでしょうか」
月音にまくし立てられ、金治は冷や汗を流しながら口髭をなでていた。
青葉が自分が狙われていると思った理由は単なる「カン」だったが、月音の話でより強くそれを確信する。
「だけどつくねの話はいまいち決め手がないんだよね。なんかこう、しっくりこないっていうか。あいまいというか」
「まぁ、私も可能性の一つとして考えてるんですけどね。しかし可能性がゼロでない限り、警戒するに越したことはありません」
「確かに月音の言うとおりだな。穴だらけ事件の犯人がどんな発明兵器を使っているかは分からないが、かなり攻撃力の高い物だというのは確かだろう。可能性がゼロでない限り、油断してはならん」
金治は厳しい顔をして青葉の方に向き直った。
「私はお前が狙われていると考えたくはないが、念のため対策をとっておく必要がある。あとで発明兵器保管室に来なさい」
青葉はあの陰気臭い部屋に行くのは遠慮願いたかったが、今は文句を言っていられる状況ではなかった。