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壊れた世界の旅人語り  作者: 夜天夜空
第一章――”なにもない”の神社とそのおわり
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第07話

―――かつて、この世界には女神様がいました。


女神様はこの世のすべてを創り出し、すべてを愛しました。


しかし、やがて知性を持った生き物は互いに争い始めてしまいます。


女神様は大変悲しみましたが、生き物の争いは止まるどころか酷くなるばかり。


女神様は生き物たちに命の尊さを教えるために、すべての物に寿命を与えることにしました。


それを知った生き物たちは強く反対しました。


そしてある時から、生き物たちは女神様を悪魔として恐れ始めました。


女神様は悲しみましたが、生き物たちを愛するのをやめはしませんでした。


愛されていることをいいことに、生き物は女神様を悪く言うばかり。


女神様がいくら嘆いても生き物たちは変わりません。


しだいに女神様は、生き物たちに黒い感情を抱くようになって行きました。


しかし女神様はそのような感情を認めたくありません。


必死に考えた女神様は、自らの子供に力を半分ずつに分け与えてしまうことにしました。


其の力は、世界を愛しむ創世の力と、壊すべきと憎む破壊の力。


そしてそれ以上黒い感情を抱くことのないよう、それぞれを世界から隔離します。


最後に、残った自分を七つの欠片に分割し、封印してしまいました。





***





「―――それぞれの欠片は、異世界の建造物を模した神殿に保管されている。と」



其の異世界の建造物と言うのがこの建物って訳か。


神社なんて聞いたこともないはずだ。


この世界になかったのか。



パタンと、読んでいた本を閉じて壁際にある机に置く。



「この物語が本当だと仮定すると、いくつか解せないことがあるな」



物語と言うことで、多少の改変はされているとは言え、年代がおかしすぎる。


精々、ソウは十数年くらいしか此処に住んでいないという。


この物語は少なくとも大崩壊よりずいぶんと前のことだろう。


それこそ教会や教典より前の、神話と呼ばれる世代の話だ。


この建物はそんなに昔の物には……食べ物のことを考えるとそうでもないのか?


毎日状態が元に戻っているとか?


