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ソティラス (前編)  作者: 明智 倫礼
4/19

迷い悩む

 どんよりとした空の下、草原は波打つように風になびいていた。太陽のないこの世界は年中暗い。だが、闇夜を照らす者はふたつあった。ひとつは、今にも燃え上がりそうな赤オレンジ色の川。もうひとつは、空をふんわりと飛ぶ蛍の光。それらに照らし出されたピラミッド状の遺跡は、誰も寄り付かない古びたものに成り果てていた。


 そこから、視線を右へやると、丸く切り取られた窓から、暖かな光が漏れていた。その中は、コンクリートむき出しの壁に囲まれた、モダンなリビングルールが。


 天井からはシーリングライトがいくつか釣り下がり、黄緑色の絨毯に、クリーム色の円を描いていた。窓のそばには、アクセントカラーの赤いテェストが。


 強化ガラスでこしらえた、大きなダイニングテーブルには、トゲトゲ頭の少年が肩肘で頬杖をついていた。グレーのパーカーに、だぶついているズボンという出で立ちで、トーストをかじっては、あくびをするをリピート。彼の名は、アルフ ダン、十八歳、大学生。小さい頃から遺跡に興味があるが、この世界では少し問題。なぜなら、科学の発達した世界だからだ。


 いつもなら、くっきり二重の彼の目だが、今にも閉じそうな勢いで、宙に浮かぶものを見つめていた。彼の視線の先には、透き通った大画面が浮かんでいた。それは、この世界のテレビ。そこからは、今日も闇目病やみめびょうについてのニュースが流れている。


 闇目病とは、六年前ごろから、このカイヤシティーに蔓延し始めた流行病のこと。未だ治療法は見つからず、わかっているのは人工の光を浴びると、全身が燃えるように痛むことだけだ。


 キッチンカウンターの向こうで、洗い物をしているアルフの母と、前の席でコーヒーを飲んでいる父は、息子を心配そうに伺っていた。ここ、カイヤシティーでは、科学者が最高の職で、遺跡や神など、非科学的なものは誰も見向きもしなかった。


 アルフのあくびの原因。それは、夜遅くまで、祖父ギギガの部屋で、遺跡について色々話しているからだ。ギギガは変わり者じいさんと近所では有名で、息子までそうなってしまっては大変だと、両親は胸を痛めていた。


 母親はついに耐えられなくなって、洗い物をしている手を止めた。


「アルフ?」

「あぁ?」


 彼は皿から、母親に視線を上げた。


「遺跡より、大学を優先させなさい」


 コーヒーを飲んでいた父親は、カップをソーサーに置き、


「遺跡へ行くのはもうやめなさい」

「…………」


 アルフは返事をせず思案し始めた。テレビから流れてくるニュースに耳を傾ける。たくさんの人が闇目病で苦しんでいる。赤いチェストへ視線を落として、次いで、その上に整列している観葉植物を見やった。苦しんでいる人を助けた。その気持ちは大きい。ソファーにおいてある、マゼンダ色のクッションをぼうっと見つめる。闇目病を治せるとしたら、研究職に就くのが一番だ。それはわかっている。だが、遺跡のことが頭から離れない。というか、気になって仕方がないのだ。まるで、何か大きな力に支配されているかのように。


 それでも、カイヤシティーで教育を受けてきたアルフは、洗脳されていた。大学を優先させるのが、普通だと。


「……わかったって」


 アルフは両親に目もくれず、少し投げやりに言った。隣の椅子に置いてあった黒いリュックサックを肩に気だるくかけ、

「行ってくる」


 大学へ向かうため、そそくさと、ダイニングをあとにした。息子がいなくなったあと、闇目病のニュースをBGMにしながら、両親は困った顔を見合わせた。


  ★ ★ ★


 それからというもの、両親の言いつけを守って、アルフはギギガの部屋へ行くことをやめ、遺跡にも寄り付かなかった。だが、元気がどんどんなくなっていった。


 大学でも講義に身が入らず、夜はよく眠れずにいた。遺跡は家のすぐそばにあり、目に入らないようにしても、嫌でも目にしなくてはならず、手足がもそもそするような、悶々とした日々を過ごしていた。


