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ゾッ帝 パティシエ修行編  作者: mしぃ
禁断の森の奥
2/19

一難去ってまた一難

設定がわからないので適当に補完しています。

変更箇所が多すぎるため、注釈はなしにします。

でも面倒くさいので前作の注釈を削除する予定はありません。

~前回のあらすじ~



ラウル古代遺跡を確かめるため、禁断の森に足を踏み入れたカイトたち。 

禁断の森の奥で、アルガスタに存在しないはずの魔物に追いかけられる。

カイトとネロは魔物に囲まれてしまう。



~一難去ってまた一難~



 空腹が限界に達したらしい魔物たちがにじり寄ってくる。

 低く唸る。吠える。涎を垂らしながら歯を鳴らす。

 それぞれ好き勝手をしてくれている。中には仲間とじゃれている魔物すらいる始末だ。



 オレは魔物を睨み据え、剣の柄を握っている右手に力を入れる。

「こうなりゃ、戦うしかねぇだろ。一応聞いておくが、策はあるか?」

 背中合わせのまま、周囲への警戒を解くことはせずに一応形だけの質問を投げかけておく。

 既にオレの心は決まっていた。



 そちらを向かなくても、ネロが瞼を閉じて首を振っているであろうことは予測できた。

「この数を相手にするつもりか? 相手にするとキリがない。こいつでまとめて片付ける」

 そう言ってネロは銀色の小さな球体を二個差し出してきた。



「なんだよ、これ」

 受け取ったはいいものの、こんな小さな球体で現状を打破できるとはとても思えない。

 それでもネロが片付けると言うのであれば、きっと可能なのだろう。

 オレは未だ柄にかけられていた手を離し、両の掌でしっかりと球体を握り締めた。



「近くに水溜りがあるだろ? こいつで奴らを感電させる。後のことは知らんが、ある程度は倒せるだろう」



 ネロの言葉より数秒遅れて、作戦の内容を理解する。

「はあ!? こんなもんで何ができるんだよ!?」

 思わず声を荒げてしまう。こんなことで魔物たちを刺激してしまっては元も子もないが、勝利を確信でもしているらしい魔物たちは、相変わらずの余裕綽々といった様子でゆっくりと近付いてくる。