後で目立たないところに傷でも作ってみるか。


……それが正しいとなると、実はソウは数百歳とか数千歳とか。


いや、それならもう少し物事を知ってるか。


先代がいたと考えるほうが自然だな。


しかし、



「女神の欠片、ねぇ」



確かに何かよく分からないモノではあったけど、そんな神聖さは感じられなかったような。


むしろこの世界のモノは違う、決定的な異物感。


世界を創ったと言うなら、すべてを愛しているなんて言うのなら、この世界に近いモノではないのだろうか。


あの異物感から恐れられたなんてこともあるかもしれない。


まあ、恐れられた原因なんて今の時代で考察しても分かりはしないか。


異物感から恐れられたのかも知れないし、本に書かれた通りで封印しているうちに異物感が出たのかもしれない。


問題は、大崩壊以前からあったと言うのなら、なぜそんなものが見つからなかったかと言うことだな。


あんな明らかにおかしいもの、文明が発達した昔なら荒らされて研究されていてもおかしくないんだが。


うーん、よく分からん。



疲れたー、と体を伸ばしていると、扉の向こうから声が聞こえた。



「……読み終わった?」


「ああ、ありがとう」



扉が開き、隙間からソウがこちらを覗き込む。


その手にはもう一冊の本。



「……ん、続き、見つけた」


「続き?」


「……これ」



手渡れた本には『はじまりがたりⅡ』の文字。


今読んでいた本の続きと言うことが分かる。



「これって全部で何巻あるんだ?」


「……たしか、三巻」


「もう一巻は?」


「……納屋のどこか」


「整理されてないのか」



ふるふると首を振るソウ。


整理されていない書庫ほど面倒くさい物はないな。



「……探してきたほうがいい?」


「いや、自分で探すよ」


「……ん、じゃあこっち」



立ち上がり、音もなく歩くソウについていく。


神社の大きな建物の裏に小ぢんまりとある母屋、さらに小さな納屋がその隣に隠れるようにあった。


神社や母屋とは違い、土作りの壁に小さな窓、ひとつきりの扉は大きな鍵がかかっている。


ソウが鍵を開け扉を開くと、中は真っ暗だ。


唯一の天窓から一筋の光が降り注いでいる。



「暗いな」


「……ん」



気がつけばソウの周りには、いつか見たような小さな光がくるくると廻っている。


ソウがぼそぼそと何かを嘆くと、そのうちの一つがこちらに来て、体周りをくるくると廻ったかと思うと頭の上に落ち着いた。


なんとなく、頭の上に小さな人が座り込んでいるようなそんな感覚。



「なあソウ、この光って」


「……ん、光の精霊」


「普通の精霊って、極位魔法が使えないと見えないんじゃないのか?」


「……ちょっと魔力を注いだだけ。それで、こうやって見えるようになる」



ふうん。


このふわふわしたのが精霊ね。


頭の上に乗った光のふちをなぞるように手を動かす。



「……くすぐったがってる」


「あ、やっぱりこのふちが輪郭なのか」


「……トキの事、気に入った見たい」


「分かるのか?」


「……ん」



よく分からんが、この光は俺のことを気に入ってるようだ。


つんつんとつつくと、小さな手で叩かれた様な感触が伝わってくる。



「……とりあえず、それで、視える?」


「ああ、ありがとうな」



光がひとつだけと言っても、たいまつ程度の明るさはある。


本を調べ、読む程度には申し分ない。



「……奥、探してるから、トキはそのへん」


「分かった」



そういうと、ソウは納屋の奥のほうに入っていってしまった。


辺りを見回せば本棚にぎっしりと詰まった本本本。


そのほとんどは魔法について書かれたもののようだ。


どこかで読んだ物のようなものがあると思えば、見たこともないようなものがある。


中には極位の解説書のようなものまである。


……魔法と言う技術自体、此処百年程度の技術のはずだ。


そしてこの百年と言うのは、大崩壊以後と言う意味であり、また製紙技術が後退した百年と言う意味である。


紙が高級品である現在、本を一冊作るのにもコストがとてもかかる。


この納屋に収まった本を作るのに、どれほどのお金がかかるか。


そもそも魔法についての本がこんなにいっぱいあると言うのも現実味がない。


極位が使える人が殆どいないと言うのにその解説書まであると言うのだ。


いよいよこの神社の正体が気になってくる。


本当に女神の欠片の保管場所なのだろうか。


まあ、この場所の正体はとにかく、ソウがあれだけの魔法を使っているのだ。


おそらく此処にある魔法の書物は本物なのだろう。


ならばこの場所は宝の山である。


時間さえ許せばいくらでも引きこもって本を読み続けていそうなものである。


だが、今はそこまで読んでいる余裕はない。


次の襲撃まで、精々三冊程度読めればいい程度だろう。


ならば先ほどの続き二冊に、他になにか一冊読めれば上等だ。


襲撃後も此処にとどまれば良い。と言い出せばどれだけでも読めるが、俺はそこまで長居するつもりはないのだ。


これだけ本があると名残惜しい気もするが、目的の本を探すだけで時間を無駄にするわけには行かない。


早々に続きを見つけてしまおう。





***






―――一般に、極位魔法の使い手には精霊が見えると言われている。


しかし、本当に極位魔法の使い手たちは精霊と言うものが見えているのだろうか。


そもそも精霊と言うのは何なのだろうか?