 そんなある日、玄関から遺跡を眺めつつ、大通りへ出ようとしたところで、ふわふわウェーブ髪のマジョルカ ウェストがマゼンダ色の瞳に笑みをいっぱい浮かべていた。


「おはよう!」


 いつもなら、威勢よく返事をするアルフだが、


「おう、はよ……」


 言葉が地面へ真っ逆さま。ふたりは肩を並べ歩き出した。マジョルカはアルフのしょぼくれた顔を覗き込んだ。


「どうしたの? 元気ないわよ」

「おう……」


 アルフの視線はアスファルトを追っていた。彼の横を、いくつもの街灯と街路樹が通り過ぎてゆく。行き交う人の靴音や、車のクラクションなどが騒がしかった。だが、彼の耳には全く入ってこなかった。


 しばらく、黙って歩いていたが、何かを決心して、アルフはさっと顔を上げた。


「マジョルカは将来どうすんだ?」

「国立研究所の研究員になって、闇目病の治療法を研究するわよ」


 マゼンダ色の瞳は自信に満ち溢れていた。アルフは再び地面へ視線を落とした。


「……おう……そうか……」


 アルフは思った。自分は科学者になることに疑問を抱いている。だが、この世界では、そういう考えの人間は落ちこぼれなのだ。それに比べ、マジョルカははっきりと自分のやりたいことを、しかも科学者になると答えたのだ。アルフは劣等感に押しつぶされそうになった。


 その時、彼らのすぐそばに、立派な閘門が現れた。この世界で一番成績のいい大学。天気のないアルフを気にかけつつ、マジョルカは明るい笑顔で、


「それじゃあ」


 軽く手を振り、校門へ入っていった。


 彼女は小さい頃から成績優秀。二十歳にして、大学院へ飛び級している。将来期待の星だ。それに比べ、アルフは科学よりも遺跡を優先してきたため、彼女の大学よりも何ランクも下の学生だった。天と地ほどの差があると、彼は改めて思い知らされた。


 アルフはとぼとぼと歩き出した。流れてゆくアスファルトを、再び目で追いながら、今までのことを思い返す。隣に住むマジョルカとは、家のすぐ近くにある、遺跡前の原っぱでよく遊んだ。遺跡の中にもよく行った。蛍火を入れたランタンを持ち、暗い中を探検隊さながらで進んだものだ。


 だが、ある時、道に迷い、帰れなくなった。ふたりでワーワー泣いていたところを、ギギガに助けてもらったこともあった。だが、成長し、世界の仕組みを知るに連れて、マジョルカは遺跡へは近づかなくなっていった。勉強、勉強の日々の彼女と遊ぶことも減っていき、アルフは寂しい想いをしていた。そして、今日、決定的な心の距離を感じた。


  ★ ★ ★


 アルフは劣等感を抱き続け、冴えない日々を送っていた。


 暗いのが当たり前のこの世界。だが、闇目病が流行り出して、人口灯を減らす政策が政府から出され、今では歩くものやっとなぐらい。


 彼は自分の部屋で、黑革のおしゃれな椅子の背もたれに、力なく寄りかかっていた。視界の端には遺跡を残したまま、家と街の間を流れる、赤オレンジ色の川を眺めていた。小さい頃からの見慣れた風景。少しは気晴らしになるかと思い、見ていたが、どうやら違った。思考はぐるぐると空回りするだけで、何も前に進まなかった。


 疲れ切った彼は、ベッドにどさっと身を投げた。白い天井が目の前に広がった。ついこの間までは、大好きな遺跡の写真がピンで留めてあったが、勉強に専念しようと、全て引っ張り外した。殺風景な天井が、彼の心をつついた。


