禁断の森へ
これの前に別の作品もあるらしいですね、知りませんでした。
面倒なのでこちらから終わらせます。
オレは禁断の森の奥、獣道で三匹の狼のような魔物に追いかけられていた。
鼓動は高鳴り、冷や汗が背中を伝う。息を切らしながら振り返ると、吸い込まれそうなほど紅く鋭い眼光をたたえた魔物が鋭い牙を覗かせながら低く唸っている。
舗装されていない道は足元が悪く、大小散りばめられた水溜りが余計に悪路を助長している。
振り返っている間に水溜りを踏んだらしく、派手な水飛沫が飛び散る。
靴の中まで水が染み込んでくるのを感じ、ほんの小さな不快感を覚えるが、足を持っていかれ転ばなかっただけでも有難いと思うべきか。
再び注意を足元から後方へ向けると、真ん中の魔物が急に止まり、天を仰ぎながら遠吠えを始めた。
あいつ何しやがった?
嫌な予感がする。今すぐこの場を離れるべきだと、本能が告げている。
顔を戻し、走ることに全ての意識を集中させる。靴が汚れることも厭わずに、ただ足をとられないようにだけ注意しながら、必死に腕を振って走る。
こうなりゃ、汚れる心配をしている場合じゃねぇ。
樹の影や枝の上で蛍のように紅い光が幾つも灯っていることに気付く。不気味な光に囲まれ、思わず足が止まってしまう。
まさか、さっきの遠吠えで仲間を呼んだんじゃないだろうな。
どうやら悪い予感が的中したらしく、ぞろぞろと至るところから魔物が現れた。
勢いよく枝の上から飛び降りた魔物が、涎を垂らしながら鋭い牙を向けて威嚇して吠える。
他の魔物も似たようなもので、どいつもこいつも腹が空いて仕方がないといった様子で足を踏み鳴らしている。
嫌な目だぜ、群れでオレを狩るつもりか。
まだ11歳だってのに、こんなとこで畜生どもの餌にはなりたくねぇ。
心の中で愚痴りながら、辺りを見回す。
こいつら、襲ってこないのか……?
「ダメだな。こいつらの正体がわからない」
今まで黙っていたネロが冷静にそう呟いた。
自慢のお洒落アイテムの数々も、走っている間に随分とくたびれてしまったらしい。道行く女性が皆振り向くのではないかと思わせるほど端正な顔立ちに対して、汚れた衣装は些か滑稽に映った。
幼馴染のミサならば、そんなネロも素敵だなんだと持て囃すのだろうが……
何やら腕時計と連動しているらしい眼鏡には立体の魔物の映像が表示されている。
ほんの数秒腕時計の操作をしていたものの、すぐに諦めたように首を振った。
「やはりわからない。ここは下手に刺激するよりもミサの援護を待とう」
戦おうと剣の柄に手をかけたオレを手で制しながら、ネロはそう警告を投げかけてきた。
「ミサはホバーボードで観光でもしてるんじゃねぇのか? ……いやわかってる、わかってるよ」
そう言って俺は剣の柄から手を離す。
「なんだ、今日はえらく物分りがいいな」
「なんてなっ! ミサを待ってられるか!」
ネロの手が引かれたタイミングを見計らって、オレは再び剣に手をかけ一歩前に踏み出る。
魔物を刺激しないよう体勢を低くし、慎重に辺りを見回す。
諦めたようにため息を吐いたネロと後ろ合わせになる。
「こいつら、なんなんだ? アルガスタに魔物がいるなんて聞いたことねぇぞ」
「わからない。もしかしたら、新種か何かかもな」
剣に手をかけたはいいものの、こうも囲まれていては攻撃の仕掛けようもない。
どう動くべきか思案していると、ネロの耳に装着されたインカムからノイズと共に陽気な声が聞こえてきた。
「ネロ、どうする? 囲まれちゃったわよ?」
ホバーボードで偵察に行ったミサから、ようやく無線が入ったらしい。
一体どこにいるんだよ……つうか、今までどこに行ってやがった。オレのことは無視かよ。
そんな下らない考えを浮かべながら、オレは天を仰いだ。それこそ遠吠えでもするかのように。
もっとも、助けが来るとは思えないが。
空腹が頂点に達しでもしたのか、魔物たちがじりじりと距離を縮め始めた。
更新が停止しているので原作に追いつき次第、死の吹奏楽団編を考えております。




