第04話
神社に居候させてもらえることを決めた俺は、取り合えずということで敷地内の掃き掃除を手伝っている。
居候させてもらうのだからと俺のほうから手伝いを申し出たのだ。
もっとも、ソウはお客様の俺にそんな事をさせられないとか渋ってはいた。
お客というよりは居候だからと、多少無理言って手伝わせてもらっている状態だ。
ご飯さえ作ってくれれば別にいい。と、ソウは未だにぶつぶつとこぼしてはいるのだが。
だが、そうして掃除を手伝ったのにはちょっとした意味がある。
先ほどの一団に対する対策を練ることだ。
そのためにも彼女の実力を把握しておかなくてはならない。
まあ、上位魔法を無詠唱でぶっ放していたし、相当な実力者であることは想像がつくけれど。
離れたところでゆっくりと掃き掃除を行っているソウに話しかける。
「ソウの実力を教えてくれないか?」
「……実力?」
「さっき、上位魔法を無詠唱で使っていたから気になったんだ」
「……魔法がどれくらい使えるかっていうこと?」
「うん、とりあえずそれで」
通常魔法の無詠唱というのは、位の高い魔法使いのみが使用できる発動短縮技術だ。
たとえば、下位の無詠唱魔法を使用するのには、上位の魔法が使える実力が必要だといわれている。
一般では、魔法の位が上がるたびに並列で考えられる数、マルチタスクがひとつ増えていくといわれているため、
無詠唱を行うには詠唱時よりもタスクが2つ多くなくてはならないということだ。
上位魔法を無詠唱していたソウは、最低でもそれ以上の実力ということになる。
旅をしていた俺でも、精々が下位の無詠唱ができる傭兵が知り合いにいるくらいか。
それでも結構な実力者として、行く先々で名前を聞いたし、魔法を教えてくれた人いわく、破格の才能だとか。
それならば上位の無詠唱が使えるソウは、となると実力の程はわからない。
実際にそんなことができるやつがいる、何て知らなかった訳だし。
……大崩壊以前は、それくらいのやつは何人かいたって話だけどな。
「……知っている限りは無詠唱で使用できる」
「極位も?」
「……ん」
……そんなの伝説の英雄王とか魔王くらいなものじゃないのか?
「親戚に英雄王とか魔王でもいるの?」
「……わからないけど、たぶん、いない」
「どうやって覚えたの?」
「……物置に資料があった」
親か何かが魔法の研究者だったりしたんだろうか?
確かに魔法という技術自体は、最初の出所が不明だからここが発祥といっても真偽はわからないわけであるけど。
しかし、それが本当となると話が変わってくる。
基本的にはソウが魔法でひきつけて、俺が不意打ちして、とか考えていたのだけど。
ソウがそんなに強いとなると……
「あれ?俺要らないんじゃ」
「……トキの魔法は?」
「あー、使えないよ」
そう、俺は魔法が使えない。
相性が悪いんだかなんだかわからないが、いくら詠唱しても何しても発動しないのだ。
結構いろいろな人に教えてもらったんだが、結局使えるようにはなれていない。
魔力はあるし、マルチタスク自体はできているっていわれるから、才能のほうがないのだろうと思っている。
そのため、旅をしている間は体術を使ったり、その場にあるものを使ったりで戦ってきた。
一応持っているナイフだか短刀だかわからない剣は特別製だしな。
旅をしている中では魔法が使えればと思うことはあれど、そこまで困ったことにはなっていない。
厄介ごとからは逃げればいいという考えだ。
こうして逃げられない厄介ごとも存在するわけだが。
「……じゃあご飯作ってくれるだけで」
「君の撃ち漏らしを片付けるよ」
「……いらないのに」
ソウはいうけど、やつらから物資を奪うのは自分の都合だし、自分は見てるだけ、はない。
だいたい、ソウは少し楽観的過ぎるように見える。
魔法の抵抗は下位に位置する。
上位の魔法があっさり打ち消されたように、人数さえいれば魔法対策は割りと簡単だ。
極位の魔法がどうなるかわからないが、対策はされているだろう。
一人で、しかもたまたまたどり着いた人なら、1回撃退すればいいかもしれないが、今回は目的をもった多人数が相手だ。
十中八九対策をして再度向かってくる。
ソウが、実は武術の達人でした。とかない限りは窮地に立たされるだろう。
……其れがソウ一人であるならば。
「一応だよ一応。何があるかわからないからね」
「……一応があったらいけないの」
「……?」
なぜこんなにも彼女は一人で戦おうとするのだろうか。
確かに、彼女ほどの力があれば大体の敵は一人で何とかなるし、特にこれまでは向かってきたのが一人だったから……、
―――一人だったから?