 傍に置いてあった、宝物の弓を手に、弦を弾いては離しを繰り返し始めた。この弓は、ギギガが遺跡の壁画にあった絵を見て、アルフに作ってくれたものだ。戦争というものがないこの世界では、ただの飾りにすぎなかったが、アルフにとっては解決策を見るける、ラッキーアイテム。


 彼は弓を引いては離してを、しばらく続けていたが、今回は何も浮かんでこなかった。


「はぁー」


 ひとつため息をついて、ランタンに入っていた蛍を逃した。暗くなった部屋をしばらく眺めるかと思いきや、考えすぎた脳は疲れており、アルフはすぐに眠りについた。そして、彼は不思議な夢を見た。


 アルフは夜の草原に一人立っていた。柔らかな風が心地よく頬をなでてく。すぐそばには三角の巨大な風がそびえていた。彼は遺跡だとすぐわかった。よく見慣れている風景だったが、何かが違った。それは、いつもより視界が明るいこと。アルフは光の出所を確かめようと、顔を上げた。するとそこには、紫と赤い丸いものが浮かんでいた。そのまわりには、小さな電球が散りばめられていた。


「何だ……?」


 アルフは首をひねった。常に、どんよりとした雲の下で暮らして消えた彼にとって、全く見たことのないものだった。不思議がっていると、視界の下の方に別の光が飛び込んできた。


「おう?」


 光の道が風に揺れていた。何かと思い、近寄ってみると、それは自ら光を発している、ポピーのような花だった。道を目で辿ると、遺跡の入口へと続いていた。何かに呼ばれたような気がして、アルフは歩き出そうと、


『己の心に正直になれ』


 男の声が聞こえた。それは耳から聞こえるのではなく、体の内側に響くものだった。


「っ!」


 アルフははっとして、正面を見た。そこには、真っ白なフード付きローブを着た人物が立っていた。遺跡の入り口に、風に服をなびかせ佇んでいる。そして、また聞こえてくる。


『己の心に正直になれ』


 理由はよくわからないが、アルフの心に深く染み込む言葉だった。


  ★ ★ ★


 それから一週間。アルフはどんな時も上の空だった。朝のテレビニュースはそっちのけ。両親の勉学に励めの言葉にも生返事。大学の講義も右から左にへ抜けてゆく。


 そして、夜は決まって、


『己の心の正直になれ』


 の夢を決まって見ていた。


 そんな日々を送ったアルフ。ある日、講義を終えて、校門を出てきた彼を、笑顔のマジョルカが出迎えた。


「アルフ!」

「…………」


 彼は気づかずに、マジョルカの前を通り過ぎようとした。彼女は彼の腕をつかみ、


「アルフ!」


 行き先を阻まれ、アルフは初めてマジョルカに気づいた。


「おう?」


 ぼんやりしていた彼の目に、マジョルカの微笑みが映った。彼女は彼の耳に近づいて、囁いた。


「あそこへ行きましょう」

「……おう」


 これだけでどこなのか、通じる仲だった。


 太陽の光の代わりに、蛍が飛び回り、緑の線を幾重にも作っていた。少し離れたところでは、赤オレンジ色の川が光っている。その風が頬をくすぐり、草原がさらさらと音を奏でる。ピラミッド型の遺跡ーーオクト遺跡がふたりを優しく見下ろしていた。


 アルフとマジョルカは、遺跡の前に広がる原っぱに、肩を並べて座っていた。草原が絨毯のように柔らかく心地よい。遠くに広がる、明かりの少なくなった街を眺めながら、マジョルカが口火を切った。


「何かあった?」

「…………」


 バレていることは知っていた。小さい頃からの付き合いだ。相手のほんの少しの変化でも気づいてしまう。だが、研究員になると決めているマジョルカ。一方、迷っているアルフ。草を握りしめることはできても、何も答えられなかった。マジョルカは砂色の髪を耳にかけ、