精霊と言う存在に焦点を当てて、極位魔法とは何かと言うところまでを解説して行こうと思う。


極位魔法使いたちに話を聞く限り、精霊と言うものはどこにでもいるらしい。


それも全てが同じ存在でなく、生き物のようにそれぞれに属性を持っている。


その存在の属性値の高い属性が一般の精霊属性(光精霊や火精霊など)となるようだ。


極位魔法が使えるかどうかと言うのはその属性値を見極め、正しく精霊に魔力を渡せるかどうかが重要となってくるらしい。


しかし、そういった見極めができないものが極位魔法に到達することがある。


それら感覚派を説明するのにいくつか解説しなくてはならないことがある。


こちらはあまり知られてはいないが、憑き精霊と言われるものだ。


憑き精霊とは、生き物ごとに生まれたときからずっと一緒にいる。いわば自分の分身のような存在のことである。


憑き精霊の強さや属性値によって、憑かれた者の最終的な魔法到達度が変わってくるらしい。


力の弱い精霊が憑き精霊ならば、憑かれた者はせいぜいでも上位魔法しか使えない。


力の強い精霊が憑き精霊ならば、憑かれた者はがんばれば極位まで到達すると言った具合だ。


当然、憑き精霊にもそれぞれ得意な属性値と言うものがある。


憑き精霊に憑かれた者の魔法は、その精霊によって使う魔力属性値がぶれてくるわけであり、


感覚派と呼ばれる魔法使いはその属性値配分がうまく配分出来てしまった者たちである。


よくある、何かの拍子に魔法が使えなくなった者と言うのはそういった感覚派であることが多い。


精神的なショックによって本人の発する属性値が変わってしまったと言うことなのだろう。


そういった力が使えなくなった生き物にも、憑き精霊はずっと憑いているというのだから謎の多い存在である。


さて、自然に存在する精霊たちは普段、生き物の目には見えはしない。


精霊に正しい属性値の魔力を渡すことが極位魔法に必要なことである、とは先ほど書いた通りであるが、


精霊を見えるようになるためにも、正しい属性値の魔力の受け渡しが必要となってくる。


うまく魔力を渡すことが出来るのならばその精霊は力を増し、うっすらとその属性の色に光るのだ。


その状態が所謂精霊が見える状態である。


つまり、極位魔法使いとは自分の周りにいる精霊の属性値を見極められる者と言っても過言ではないのだ。





***





ふむふむ、極位魔法を使えれば良いってものでもないんだな。



「……見つかった?」


「……はっ」



気がつけば本を読みふけってしまい、傍らにはソウが本棚の隅から顔を出している。



「……途中から、音がしなくなったと思ったら」


「あー、いや、ごめんなさい」



ソウから攻めるような目で見られてしまった。



「……あ」


「うん?」



ソウが俺の頭のほうを指差す。


何かと振り返ると……『はじまりがたりⅢ』の文字。



「あったな」


「……目の前」


「ごめんなさい」



ソウが探してくれていたのに、自分はサボって読書していたのだから申し訳がたたない。



「……おなかすいた」


「今日は少し奮発するよ」


「……ならいい」



使っていなかった自分の調味料を使って作るとしよう。


心なしかソウの顔はうきうきしてるし、腕によりをかけて作るとしよう。


……料理で釣ってしまう自分も自分だが、釣られてしまうソウもなんと言うか安いなぁ。



ソウと共に納屋から出ると、もう日は沈み始め、空が夕焼け色になってきている。



いい時間だし、もう作り始めても良いだろうな。


今日は何を作るとしようか。



心なしか足取りの軽いソウと共に、台所へと向かった。



ちなみに、外の調味料を使った料理はご満足いただけた様である。


いつもの倍は早く、ご飯を食べ終わってしまった。





トキ  「……違うだろ」

作者 「はい?」

トキ  「更新するのそっちかよ!」

作者 「二つ更新するとは言いましたが、こちらを更新するとは」

トキ  「へーそう言うこと言う?」

作者 「終わらなかったんですよ!すいませんでしたー」

トキ  「……良いけど、良いのか?」

作者 「はい?」

トキ  「カメラ廻ってるぞ」

作者 「……ハイ、皆さんこんばんわ。毎度おなじみ後書き対談です。」

トキ  「よろしくー」

作者 「と言う事で申し訳ありませんが、少し早めに更新するだけの結果となりました」

トキ  「だめだめだな」

作者 「申し訳ないです」

トキ  「その癖更新が廃れた話を更新すると言う」

作者 「あの話はふと気がついたら書いているのです」

トキ  「いや、そう言う意味ではなくてな」

作者 「さて、今回のお話ですが」

トキ  「相変わらずの全力で話を逸らしていくスタイルだな」

作者 「今回は前回言った通りの読書会であります」

トキ  「確かに、本ばかりだな」

作者 「設定資料集の回とも言います」

トキ  「そうなの!?」

作者 「いや、今回の話を作るの当たって一から作ったものですが」

トキ  「いまだにデータ上の設定資料集は白紙だもんな」

