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ゾッ帝 パティシエ修行編  作者: mしぃ
禁断の森の奥
3/19

ミサ登場

すいません、途中の展開を間違えてしまいました。

原作では高台に投げ出されることなく、シャボン玉に入ったまま一連の流れを繰り広げています。

大幅な設定改変をお許しください。

~前回のあらすじ~



禁断の森の奥でカイトとネロは魔物に囲まれるが、ネロの武器でなんとか魔物を追い払う。

しかし、魔物は共食いを始めて姿を変えた。

姿を変えた魔物たちは次々に背中に装備した武器でカイトとネロを攻撃。再びカイトとネロはピンチに陥る。



~ミサ登場~



 眼前に迫る死は、幾らかも速度を落とすことなく迫ってくる。



「ウォーターボール!」

 死が到達するよりも先に、頭上からミサの声が降り注いできた。



 ミサの言葉と共にオレの身体が巨大なシャボン玉に包まれ、ふわりと浮き上がる。

 その間にも奴らの攻撃はオレを狙って放たれ続けていたが、全ての衝撃がシャボン玉に吸収されていく。



「ど、どうなってんだ!?」

 不安定なシャボン玉の中でバランスを取るのは容易でなく、オレは不恰好に忙しなく回転するハメとなった。

 あまりに回転を繰り返したせいで吐き気を催し始めた頃、ハットを抑えながら悠然と胡坐をかいているネロが視界に入ってくる。

 相変わらずのキザなすまし顔を見ていると、意地でもバランスを取ってやろうという気分になる。



 滑稽に回ること数分、ようやくバランスが取れるようになってきた。

 オレは胡坐をかいて頬杖をつきながら、勝ち誇ったようにネロを睨む。しかしネロはこちらに気付きもせず、眼下に広がる景色を堪能しているようだ。

 そもそもオレよりも先にバランスをとれていたのだから、勝ち誇れる要素などどこにも見当たらないのだが。

 俯き溜息を零すと、うっすらと小さくなった魔物たちがこちらを見上げているのに気付いた。未だ諦めがつかないといった風に、未練がましい視線を向けてくる。

 

 手持ち無沙汰になりシャボン玉を内側から叩いてみると、金属を叩いたような音が響いた。

 外側からの衝撃は全て吸収していたようだが、どんな構造をしているのだろう。



 そんな疑問も消えて眠気に襲われ始めた頃に、シャボン玉が割れた。

 体のいい高台でも見つけたらしく、そこにオレとネロが投げ出された。完璧な着地を見せたネロに対して、オレは転がり出る形になってしまう。

  

 何はともあれ――

「なんとかなったな」

 かなりの高所に放り出されたらしく、高台からは広大な森や灯りのついた古城が見えた。

 雄大な大自然を目の当たりにし、オレは息を呑む。世界をこんな形で見るのは初めてのことだった。

 夜でこんなに素晴らしい景色なら、昼間はどんなものが見えるのだろうか――

 そんな疑問と同時に、今が夜で良かったという安堵が胸に生まれた。

 きっと昼の景色を見てしまえば、世界の全てを知った気になってしまっていたように思う。

 それならば、これくらいが丁度いい。

 心地よい夜風が、頬をなぞった。



 しかし、遺跡を調査している最中に襲われるとは思いもしなかった。

 そもそも魔物が存在すること自体がおかしい。

 不測の事態の連発に、心身の疲労が重くのしかかってくる。



 爺ちゃんの冒険所に書いてあった遺跡――ラウル古代遺跡。

 オレは爺ちゃんの見た世界を知りたくて、ここまで来た。

 それは言い訳なのかもしれない。

 ただ、世界を知りたい。

 きっと爺ちゃんも、そう思って旅に出たに違いない。

 爺ちゃんが唯一残した首飾り。それがラウル古代遺跡で発見されたものらしい。

 もっとも、今となっては本来の目的など忘れ、雄大な景色に心奪われてしまっているのだが。



 束の間の安息を楽しんでいると飛行機のような騒音が聞こえ、次第に大きくなっていく。

「なんだ?」

 何事かと思い、音のする方へ顔を向ける。



 騒音とともにミサがオレとネロの間に割って入るように着陸してきた。

 風に揺られる亜麻色のポニーテールと斜めに被ったベレー帽を見れば、一目でミサだとわかる。

 

 ミサは勢いよくホバーボードを降りると、わざとらしく大仰に肩を竦めて、

「もう見てられないんだから! あたしに感謝しなさいよ?」

 と芝居がかった口調で鼻を鳴らした。



「ねぇ、ネロ? あたし大活躍だったでしょ!?」

 そう言ったかと思えば、オレへの対応とは打って変わり、胸の前で手を組み媚びるような上目遣いでネロを見つめ始める。



 ネロはミサを無視し、景色を眺めながら何やら考え込んでいる。

 実に噛み合ってない二人だ。



「つうか、今までどこ行ってたんだよ」



「どこでもいいでしょ? カイトには関係ないじゃない」

 ミサはオレに舌を出し、心底嫌そうな顔をする。

 怒涛の展開に、この女の性格の悪さを失念していた。



「ああ、そうかよ。せいぜい恋の成就目指して頑張ってくれ」

 オレは舌打ちをして、ネロに顎をしゃくる。



 そのとき、どこかから火砲の発射音らしきものが聞こえた。

 着弾間際にミサがシャボン玉を再び展開したお陰で最悪の状況は逃れたものの、シャボン玉には罅が入っている。 

 着弾が繰り返される度に罅はより大きくなっていき、オレの精神を着実に追い詰めようとしていた。

 

 オレを包んで浮かび上がるシャボン玉に対する攻撃は、唐突に止んだ。

 諦めてくれたのだろうか。

 唐突に再開された空中遊泳を楽しむ余裕もなく、オレは辺りを見回す。


11歳から恋愛脳のミサちゃんは将来どうなってしまうのでしょうか

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