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壊れた世界の旅人語り  作者: 夜天夜空
第2章――グランドピークでの顛末
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第34話

お婆さんを宿に寝かせると、トキはふらりと宿を出ていった。


トキは、お婆さんの事を見ておいて欲しいと言っていたのだが、既に治療は完了している。


傷も見当たらず、魔力の流れも問題ないので、後数時間もすれば眼を覚ますだろう。


逆に言えば、後数時間は眼を覚まさないだろうと言うことだ。


恐らくだが、それが分かっていてトキは外に出て行ったのだろう。



シン―とした宿の一室には、わたしとユエ、眠ったお婆さんが取り残された。


そして、こうして二人になった時、必ずと言って良い程、沈黙を破って初めに話し始めるのはユエだ。



「ねえソウ?」


「……ん」



今回も、その例に洩れず、ユエが初めに語りだした。



「トキの思いつきにも困ったものよねぇ」


「……そう?」


「そうよ、って、ソウはそう思わないの?」



どうやら、今回のお婆さんを、理由もなく助けに動いた件について言っているようだ。



「しかもふらっと出ていっちゃうし」



ユエは不満をこぼしているが、トキがふらりと単独行動するのは、今回に限った事ではなく、ここに来る道中でもよくあったことだ。


本人の話では、別の傭兵との連絡だったり、色々な商人とのコネ作りだったりするらしいが、ユエの話だとそれも怪しいものらしい。


そして、今回に限らず、トキが思わず動いてしまった後は、大抵ユエはこうしてわたしに愚痴をこぼしてくる。



「……体を大事にして欲しい、とは思うけど」


「思いつきの行動自体は別に良いって?」


「……そのおかげで、わたしは此処に居るから」


「まあ、確かにね」



私の件もそうだしー。と後ろに倒れこむユエ。



……そうだ。


わたし達も、トキの優しさにつけ込んで同行しているに過ぎない。


行き場のないわたしはトキの元を、そしてユエは何かの目的ゆえに。



そんな風にユエに言うと、決まってこう返してくれる。



「そんなもん、つけ込まれる弱みを持つあれ(トキ)が悪いのよ。だいたい本当に嫌だったら、適当にこじつけてでも逃げるでしょう?あれは」


「……どうだろう?」



あまり、実際にトキが逃げているところを見た事がない。


だから何時もトキが言っている、危なきゃ逃げるって言うのが、ホントかどうか怪しいとすら思っている。


……嘘をついていないと言うのは分かるのだけれど。



「実際、逃げるのよ。あいつは」


「……」



しかし、ユエはいつもはっきりと、そう告げる。


それはまるで、見てきたかのような、そんな確信を持った眼つきだ。



「……前から思っていたんだけど」


「何かしら」


「……トキとユエって、昔から面識があるの?」


「面識と言うか……」



ユエは、なにやら考える()()をする。



「そうね、ソウになら言っても良いか。私はね、トキの知りあいの友人なの」


「……?」


「つまり、私は一方的にあいつを知っているから、面識、というのは少し語弊があるわね」


「……ふうん」



――嘘だ。


それだけではあの息の合いようは答えられない。


戦闘時、トキとユエは長年連れ添ったかのような息のあった動きを見せる時がある。


あの動きは、わたしとトキの様な一朝一夕で手に入るようなものじゃない。


もっと、何か根本的な何かがあるはずなのだ。



「…ソウ?」


「……何でもない」



それが分かっていても、わたしには指摘する事はできない。


『真実の探求』に反応がないから、嘘をついているわけでもないのだ。


いや、正確に言えば反応はあった。しかしそれは恐らく意味のないところだ。


今のわたしには、それらをトキやユエに追求できる会話力が、ない。



「しっかし、ソウって」


「……?」


「トキの事になると眼の色を変えて話すわよね?……惚れてるの?」


「……惚れ?」



ユエがなにやらニヤニヤとした顔で聞いてくるが、”惚れる”とはなんだろう?