作者 「いい加減紙から情報を移さないととは思っているのですが」

トキ  「まあPC持ち歩いているわけじゃないし、思いつき情報は紙か」

作者 「ノートが尽きる前に」

トキ  「ノート一冊資料集!?」

作者 「実際のこの小説のデータは十数ページ程度ですが」

トキ  「その程度なのか」

作者 「仕事のノートの裏に書いているので」

トキ  「仕事まじめにしようか」

作者 「と言う事で設定いくつか解説ですが」

トキ  「……いいけど」

作者 「はじまりがたりは良いとして、精霊と極位魔法についてがちょっと重要ですかね」

トキ  「要は魔法を使うには精霊が居ないといけないって事だろう?」

作者 「そうそう、ただ、それとは違う意味でも重要だったりします」

トキ  「うん?」

作者 「まあそれは別のお話」

トキ  「気になる事を」

作者 「と言うかこのお話は詰め込みすぎた感じがあります」

トキ  「詰め込みすぎ?」

作者 「解説するのが大変」

トキ  「そんなにかよ」

作者 「まあたぶんこの間の呪文詠唱ほどではない気もしますが」

トキ  「あれ、そんなに大変だったのか」

作者 「いや、そんなに、写すだけなので」

トキ  「何が言いたい」

作者 「解説とか、写すだけの作業ってしんどくありません?」

トキ  「お前そこはがんばれよ」

作者 「さて、一つ一つ解説して行きますか」

トキ  「じゃあはじまりがたりについて、あの話は本当なのか?」

作者 「真偽性は物語と言う事である程度な感じですが、残りの二冊は結構この後にかかわってきますね」

トキ  「と言うか残り二冊はあんな感じでまた書くのか?」

作者 「それはこのあとのテンションによってと言う感じですが、残り二冊は今回のとはテイストが違うので」

トキ  「ふうん、じゃあ女神の欠片とやらは?」

作者 「それが本当に女神の欠片なのかと言う問いならノーコメントです」

トキ  「む」

作者 「私にも分かりません!」

トキ  「物語の確信だからとかではない!?」

作者 「確信でも何でもぺちゃくちゃ話すこの対談で何を期待しているんです」

トキ  「おい」

作者 「さて、次の話題は何ですか?」

トキ  「本当に考えてないだけだこいつ。……じゃあ精霊について」

作者 「あー、えらく簡単に精霊に気に入られてましたね」

トキ  「あれ、ソウの憑き精霊だろ?憑き精霊ってそんなに簡単に人に渡せるのか?」

作者 「あー、ソウの精霊は憑き精霊ではありません。彼女は精霊の属性値を見極められるため、いくらでも精霊を実態化出来ます」

トキ  「極位魔法使い万能すぎじゃないか?」

作者 「この場合はソウの体質ですね。彼女、精霊が見えるので」

トキ  「……じゃあソウの憑き精霊は?」

作者 「それを使わせるなんてとんでもない」

トキ  「怒らせないようにしよう」

作者 「と言う具合に強すぎるので普段は通常のその辺に居る精霊を使用しているわけです」

トキ  「うらやましい限りで」

作者 「ちなみに、君は精霊がついていません」

トキ  「なぬ?」

作者 「それが魔法を使えない原因のひとつでもあるんですが、まあそれは良いでしょう」

トキ  「え?ぜんぜん良くないんだけど!?」

作者 「次は……ないですかね」

トキ  「いろいろあるんじゃないか?」

作者 「次の本についてはもう本の中で全部説明されてますし」

トキ  「雑だな」

作者 「まあ、あれはあくまで考察と言う本であることを忘れないようにと言うことですね」

トキ  「真偽性は保障しないと」

作者 「本なんてそんなものです。信じすぎると馬鹿を見ます」

トキ  「考察本で何かいやな思い出でもあるのか?」

作者 「……後はトキがソウを着々と餌付けしていることですかね」

トキ  「あるのか」

作者 「と言うか何でもかんでもご飯食べさせて何とかしようとしなさんな」

トキ  「ご飯を用意すれば何とかなるソウがいけないんだ」

作者 「だんだん要求がグレードアップしてどうしようもなくなるパターンですね」

トキ  「……そんなに長く一緒に居るわけじゃないしなぁ」

作者 「そーですねー」

トキ  「……え?」

作者 「さて、では次回予告に入りますか」

トキ  「え、いや、ちょっと、気になることがさらっと」

作者 「次回は、とある一日」

トキ  「あ、もう説明する気皆無だこいつ」

作者 「と言うか平穏回です。ソウの」

トキ  「俺は?」

作者 「ちょっとした幻想的な物を見るかもしれません」

トキ  「……?」

作者 「そんな感じですかね」

トキ  「相変わらず適当な説明だ」

作者 「はい、それが適当なんです」

トキ  「……」

作者 「さて、次回も終わらない夢の中でお会いしましょう」

トキ  「お疲れさまでした」

作者 「……次回長いんですよね」

トキ  「まさか」

作者 「一話で短いときの倍ぐらいはあるんじゃないですかね」

トキ  「……」

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