 怯えるオレたちの姿でも見ようと言うのだろうか。



「ボクを信じろ。それとも、ボクは信用できないか?」



 周りを見渡せば、確かに大小の水溜りがある。

 ほんの少し逡巡しながら掌の球形を睨みつけた。



「それにしても、景色が綺麗ねぇ」

 そのとき、ネロのインカムからひたたび緊張感のないミサの暢気な声が聞こえてきた。

 オレとネロは、示し合わせたかのように溜息を零す。

 ふと自分の浅はかな考えが馬鹿馬鹿しくなった。何よりも、ネロの問いに即答できない自分が堪らなく情けない男であるような気がして、自嘲気味な笑みが自然に浮かんだ。

「そうだな、お前を信じるしかねえ」



 ネロは任せろとでも言うかのように小さな笑声を漏らした。

「奴らが水溜りに入ったら、そいつを投げろ。いいな?」



「ああ、派手にやろうぜ」

 一際大きな水溜りに目をつけたオレは、そこにできるだけ多くの魔物が入るのをじっと待った。

 自分でも気付かない間にかなり緊張したようで、喉がからからに渇いている。



 ネロは一体どうなのだろうかと、そんな下らない疑問が頭に浮かんだ。

 あとで聞いてみよう。

 そのためには、ここでしくじるわけにはいかない。



「今だ!」

 ネロが力強く叫んだ。



 いきなりのことに心臓が張り裂けそうになる。

「ほらよっ!」

 オレは水溜り目掛けて、銀色の小さな球体を放り投げた。

 球体は放物線を描きながら緩やかに水溜りへと落ちていく。

 瞬間。強烈な青白い光が魔物たちに襲い掛かった。

 あまりの眩い光に、目を瞑る。



 オレたちが巻き込まれなかったのが奇跡だったと思うほどの電撃の威力は絶大で、多くの魔物は煙と雄叫びの中で次々と倒れていく。

 運良く生き延びた魔物らも電撃の威力は理解できたようで、我先にと踵を返し逃げ去っていった。

 辺りは静寂に包まれ、ほんの幾つかの紅い光だけが不気味にこちらを見つめていた。



「なんとかなったな。ありゃお前の親父の発明品か? 正直、侮ってたぜ」

 一気に緊張の解けた脱力感で倒れそうになるのを抑え、オレはネロの方へと振り向いた。

「まあな」

 ネロの父親はゾット帝国の騎士団の科学者であり、変なものを発明しては騎士団や親衛隊に提供している。

 いつも自慢げにネロは父親の発明品を見せびらかし、改良だなんだと言っては秘密基地で発明品を弄っていた。

 ネロは発明品を弄り出すと止まらなくなる。その間ミサがつまらなそうにしていることに気付いているのかいないのか……

 どちらにせよ、女受けの良い趣味とは言い難い。



 しかし、今回はその発明品に助けられたのだ。

 命が助かったことは何よりも喜ばしいことだと、喜色満面なオレに対してネロの表情は硬い。

「お前は何も考えずに突っ走りすぎだ。無駄な戦いは避けたい」

 ネロは瞼を閉じて肩を竦める。



「悪かったな。今回はお前に助けられた……いや今回も、か」

 ネロの背中越しに黒焦げになった魔物が見えた。



「ねえ、こんなとこにラウル古代遺跡があるわけ? 見たとこ森はあるし、湖はあるし、遺跡はないし」



 お前は暢気でいいよな。こちらは散々な目に合ったというのに、微塵も意に介した様子はない。

 空を仰いでミサを探そうと試みるも、夜間ということもあり見つかりそうもない。

「はぁ……あいつらも諦めてくれたし、さっさとこんなとこ離れようぜ」

 

 歩き始めたオレをネロが手で制す。

「待て、奴らの様子が変だ。油断するな、カイト」

 ネロは辺りに灯る紅い光へと視線を向け、再び転がる死体の群れへと目をやった。

 逃げ去った魔物とは別の連中なのか、同種と思しき数匹の魔物が転がる死体を見つめている。



「今度はなんだよ」

 オレは舌打ちして、剣の柄に手をかける。思えば、今日は一度も剣を抜いていない。

 それにしても、ほんの数匹で一体何をするつもりだ……?



 その答えはすぐに得られた。死体を見つめていた魔物はオレたちに目もくれず、一心不乱に死体を貪り始めた。

 思いもよらぬ光景に、思わず後ずさる。



「どっ、どうなってんだよ!?」

 一度はほぐれた緊張の糸が、先ほどよりも張り詰められた状態で心に敷かれるのを感じた。



 ネロがオレを制していた手をゆっくりと下ろす。

「さあな……ただ、嫌な予感がする」

 重苦しくそう言ったネロは、腰に巻いたホルスターのオートマチック銃に右手をかける。

 いつの間にか左手には先ほどの球体を握っていた。



 共食いをしていた一匹が動きを止めた。

 まるで苦痛に耐えているかのような低い唸り声を上げたかと思うと、魔物の皮膚が一気に剥がれ落ちていき、金属の骨格が露になる。

 足の爪は鋭さを増し、背部には火砲のようなものが現れた。

 他の魔物も次々と姿を変えていき、ついには全ての魔物が背部に兵器を背負った異形へと姿を変えた。

 一切の生物らしさを感じさせない金属製の肉体の中で、紅い眼光は不気味さをより際立たせる。



 奴らの背部に背負われた兵器が雄叫びを上げるのを聞いた。

 瞳に、死が映る。

 言い様のない焦りと苛立ちが、オレの中を駆け巡った。

ぶっちゃけありえない

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