「おじさんとおばさんが心配してるわよ」


 アルフの両親は、マジョルカに息子の救援を頼んでいた。


「……お……おう」


 アルフはやっと言葉を発した。


「どうしたの?」


 顔を覗き込まれ、アルフは困って、視線を明後日の方へ向けた。話すべきか、話さないべきか。隠しごとなんてしてこなかった。……だから、今回もしない。数秒遅れて、


「夢……見んだよ」

「どんな?」

「あーっと、こことは違うとこにいんだけどよ、遺跡があんだ」

「うん」


 マジョルカは先を促した。


「その前に……」


 アルフは一瞬目を伏せた。非科学的なことだ。マジョルカはどんな反応するかと悩んだが、言葉を続けた。


「誰だか知んねえけど、人が立ってんだよ。それで、『己の心に正直になれ』」っつんだ」


 マジョルカは別に驚くわけでもなく、


「それって、一回きり?」


 一度きりで、アルフがここまで凹むわけがないと、マジョルカはわかっていた。アルフは軽く首を横に振って、


「いや、毎晩見る」

「ふーん」


 マジョルカはアルフから街へ視線を移し、深呼吸して、


「その通りにすればいいんじゃないかしら?」

「…………」


 思っても見なかったことを言われ、アルフは言葉がすぐ出てこなかった。


「気になるから、何度も見るんじゃないかしら? それなら、自分の心に正直になった方がいいんじゃなーい?」


 自分にまとわりついていたモヤモヤが晴れ、アルフは心に羽が生えたように軽くなった。一週間ぶりの笑顔で、


「おう! そうだな」


 元気一杯返事をした。


 翌日。アルフは両親に、大学を休学することを早速話した。簡単に了承を得られ、大学へ休学届けを出した午後。遺跡の研究に取り掛かるべく、アルフはギギガと共に、家のすぐ近くにある、奥と遺跡の最奥部へやって来ていた。


 ドーム状の茶色い壁をいくつもの松明が優しく染めている。何やら読むことのできない古代文字が並んでいた。中央には、赤と青に点滅を繰り返している泉が。その縁に手をかけて、アルフは中を覗き込んでいた。


「六年前は違ってたのか?」


 孫の背後に立っていたギギガは、真っ白なあごひげを触りつつ、


「そうじゃ、以前は澄んだ水色じゃった」

「んー?」


 アルフは縁から手を離し、腕組みをした。天井で踊っている古代文字を眺めながら、


「じいちゃん、六年前っていったら、ちょうど、闇目病が流行り出した頃だよな?」


 ギギガの方へ振り返って、


「闇目病と遺跡が関係してるってことか?」

「わしもそう思っておったんじゃが……」


 ギギガはそこまで言って、壁を見渡した。


「これを解読してみんことにはなー」


 壁一面にぎっしりと並んだ古代文字を見て、じいさんは途方にくれた。アルフはぐるーり三百六十度回って、


「手伝えって、これのことか? じいちゃん」

「そうじゃ」

「じゃあ……」


 アルフは腕時計を壁に向かって構えた。


「まずは携帯にとって、解読だな」


 この世界での携帯電話は腕時計式。焦点が合うたび、ピピッと電子音が響く。アルフは撮り漏らすことなく、次から次へとシャッターを切り、壁全体の撮影を終えた。


「じいちゃん、終わったぞ」

「では、戻るかのう」


 解読作業に入るため、彼らは遺跡を出ようと、出口に向かって歩き出した。通路へ差し掛かると、どんな仕組みなのかわからないが、一斉に通路を照らす松明に火が灯った。美しい遠近法を描いている。


 遺跡の外へは、どんなに早く歩いても、小一時間はかかる。アルフは待ちきれずに、さっき撮った写真を見始めた。


 腕時計のボタンをひとつ押すと、透き通った小さな画面が宙に浮かび上がった。そのままでは読みづらいため、アルフは人差し指と親指をくっつけては離すをして、画面を拡大。しばらく眺めていたが、前を歩くギギガの背中に向かって、


