第31話
何事もなく夜が明け、次の日の朝。
ぼちぼちこの町の店が開くだろうと言う時間帯くらいに、俺達は宿を出た。
目的としてはソウ用の大きな小袋探しと、ついでに昨日聞いた香味料屋といったところだ。
とりあえず香味料屋のほうへ向かいつつ、辺りの露天でそれらしいものがないかを探す。
「ないわねえ」
「ないなあ」
「……ない」
大きな小袋自体は貴重ではあるけど、現在も細々とはいえ創られていると聞く。
ならば探せばちらほらとはあるだろう、とか思っていたんだけど。
昨日から探し回っているが見つかる気がしない。
「いや、こんなに無い物なのね。知らなかったわ」
「そうだな。もう少し簡単に見つかると思ったんだが」
「……二人のは、どうしたの?」
「私は師匠の倉庫に埋もれていたのを勝手に」
「おい」
「もとい、師匠から快く譲って貰ったのよ」
何故そんなにさらっと笑顔で嘘を言えるのだろう。
完全にそれ事後承諾って言うか、その師匠気づいてるのか?
「……トキは?」
「同じく、師匠に買って貰った」
「へえ、じゃあ売ってはいたのね」
「ああ、買ったのはそこのパン一個と同じ値段だけどな」
そう言って、屋台に並んだかちかちの黒パンを指差す。
「……あんたの値切りに対する姿勢の根源を見た気がする」
「……そんなに、安いものなの?」
普通なら馬車一式と同じ程度の値段である。
さっきのパンと比べるなら、1000倍程度だろうか。
そう説明すると、ソウまで俺をじと目で見てくる。
失敬な、さすがに俺はそこまで阿漕な事はしないよ。
「でもそうね、あれ自体がスペースの取らない倉庫みたいなものだから、この町だと競争率高いかも知れないわね」
「うーん、だからこそ溢れ返ってると思ったんだけど」
その場所に根を下ろして商売するならいいが、この街の商人には月一程度の頻度で移動を迫られる。
重量がそのまま袋に加算されてしまう大きな小袋は、移動の際に取捨選択を迫られてしまうのだ。
それ故、町の隅の方にいけば、この場所から離れる商人達が売りに出すものが溢れている。
俺はそこに期待をしていたって訳だ。
「もう暫くしたら、この町の後ろ側に足を運んで見てもいいかもしれないな」
「2・3週間したらこの辺が町の後ろ側になるわよ」
「確かにそうだが、そこまで長く居る気もないしなぁ」
この街は常に移動しているため、俺の目的の場所からは自動的に外される。
と言うか俺は既に一度この町を訪れているのだ。
しっかりと準備だけ整えて、早々に次の場所に行きたいところだ。
昨夜教えて貰った香味料屋『Maka Star』は、グランドピークでは珍しくきっちりと棚に整理された、お店然とした店だった。
グランドピークの店は全体的に、その町の特性のため屋台や露店形式が多い。
しかしこの店は、軽そうとは言え木製の棚を使ってスペースぎりぎりに枠組みを造り、綺麗に香味料が整頓されて置かれている。
確かに訪れる客側としては、その辺の露店よりは印象はいいんだろうが……違和感がある。
「……トキ?」
「うん?」
「……何か、考え事?」
「ああ、なんでもないよ」
どうやら一瞬立ち止まってしまっていたようだ。
後ろからソウに急かされ、ユエに続いて俺も店に入り込む。
中に入り込むと整頓された感じはさらに増し、軽く密閉されたその空間には香味料の香りが充満している。
……だが、この香りは。
案の定、先に店に入ったユエが顔を少し顰めさせてこちらを向く。
「うーん、なんか鼻がやられそうね。ここ」
「香味料の店だからなぁ」
しかも、恐らくこの店、”意図的に”空気が篭るようにしている。
ソウもその事に気がついているのか、不思議そうに首を捻っている。
