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壊れた世界の旅人語り  作者: 夜天夜空
第2章――グランドピークでの顛末
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第41話

「…いらっしゃい」


「よ、よう、元気か?」


「ええ、お・か・げ・さ・ま・で、元気いっぱいだ」



珍しく整えられた服装と髪型の『エリアル・シード』店主、エル。


使い魔のフィードバックを受けたらしい彼女は、額を真っ赤に腫れさせてにっこりと底冷えするような笑顔をこちらに向けている。



「……ヒール、いる?」


「ああ、大丈夫、ありがとうね」


「……わたしがトキに教えなかったから」


「ううん、ソウは悪くないさ、私も分かりづらかったかも」


「そうだな!いやー、お前も悪かった。真逆あれが使い魔なんてなー」


「君は少し反省しようか!?」



やっぱり駄目か。


ソウのおかげで、自分も悪かったみたいな空気になったからいけるかと思ったけど、そんなに甘くはないらしい。


エルは、呆れたように首を振ってこちらを睨む。



「まったく、使い魔から打撃を徹すなんて、君も大概だよ」


「あまりのうっとおしさに、魔力込めて殴っただけなんだけど」


「たかが羽虫に魔力を込める神経を疑っているのだ」



なるほど、魔力を込めて殴れば一応付随効果もあるらしい。


魔力を纏った戦い方、なんてのも試した事もあったけど、その時は結局速度も力も変わらず効果無しだった。


確かにあの時は、使い魔相手に殴った張ったはしていなかったな。


いや、あの時は精霊が憑いて居なかったから効果が無かった?


もしかしたら魔法が使えるようになって、過去に試した技術の中に今までにない技が……



俺が思わず考え込んでいると、エルは不思議そうな目を向けてくる。



「彼、急に黙りこんだけど、どうしたんだい?」


「……多分、また碌でもない事を考え込んでる」


「あぁ…」


「……」



なにやら大変不本意な事を言われている気もするが、そんな事はどうでもいい。


最近、精霊のおかげで魔法を使えるようになって、色々と試すのが楽しいのだ。


今まで出来なかった事が出来るってすばらしい!



「今度は握りこぶし作って涙を流し始めたけど……」


「……いつもの事」


「いつもこんな感じなのか……」


「失敬な」


「あ、帰ってきた」



最近ソウの俺に対する扱いが雑になってきた気もする。


ユエから悪い影響が無ければ良いんだが。


……いや、それはとりあえず今はいい。



「それで、俺達を呼びつけたのはどう言う事なんだ?」


「ああ、そうそう、おばあさんを預かってるのよ」



ぽん、といかにも今思い出したかのように手を打つエル。


どうやらエルはおばあさんを預かってくれて……預かってる?