……そうだ、一人なんだ。
自分がいることが前提で考えていたけれど、彼女は基本が一人だ。
俺がいなくなったら一人でここを守っていく必要がある。
むしろ、俺のような仲間がいるこの状況が彼女にとっての異常なんだ。
……それならば、
「初めて対集団を相手をするのに、たまたま保険がかかったとでも思っておけばいいよ」
「……はぁ……わかった」
あれ、急に素直。
「……トキは、言っても聞かない」
「ああ、そういうわかったか」
「……運がよかったって、思っとく」
ちょっと引っかかるところもあるけど、それでいいんじゃないかな。
ほとんど人の訪れない森の奥で、初めての集団戦に味方がいるなんて、出来過ぎな気もするけど。
この不思議な建物にいると、そういうこともあるのかと言う気もしてくるから不思議だ。
少しでも自分にも加護が来ないか、と気合を入れて落ち葉を掃くことにした。
その後も引き続き戦力の確認をしつつ、敷地内の掃除を終わらせた。
ソウの話によると、大分のんびりやっていたけど普段より早く終わったとか。
建物の中の掃除はいくら言っても手伝わせてくれなかったので、俺は一人敷地の周りをフラフラとしている。
フラフラといっても、何かが仕掛けられていないかとか、逆に何かを仕掛けたりといった、陣地作成に精を出していた。
「こんなもん、かな?」
その辺に落ちているものを使用した、簡易トラップを作り終え、一息つく。
幾つか作ったがどれもクオリティは低く、足止め程度にしかならない代物だ。
だが戦闘中に引っ掛ければ致命的な隙になるだろう。
それ以外では嫌がらせ程度にしかならないが……まあ、それでもいいか。
因みに、仕掛けられていた物は全部解除した。
全部俺のものとは全く違う、トラップツールを使用した面倒くさいもの。
でもそういったものを使うと、解除には手間取らない。
みんな同じような構造なので一回解除すれば後は流れ作業だ。
おかげで、手元には解除されたトラップツールが計5つ。
確り調べたが、それ以外には無かった。
そして、仕掛けを見て気づいた事がひとつ。
「どうも、素人くさいんだよなぁ。やり方が」
そう、とてもこういった事をやるような部隊の手際とは思えないのだ。
仕掛けられたモノはすべて一方向に続いている。
逃げながら適当にばら撒きましたよ。と言わんばかりだ。
これではどちら側にいますよ。と教えてくれている様なものである。
つまり、もう一度来る方向もある程度絞れるわけだ。
……これなら適当な盗賊団引っ張ってきたほうがよっぽど手際がいい。
「まあ、念のため、かな」
来ると予想できる方向にいくつも嫌がらせ用の罠を仕掛けておく。
苛立ちと、足止めと、気分が下がる程度の悪戯罠だ。
これに引っかかって集中力を切らしてくれるような奴らなら、楽でいい。
まあ、おそらくはこれが誘導で、別の方向から仕掛けてくるだろう。
そう思いつつ、考え付く限りの嫌がらせをその周辺に作っていく。
ぎりぎりの時間まで罠作りに精を出し、神社に戻って料理を作る。
建物の掃除は終わっていたようで、料理中、ずっとソウがぼんやりと後ろから眺めていた。
何が面白いのか、俺が料理する様を逐一目で追ってうなずく。
監視、というよりは興味深いといった感じだ。
別にたいした物を作っているわけじゃない、炒め物とかそんな簡単なものだ。
後はソウに了解を取って作っている、余った材料の携帯食料くらいか。
干し肉とかの乾燥系をずらっと並べている。
興味があったのか、ソウが並べた肉を一枚食べた。
……案の定、顔をしかめてこっちを見てくる。
俺は肩をすくめて苦笑いする。
「それは保存用に塩を塗りこんであるから、今そのまま食べるものじゃないよ」
「……うぅ、水」
