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～春の薫りを攫う者～

Ｎo.0 プロローグ

何の変哲もないある日の午後。いつものように掃除を終えて一息つく博麗の巫女。そこへ、当然の様に今日も現れる魔法使い。

「こんにちは、梨亜(りあ)。今日はクッキーを持ってきたの。」

「あら、アリス。いつもありがとう。」

博麗の巫女ー博麗梨亜は馴染みの魔法使いに応える。

「・・・ねぇアリス。私の前の博麗の巫女ってどんな人だったの？」

その言葉に、アリスの顔が凍りつく。

彼女が疑問を抱くのも無理はない。なぜなら彼女は、たった数か月前に紫によって半ば強引に幻想郷へ連れてこられたばかりなのだから。そして彼女が来てから、先代の巫女について語る者はいなかった。

「そうね・・・彼女は今までの博麗の巫女とは違い、妖怪達からもとても信頼されていたわ。そして、桁違いに強かった。でも、彼女が強かったのは・・・絶対に信頼できる最強で最高のパートナーがいたから・・・」

アリスの話を、梨亜は静かに聞いた。

「霊夢・・・魔理沙・・・」

アリスの頬を伝う雫が、太陽に反射して儚く光った。

ーーこれは霊夢と魔理沙が死ぬ、少し前のお話。