と、そんな事を考えていると、ニコニコと営業スマイルを貼り付けた男が近づいてきた。
「いらっしゃいませ、お客様はどのようなものをお探しでしょうか?」
「香味料全般を」
「飲食店用でしょうか?それでしたらこちらの棚の物が現在お求め安くなっておりまして、こちらの商品と一緒に購入いただくと」
「いや、旅用」
「携帯食用ですか?それでしたらそちらの棚に、比較的お求め安いものがございます。そちらの商品ですと、共にこちらの商品を試供品として」
あー、捕まると面倒くさいタイプの店員だ。
只管に喋り続けるその店員に、既にユエとソウは興味を無くして適当に商品を見回っている。
二人にはこちらを助けてくれる気は皆無のようだ。
とりあえずこの店員をどうにかするか、と口を開かけると、カウンターの奥が何やら騒がしい。
「―何ぁ度も言ってるだろう、そぉのやりかたでは」
「こちらも何度も言っているだろう!誰か、この婆さんを摘み出せ!」
「なぁにをする――ひぃゃぁぁああ!?」
なにやら聞き覚えのある声と危なげな会話。
店員は、そちらに一瞬眼を向けると、その事をおくびにも出さず営業スマイル。
「申し訳ありません、奥のほうが些か騒がしいようですが」
「二人とも、出るぞ」
「ええ、分かったわ」
「……ん」
「お、お客様?」
店員がなにやら騒がしいけど、無視。
奥、と言うよりもう既に外に出て居るだろう叫び声を頼りに、その方向へと向かう。
別段走る事も無く、叫び声を頼りについていくと、段々と人気のない方向に向かっている。
「……追いつかないの?」
「あーうん、追いつかないの」
「……なんで?」
「どうなるかも分からないしなぁ」
「……なんで追いかけてるの?」
「……はて?」
何でだろう?
正直、体が勝手に動いたとしか言いようがないんだけど。
と、そんな事をしている間にもいよいよ人通りが少ない場所に出る。
グランドピークという町には、ある意味死角と言うものがある。
商人のみの町、と言うものの、馬車持ちの傭兵団や、研究者、魔法使いなんてものも幾らか辿り着く。
そういった奴らの馬車は町の一定区画に集められており、傭兵なんかは昼間、大抵商人達の居る区画に集まる。
研究者や魔法使いなどは研究に没頭、例え何か聞こえても面倒事を嫌って出てこない。
つまり、昼間の商人区画以外と言うのは人の居ないゴーストタウンと化しているのだ。
そんな人通りのない場所に入って、何をするつもりなんだか。
「―――っ!」
「――っ!?――っ!」
案の定聞こえてきた不穏な音に、身を引き締める。
「…はぁ、ソウ、魔法準備」
「……ん」
ユエは、いいか。既に戦闘準備完了してるし。
大分しょうがないなーって顔はしているが。
気を取り直して、適当な布で口元を隠しつつ、声がするほうへ走り出す。
路地裏のようになっている狭い道を覗き込めば、蹲っているウメ婆さんと、屈強そうな……恐らく傭兵二人。
どちらも髪の色が濃い赤で、炎系の魔族の血を引いているように見える。
ならば注意すべきは炎の魔法。
三人がこちらを認識する前に、なるべく足音を立てずにトップスピードへ。
傭兵がこちらに気づく、が、既に残り5m、射程範囲だ。
「――な、なんだ貴様!?」
「悪いが、教える必要もないな――」
抜き打ちの峰打ちで、一人の首もとに刀を叩きつける。
叩きつけられた方はそのまま倒れる。
「この!」
「おっと……っと?」
もう一人の方はこちらに向けて魔法を放とうとして―――白目をむいて泡を拭いて倒れた。
相手の手に向けて構えた刀を下ろし、ソウとユエに眼を向ければ、何かしらの魔法を放ったような体勢だ。
……もしかして二人がかりで一人に魔法を叩きつけたのか?