いや、その”惚れる”と言うのが、人間や魔族が異性間に対して子を成したいと言う、所謂生存本能だというのは本で読んで知っている。


しかしだからこそ、わたしが”惚れる”と言う感情を持つ事はないだろう。


”恋”とは自分の種を残したい、と言う寿命と言う概念が在るゆえの生存戦略であり、”寿命と言う概念の無い種”には通用しない。


もちろん、と言っては何だが、”そういう行為”自体は出来るはずだが、無くても良いというレベルまで希薄なのだ。



そうユエに伝えると、ユエは明から様につまらなそうな顔をした。



「なーんだ。じゃあソウには、惚れた張ったっていう話は無いのね」


「……多分」


「……むむむ、それなら少しは目は在るのかしら?いや、これに勝てる気は……」


「……ユエ?」



なにやらぶつぶつと嘆きながら、自分の世界に入り込んでしまうユエ。


こうなるともうユエは、話かけても何も反応を示してくれなくなる。



ユエが自分からこちらに戻ってくるまで、と、わたしはぼんやりと外を眺めはじめた。





「ただいまー」


「……お帰り」



気づけばずいぶんと時間が経っていたようで、どこかへと出かけていたトキが戻ってきていた。


どうやら、酒場で何事かの頼み事を受けてきたらしい。


報酬としてわたしの装備とその他もろもろだとか。



「遅いと思ったらそんな事をしていたのね」


「いやー、なかなか有意義だったよ」



トキの話では、初めの報酬の3倍近くまで報酬を吊り上げてきたらしい。


トキに話を振ったと言う酒場のマスターも運がないと言うか、なんというか。



「……マスターさん、可愛そう」


「平気だよ。多分、あのマスターだけの依頼じゃないし」


「……どういうこと?」


「多分、この婆さんの店を利用していた酒場なんかの飲食店が、有志を募って依頼して来たものだろうってこと」



どういうことだろう?と、ゆっくりとトキの話から抜き取れる情報を噛み砕いて考える。



「……報酬が、用意されていた?」


「そう、一つは前もって用意されていた報酬の量が多すぎる事。結果的に3倍まで引き出したが、元の報酬だって此処最近で個人が集めたモノにしちゃあ多すぎる」


「……まだあるの?」


「もう一つは情報の伝達速度。いくら魔法だっていっても、腐るほど居る傭兵の中から、ふらふらしていた個人を特定なんて早々出来る事じゃない」



恐らく前もって、この町に来る有名所の傭兵なんかをリストに出して探していたんだろう。とあくびをするトキ。


……よく話を聞いて、考えて漸く分かるその理屈を、その会話中に理解してその対処を考える。


言葉にするだけならば簡単だが、それを為すにはどれほどの経験を積めば良いのだろう?