「じいちゃん、これ、どうやって読むんだ?」

「それはこれから考えなくてはいかのう」


 ギギガはほーほほほと笑った。のんきなじいさんの答えに、アルフはずっこけそうになった。


 解読作業は困難を極めた。現代人に忘れ去られた文字。見向きもされない文字。学校でも習わないどころか、研究資料が全くなかった。アルフとギギガは同じ形の文字から、読み解き始めた。


 影一面を撮影してきたため、解読文は膨大な量だった。同じ形のものを見つけるだけでも、二週間もかかってしまい、徹夜になることもしばしばで、アルフの朝食は時々遅くなったが、両親は息子を温かく見守っていた。


 リビングルームで、闇目病のニュースを聞きながら、アルフはパンを頬張る。疲れもあったが、今の彼を動かしているのは、闇目病と遺跡が何かでつながっているという事実だった。アルフはさっさと朝食を済ませ、ギギガの部屋へ急いだ。


 そんな毎日を送り、一ヶ月だった、ある晩。とうとう、全文を解読した。ギギガの部屋兼研究室で、蛍火の中、アルフはギギガのベッドにうつ伏せで寝転がっていた。ギギガは窓際で、ロッキングチェアをギシギシいわせていた。アルフは真剣な顔で、解読文を読み上げている。


「…………。

 イリョスはは双子の息子を産んだ。

 兄はアメティス、弟はルヴィニと名付けられた。

 デオスはスコタディとイリョスの行いに怒り、アメティスとルヴィニを天へ昇らせた」


 アルフが全て読み終えると、ロッキングチェアをギシギシいわせていた、ギギガはひげを触りながら、


「うーむ」


 一言唸っただけで、何も言わなかった。ひげを引っ張る仕草をし、考え続けている。アルフは横へスクロールして、すげての写真を見ていたが、ふと口を開いた。


「デオスって、何だ?」

「この世を作った、人よりも偉大な存在……じゃろうな」

「ってことは、ディアスティアは、この世界ってことになるよな?」

「そうじゃな」

「イリョス……照らす……アステリ……」


 アルフはトゲトゲ頭を、ぐしゃぐしゃにかきむしった。


「あぁー、わかんねえなー」


 今度は、髪の毛をツンツンと引っ張った。壁にぶち当たっている孫に、ギギガは、


「新しく言葉を作ったら、どうじゃ? アルフは得意じゃろ?」


 昔から、アルフは言葉に関することは、他の誰よりも長けていた。それをよく知っていたギギガは、壁画の古代文字を解読することをアルフに任せたのだ。


「おう、そうだな」


 本領発揮と言わんばかりに、アルフはぱっと起き上がった。一枚目の写真に戻り、


「デオス……神……? えれえんだから、神様か。イリョスは太陽だな。アステリは、んーー? ……球体か? スコタディは闇……こんなところか」


 アルフはあっという間に、言葉を整理してしまった。ギギガは誇らしげに孫を眺めた。そんなことは気にせず、アルフはさらに読み解く。


「エガフォスとエガタっていう、二つの世界があんだな。エガフォスは太陽に照らされてる……」


 そこまで言って、アルフは窓の外へ目をやった。赤オレンジ色の川を見て取って、


「太陽って、川のことか?」


 この世界で照らすものは人工灯と蛍火だけだ。いつもどんよりしている空を見上げて、アルフは首を傾げた。


ちげえな……っつうことは、ここはエガタってことになんな」

「そうじゃな」


 ギギガは孫の賢さに、自然と笑みがこぼれた。アルフは再び手元を見て、


「エガフォスって、どんなとこなんだろうな?」


 水を得た魚のようにアルフは生き生きとし、彼の夢はどんどん膨らんでいった。

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