「ほら」
水を渡してやると、焦ったようにコップを受け取り、こくこくと飲んでいく。
暫くすると落ち着いたのか、不満そうな目をしてこちらを見てくる。
「……それ、どうするの?」
「暫く水抜きしてから塩抜きして、乾かすだけだよ」
「……そうしたら、美味しい?」
「まあ、食える」
本当に美味しくするなら、水抜きしてさらに20日ばかし寝かせる必要がある。
が、そんなことするくらいなら、さっさと乾かしてここから脱出しなくてはならない。
「……美味しいほうがいい」
「あー、それはそのうち自分で作ってみればいい。後で作り方を教えてあげるから」
「……作って」
「時間かかるから無理」
がっつり作るなら行商で買ったほうが早いしね。
大体、この美味しくないものだって作るのに一月位かかる。
精々が、あの集団に対する作戦がうまくいかなかった時用の保険だ。
「……むう」
というのにこの不満そうな声である。
顔は無表情なのに、私不満です。と、言わんばかりにうなっている。
俺はソウの頭をくしゃりと撫でる。
「うまく俺がいなくなったら、これはおいてくから自分で熟成させてみな」
「……ん」
多少不満そうではあるが、まあ納得したか?
顔が変わらないのでよく分からない。
うなり声は止まったから、不満は減ったんだろう。
と、そうこうしているうちに料理のほうが出来上がった。
「ほら、料理ができたから居間に行くよ」
「……ん、わかった」
事が起きたのは、それから3日の時間が経った日のことだった。
作者 「ほいどうも皆さんこんにちわ。毎度おなじみ対談のお時間です」
トキ 「毎度の相方、トキです」
作者 「焼肉っておいしいんですねー」
トキ 「急になんだ?」
作者 「いやー、先ほど一人一万円くらいの焼肉を食べてきまして」
トキ 「……(物価が違って反応に困る」
作者 「やたらおいしかったんですよー」
トキ 「あー、自慢か?」
作者 「……さて、今日のお話ですが」
トキ 「おい」
作者 「今回はつなぎ、お話回です」
トキ 「……またの名を干し肉回か」
作者 「調べてたら食べたくなって作り始めました」
トキ 「あんたの時代で干し肉って需要あるのか?」
作者 「うまければ良し!」
トキ 「……うまければな」
作者 「おいしくなりますとも。さてはて、作中の干し肉はどうなりますかね」
トキ 「いやな予感が」
作者 「私の干し肉の出来具合で作中のものの出来具合が変わります」
トキ 「やっぱりー!」
作者 「まあ、それまでに私の干し肉が出来ていればですけどね」
トキ 「出来てないことを祈ろう」
作者 「それにしても、今回ほぼそれだけなんですよね」
トキ 「話すことないな。短いから」
作者 「たぶんもう、毎回こんな長さです」
トキ 「……がんばれよ」
作者 「暫くこんな感じで続きます」
トキ 「がんばる気はないのか」
作者 「さて、次のお話ですが」
トキ 「いかにも三日後のお話みたいな終わり方だったけど?」
作者 「そのとうりで、次回戦闘回になります」
トキ 「ぐだぐだ回か」
作者 「否定できないです」
トキ 「まあ俺が戦闘が得意と言うわけでもないし、ソウにまかせっきりだろうな」
作者 「……まあ」
トキ 「何だよその間!?」
作者 「と言うことで今回はこのくらいで」
トキ 「ん?今回やけに短いな」
作者 「ちょっと眠くて」
トキ 「食べたら寝るって、太るぞ」
作者 「もう4時間は経ちましたー!」
トキ 「そこまで過剰に反応しなくても」
作者 「カロリーは敵」
トキ 「……なんだかなぁ」
作者 「では、次回も終わらない夢の中でお会いしましょう」
トキ 「お会いしましょう」
作者 「では私は夢の中へ」
トキ 「おやすみなさいー」