わたしには、自分がどれほど人との会話に慣れても、トキのように振舞っている自分を想像することが出来ない。



「……ユエも、今の話で気づいてた?」


「へ?あ、当たり前じゃない。傭兵なんてやってるおかげで、利用される機会なんて掃いて捨てるほどあるもの」


「……むぅ」



こうして話すだけで気づいていける辺り、わたしとユエやトキの実力の差に気づかされる。


確かに、数年も旅をしているトキやユエと、昨日今日旅を始めたわたしでは、その実力が違うのは当たり前とも言える。


だが、それでは駄目なのだ。


ただでさえ、現状何に置いても足を引っ張っているのだから、一刻も早く、せめて足を引っ張らない程度には成長しなくては。



ぐるぐると、頭の中で焦る気持ちが渦巻いて、難しい顔をしていたのか、トキが苦笑しつつ、わたしの頭に手を載せる。



「……んぅ、なに?」


「……いんや、あまり考えすぎるなよ」


「……ん」



ああ、また迷惑を掛けて、と思いつつも、不思議なモノだ、と納得してしまう。


頭をクシャリと撫でられるだけで、もやもやした気持ちはどこかへと抜けていってしまう。


トキとユエがまた何か言い合っているが、内容が頭に入ってこないくらいに頭の中がすっきりと透き通っていく。


そう、要は、わたしは、この人の力に為れればと思っている。


その為に、まずは隣に並べる程度には、力をつけなくてはいけない。今は、それだけで良い。



わたしの頭から手が離れ、気づけばユエが隅っこの方で体育座りをしている。


まあ、いつもどおりトキに言い負かされたんだろう、と勝手に納得してトキの方を向く。



「さて、じゃあこれからの事だけど」


「……ん」


「とりあえず今日はもう寝るとして、明日はお婆さんが起きてると信じて、その話を聞くところからはじめようか」


「……起きて無かったら?」


「『目覚めの草』を口に突っ込む」



……あの味は老人に急に与えても良い物なのだろうか?


逆に起きなくなるのでは?と、わたしは不安になる。



しかし、そんな事は気にしないとばかりに、グランドピークの夜はゆっくりと更けていった。




作者 「ハイどうも皆さんこんばんわー!あとがき対談のお時間です!」

トキ  「ばんわー、よろしくー、トキです」

作者 「ということで、書きたい所まで全然行かなかったです!」

トキ  「おい」

作者 「具体的にいうと進行予定達成度50%くらいですね!」

トキ  「その残り達成度は来週と?」

作者 「その通りです!名の出来週までソウ編は続く予定となります」

トキ  「まあ、来週の話より今は今週の話だな」

作者 「はい、今週はソウ編中との事で、漸く時の所に追いつきましたね」

トキ  「俺が酒場にいって居た間の話が主なところだな」

作者 「今回会話ばかりで特に解説すべき所はないんですよねー」

トキ  「うん?なにやらフラグが沢山見え隠れしていたけど」

作者 「ええ、今回は、というかこの章自体がフラグ建て回って行っても過言ではないので」

トキ  「……ちゃんと回収するんだよな?」

作者 「覚えている分は!回収しますよ」

トキ  「全部メモって置けよ!?」

作者 「いやー、わりかし寝ぼけて書いていることも多いんで」

トキ  「一応見直ししてるんだよな?」

作者 「しょ、章が終わったら」

トキ  「おい」

作者 「一応見直しはしてますよ?ぎりぎりな事が多くて不十分になっているだけで」

トキ  「速めに書けよ!?」

作者 「いやー、ちょっと新シリーズ創ってまして」

トキ  「あちこち滞り気味なのに何やってんのお前!?」

作者 「いや、そちらは一章分書き終えたら上げていく形で」

トキ  「……一生後との間が半端ない事になりそうな」

作者 「ま、もう数打てば当たるっていうのを狙っていきますので」

トキ  「精度の良い銃はないのか!?」

作者 「ハンドガン乱射みたいな感じです」

トキ  「連射力もそこまで高くない!?」

作者 「ということで、次回予告ー」

トキ  「でもこの続きだよな」

作者 「ええ、ソウの回がもうちょっとだけ続くんですじゃよ」

トキ  「どんな感じ?」

作者 「夜に抜け出すトキのスニーキングミッションとなります」

トキ  「来週の俺気づけー!?」

作者 「ログインするエル、フェードアウトするユエ」

トキ  「やっぱりあえないのか」

作者 「そこまで行くかしりませんけどね」

トキ  「まで、ソウ回は次で終わるんだよな?」

作者 「さて、次回も終わる事のない夢の中でお会いしましょう!」

トキ  「え、急に部千切りやがった!?」

作者 「あはは、後数分で出ないとー」

トキ  「だから何で何時もそんなぎりぎり!?」

作者 「……坊やだからさ」

トキ  「……あーはい、さっさと行け」

作者 「突っ込んでよ!?」

トキ  「突っ込みまちかよ!?」


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