「おばあさんってウメ婆のことだよな?」


「今の状況考えたらそれしかないだろう?」


「…どういう状況?」



確かウメ婆は、ユエが一緒に荷物を取りに行って、宿に戻って居たはず。


ユエが店の近くに居たと言うのなら、恐らくその辺までは済んでいたと思っていたんだが。



「ややこしい事になっている様だったから、私から首を突っ込んだ。以上」


「あー、よしわかった。それでウメ婆は?」


「……え」


「奥で待っている。早くそこのを連れて行ってあげると良い」



エルは俺が背負っているメルトリウスを指差して言う。


場所を移動するならばと、一応連れてきたのだ。


相変わらず意識は無く、弱弱しく呼吸をしている事で辛うじて生きている事が分かる。



俺はゆっくりと店の奥へと足を運んだ。


狭い板張りの廊下に幾つかの部屋があるが、ウメ婆らしき気配がするのは奥の部屋だ。


半開きになっている扉を軽くノックして中を覗くと、なにやらウメ婆は真剣な表情でゴリゴリと何かを削っている。


俺がノックした事にも気づいた様子はない。


仕方なしに後ろから声をかける。



「おーい」


「…おぉや、かぁえったの…そぉの背中に背ぇ負っているのは?」


「ああ、メルトリウスだ」



そう答えて、よいせとメルトリウスを仮眠用らしきベッドに横たえる。


ウメ婆は変わり果てたメルトリウスを見て愕然としている。



「…おぉ…おぉ、一ぃ体何が…」


「あー、ソイツは長い間侵食の魔法を受けていた様でな。荒療治で治療したらそうなった」


「しぃ…ん食…っ!?」



侵食魔法と聞いて、さっと顔色を悪くするウメ婆。


それもそうだ、侵食魔法は代償魔法。


掛ける側にも掛けられる側にも大なり小なり代償を要求する。


しかも、掛ける側は多少の思考の歪み程度で済むが、かけられる側はそうも言っていられないのだ。


直接精神系を弄られるのだから、その期間は長ければ長いほど代償も大きくなる。


聞いていた限り年単位の侵食を受けていたようだし、心配になるのも頷ける事だ。



「心配しなくとも致命的な何かが起こっているわけじゃない。ぜいぜいその髪色位だよ」


「いぃま、臥ぅせっておるのは…?」


「荒療治の方の代償だ。ついでに、数年くらい運動していなかったような状態になってるらしい」


「…寝ぇかせておけばいい、とぉ言うことか」


「とりあえずはな。起きたら話し合いでも何でもすれば良い。性格や考え方は昔に戻っているだろう」



……自分がやったわけではないので、多分と言う言葉がつくが。


まあ、ソウの実力なら信用できるから、問題はないだろう。



「もう少ししたら安全になるはずだから、それまで暫くここで看病でもしておいてくれ」


「あ、あぁあ、そぉいつはいいんじゃが……」


「ちょっと俺は後片付けしてくるから」



まだ色々と聞きたそうにしているウメ婆に、半ば無理やりメルトリウスを押し付けて、俺は部屋を後にした。


店内に戻ると、なにやらエルとソウでカウンターに何かを乗せて話し合いをしているようだ。


エルの後ろから覗き込んで見ると、おいてあったのは先ほどひび割れた空間魔法の結晶だった。



「……術式の穴を埋めたりとか」


「うーん、しかしここまで本体が破損しているとなると……っと、おや、戻ったのか」


「ああ、…その結晶、復旧できるのか?」



もし復旧できるのであれば儲けモノだ。


と言うかできれば数日以内にでも復旧させてやりたいところだ。


一応中に傭兵どもがいる事だし、放置して死なれても目覚めが悪い。



「一応試しては見るが、期待はしないでくれ。見た目以上に破損が厳しい」


「出来れば結晶本体を直す方向で頼む」


「うん?どういう…って、まさか」


「傭兵どもが中に置きっぱなしだからな」


「…急いではみるが、間に合うかは知らないよ」


「ま、それはしようがない」



その時は傭兵どもも運が無かったと諦めてくれ。


…南無、と申し訳程度に祈って、ソウに向き直る。



「さて、俺は町に散らばった傭兵どもを片付けてくるが」


「……ん、わたしも、行く」


「いや、待った、その必要はないみたいだ」



ソウを連れて店を出ようとすると、エルに呼び止められる。



「どういうことだ?」


「あー、一度外に出てみると分かるよ」


「外に?」



なにやら呆れたような顔をしたエルに進められた通り、店の扉を開けて外に出ると…。



「……えっと」


「うわぁ…」


「あら、2人とも、来てたのね」



なにやらぼろぼろになったユエと、



「お前、それどうしたんだ…?」


「うん?ちょっと運ぶの面倒だったから、台車勝手に借りてきちゃったのよ。後で返さないと」


「いや、そっちじゃなくて」



台車に山積みにされた15人ほどの傭兵達が、俺達を待っていた。



「じゃ、後よろしくー」


「お、おい」



力尽きたように俺に凭れ掛って、そのまま寝息を立て始めるユエ。


汗と、女性特有の甘い香りが…じゃなくて。



「…え、これ、どうしろって…?」



俺は、途方にくれたように嘆くので精一杯だった。


作者 「ハイ皆さんこんばんわ。あとがき対談のお時間です」

トキ  「今回もよろしく」

作者 「と言う事で一週間開きました」

トキ  「と言う事でじゃないよ。説明」

作者 「あーと、現在就活中でして、多分暫く不定期になるかと」

トキ  「そういうのって先に告知するものじゃ?」

作者 「…すいませんでした。就活嘗めてました」

トキ  「あん?」

作者 「小説書きながら何とかなると余裕こいてました」

トキ  「……」

作者 「はい、本日も余裕が在るわけではないので、謝罪はこの辺で解説のほうに入って行きます」

トキ  「…今回はまたえらく短いな」

作者 「切りが良かったので、多分次かその次位でこの町が終わるんじゃないですかね」

トキ  「…切り、ねぇ」

作者 「さ、さあ、今回は魔法、魔力のちょっとした特性と、ユエの強かったんですよアピールですかね」

トキ  「結局、何で今までは魔力まとっても意味が無かったんだ?」

作者 「あー、それは魔法の特性のお話になってきます」

トキ  「(あ、また話し長くなる奴だ)」

作者 「そもそも魔法とは、超自然的な力である魔力を使って、世界そのモノに干渉し、術式に沿った結果をもたらすものです」

トキ  「ふむふむ」

作者 「精霊はこの世の色々なものに宿った、世界に近しい部分であり、またそれは全てのモノが世界より生まれたと言う名残でもあります」

トキ  「…ん?あれ?」

作者 「そのため精霊がいないものは、例え魔力を上手く扱えたとしても世界に干渉することが出来ず、それはつまりあらゆる魔法現象が起こせないと言うことです」

トキ  「……なんか、こう、引っかかるものが」

作者 「例外として自然に発生した精霊なんかは契約と言う手順を踏んだり、一緒にいて慣れて行く事でその人物になじんで行きます」

トキ  「ああ、それが今の常態か」

作者 「ええ、そのため初めのトキの状態はきわめて不自然です」

トキ  「むむむ」

作者 「まあ、その辺は追々語って行きませう」

トキ  「…考える事が増えてしまった」

作者 「後はさらっと傭兵を倒しまくったユエさんですね」

トキ  「まあ、一応二つ名とか付けられるくらいの実力者だしな」

作者 「八つ当たりされた傭兵達、可愛そうです」

トキ  「ユエがやらなくても結局俺がやったわけだが」

作者 「……不意打ちで外傷ほぼ無しで終わるトキと比べて、ユエはほぼ正面からガチンコなので」

トキ  「ガチンコできる実力がうらやましいことだ」

作者 「…さて、次回予告ですが」

トキ  「ふむ、後処理かな?」

作者 「ソウですね今回の件の後始末をしにあっちこっちへ」

トキ  「情報も洩れていたし、報酬は搾り取るか」

作者 「…別にあの人達悪くないですけど」

トキ  「ふっふっふ」

作者 「……それでは、本日はこの辺で」

トキ  「次回は何時よ?」

作者 「少なくとも2週以内には書きたいなぁって感じです、心の余裕てきに」

トキ  「心の余裕がないと掛けないのか…」

作者 「それでは皆さん、次回も終わる事のない夢の中でお会いしましょう!」

トキ  「お疲れ様でしたー」

作者 「一勤は、この時間がつらいのです……」

トキ  「ああ、それで今がんばってたのか」

作者 「結局寝れませんでしたし」

トキ  「…仕事中とか事故るなよ…?」



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