ひみつのクリスマスプレゼント②
その日の夕ごはんは、テーブルいっぱいにママの手作り料理が並びました。ピザ、シチュー、サラダ、いちごがたくさん乗ったクリスマスケーキに、アップルパイまであります。
「わぁ!おいしそうなものばかり!毎日クリスマス・イブだったら幸せだなぁ!」
ジェームスは目を輝かせて言いました。
「おいおい、ジェームス。毎日はさすがに飽きるんじゃないかい?」
パパがあははと笑って言いました。
「そうよ、ジェームス。それに、私も毎日これだとさすがに大変だわ」
ママもほほと笑って言いました。
そんな中、ゆきちゃんは一人元気がありません。
「ゆき、どうしたの?元気がないわね」
ゆきちゃんの様子に気付いたママが尋ねました。
「今日ね、リックとタックに、ゆきにはサンタさんは来ないって言われたの。それにね……リックとタックには、いつもサンタさん、来ないんだって。サンタさんはみんなのところに来てくれないの?」
ゆきちゃんは今朝のことがずっと気になっていたのです。
「そうか、リックとタックがそんなことを言ったんだね。ゆき、こっちへおいで」
パパは、悲しそうな顔をしているゆきちゃんを呼ぶと、暖炉の前のソファーへと座りまた。そして、後ろからついてきたゆきちゃんを抱き上げると、自分のひざへと座らせました。ジェームスもトコトコとやって来て、パパの足元へちょこんと座りました。暖炉の炎がゆらゆらと優しくゆらめいています。
「あれはちょうど、ゆきが生まれる一ヶ月前のクリスマス・イブだったよ。あの日は朝方から雪がずっと降っていてね、夕方には吹雪になってきたんだ。パパはポップが風邪だと聞いて、お昼過ぎから診察に行っていたんだ。その帰り道でのことだよーー」
パパが話し始めました。
ーーー「おぉ、寒い!一段と雪がひどくなってきたなぁ、早く帰ろう」
診察を終えてパパは足早に家へと向かって歩いていました。辺りは雪で真っ白。風がゴーゴーと鳴って、ひどい吹雪で前もよく見えないほどです。
すると突然、
ドーン!!
少し先の方で銃声が聞こえました。
「!!」
(猟師か?!誰か撃たれたのか?!)
雪に足をとられながらも、とにかく音が聞こえた方へと急ぎました。
「くそっ!吹雪で見失った!」
「今日はもう無理だ、引き上げるぞ!」
向こうの方で声が聞こえます。どうやらこちらへ来るのは諦めたようです。
「お母さん!お母さん!しっかりして!!」
「お母さん!起きて!お母さん!」
「…お前たち……早く、早くここから、お逃げな、さい……」
お母さんギツネは雪の上に横たわったまま起き上がりません。二匹の子ギツネが必死で話しかけます。
「お母さん!もう悪いやつはいないよ!」
「お家に帰ろうよ!お母さん!」
お母さんのお腹の辺りから赤いものがどくどくと出ては、真っ白な雪を染めていきます。
「お母さん!お母さん!!」
二匹はお母さんにぎゅっとくっついて何度も呼びますが、もう何も話してくれません。ふさふさのしっぽで抱きしめてもくれません。
「お母さん……お母さん……」
二匹は震えました。
寒くて
怖くて
悲しくて
寂しくて
悔しくて
ガタガタと震えながらお母さんギツネにしがみついていました。
「はぁ、はぁ、遅かったか……」
そこへ、急に大きな黒い影が近づいてきたので、二匹はびくっとして体を強張らせました。
「かわいそうに……こちらへおいで」
ようやく駆けつけたパパが、二匹に手を差し伸べたのです。
二匹は怖くて声も出せずにぎゅっと目をつぶっていました。
「あぁ、なんてひどいことをしてしまったんだ。ごめんな、本当に、、ごめんな」
パパはそう言うと、三匹をしっかりと抱きかかえて家へと帰りました。
家に着くと、子ギツネは暖かい暖炉の前に下ろされ、タオルで体を拭いてもらいました。ママがホットミルクを持ってきてくれましたが、二匹は飲む元気もないようで、ぎゅっとくっついたまま毛布に丸まって眠りました。
窓の外ではピューピューと風が鳴き、深夜まで雪が降りやむことはありませんでした。
次の日の朝、太陽が昇ると、銀色の景色を眩しいほどに照らしました。
パパは子ギツネを家の外の花壇へと連れて行きました。そして、そこでお母さんと最期のお別れをしました。雪の下の暖かな土の中で、お母さんは永遠の眠りについたのです。二匹はその様子をただただ黙って見ていました。
「春になったら、たくさんのお花が咲くわ。きっとキレイよ。二人とも見に来てね」
「そうだね、今から春が待ち遠しいな。よし。さぁ、朝ごはんにしようか」
パパとママがそう言うとみんなで家の中へと戻りました。
「お腹すいたでしょう、さぁ召し上がれ」
ママがホットミルクとアップルパイを持ってきてくれました。二匹はぺろっと舌でなめたかと思うと、よほどお腹が減っていたのでしょう。むしゃむしゃと勢いよく食べ始めました。
悲しいね
寂しいね
でも
おいしいね
甘いね
温かいね
二匹は涙をポロポロ流しながら夢中になって食べています。パパもママもそれをじっと見つめていました。
部屋には太陽の光が差しこみ、キラキラとひだまりを作っていましたーーー
ーーー「そして、二人は食べ終えたら、ペコリとお辞儀をして、さーっと森へと帰って行ったんだよ。」
パパはそこまで話し終えると、ふぅ、と息をつきました。
「帰ってしまったの?じゃあそのキツネさんたち、今どうしてるの??」
ゆきちゃんが心配そうに尋ねました。
「大丈夫、きっと元気にしているよ。パパもママもわかるんだよ」
「本当?!どうしてわかるの?」
ゆきちゃんはまた尋ねました。
「それはね、その次の年のクリスマスから、パパとママにもサンタさんが来てくれるようになったからだよ」
パパが答えました。
「サンタさんが??」
ゆきちゃんにはパパの答えがよくわかりませんでした。じっと話を聞いていたジェームスにも、パパの答えはわかりませんでした。
「少し長く話しすぎたね。さぁ、そろそろ寝る用意をしよう」
パパはそう言うと、ゆきちゃんをベッドへと促しました。
「ねぇ、パパ。ゆきにサンタさんは来てくれるの?」
「あぁ、大丈夫。サンタさんはみんなに来てくれるよ。だから安心して寝なさい。おやすみ」
「わかったわ、おやすみなさい」
パパの言葉にほっとしたゆきちゃんは、そっと目を閉じて眠りにつきました。