白目をむいた傭兵をみて、ご愁傷様、と手を合わせる。
「さて、婆さんは……ありゃ、気絶してるな」
「どうするのよ、助けるだけ助けて放置するわけじゃないんでしょ?」
「……どうしようか」
「ノープランかコイツ!?」
そうだな……とりあえずは安全そうな場所に連れて行くとしよう。
……止めろユエ、そんな眼で見るんじゃない。
作者 「あー、あー、ハイ皆さんこんばんわ。あとがき対談のお時間です!」
トキ 「今回もよろしくー」
作者 「ちゃんと一週ごとですよ!」
トキ 「あーはいはい」
作者 「なにやらおざなりすぎる反応ですが、気にしません」
トキ 「あ、流しちゃうのか」
作者 「さ、と言う事で本日のお話紹介からいきましょう」
トキ 「まあ、いいけど」
作者 「今回のお話は……進まないですねぇお話」
トキ 「いまさら過ぎるだろ」
作者 「一応久々の戦闘パートです」
トキ 「不意打ちで一瞬だけどな」
作者 「完全に不意打ちプラスちゃっかり覆面で身元ばれしないようにしてます」
トキ 「自分だと分かられると復讐が怖いだろっ!」
作者 「理由がちっちゃい!?」
トキ 「うっさいな!不意打ち喰らったら俺はあっという間に死ぬぞ!?」
作者 「何でそんなところだけすごい自信!?」
トキ 「俺はノーマル人!不意打ちはするけどされると防御力ないから一発なの」
作者 「……さて、今回はある意味グランドピーク編のスタートです」
トキ 「言い様によっては前回から始まっているけどな」
作者 「それについてはいいっこ無しです」
トキ 「後は……結局あの香味料の店は微妙だな」
作者 「はい?」
トキ 「胡散臭いって言うのも分かる気はする」
作者 「それは此処じゃなくて作中で言ってください」
トキ 「おい」
作者 「ああ、ああいったぺらぺらと話すタイプの人はわたしは苦手なのですが」
トキ 「ああ、お前が書く話って基本台詞短いもんな」
作者 「長く台詞を書くとくたびれるのです」
トキ 「小説書く人とは思えない台詞である」
作者 「今だって既に朝4:30ですよ?」
トキ 「ああ、書く時間がおかしいんだな」
作者 「そしてまた来週8時出なので」
トキ 「だから寝ろぉ!?」
作者 「ちなみに俺物語を見ながらここ書いています」
トキ 「集中すら出来てないし」
作者 「ちなみにその前緋弾のアリアアニメを全輪見てました」
トキ 「小説書けよ……」
作者 「やだなぁ、書きながらですよ」
トキ 「……体調崩しそうだ」
作者 「そしたら休みます」
トキ 「……なんていうか」
作者 「わたしは趣味に生きるのです」
トキ 「……もうだめだこいつ」
作者 「ということで、話を戻しますよ」
トキ 「ずれたのは誰の所為だ!?」
作者 「なにか疑問点あります?」
トキ 「……グランドピークのゴーストタウンについて?」
作者 「作中で説明している通りですが、補足するとすれば、その範囲は本当に狭いって事ですね」
トキ 「ああ、商人に紛れてついた人達の集められたところだからか」
作者 「はい、そんなに多くありません。商隊につき2・3組の傭兵の上に馬車持ちはさらに5分の1程度です」
トキ 「魔法使いとかは?」
作者 「大体3商隊ごとに一組あるかないかですね」
トキ 「そうなると6商隊で5台程度か。商隊約10台として」
作者 「はい、そんなめんどくさい計算はいいです」
トキ 「めんどくさいって!?」
作者 「この時間にその計算させられる身にもなってください」
トキ 「おい」
作者 「さて、今回はこれ以上は面倒なので次回の予定に入りましょう」
トキ 「おい」
作者 「次回は、ウメ婆さんのお話とか……そのへんです」
トキ 「おい、そろそろお前考える事が面倒くさくなってるだろ」
作者 「さて、皆さん次回も終わる事のない夢なのかでお会いしましょう!」
トキ 「本当に面倒くさいらしいなっ!?お疲れ様でした!」
作者 「や、やばいです本当に何時に寝るんだわたし」
トキ 「5時廻ったな」
作者 「でもまだまだ眠くないと言う」
トキ 「おい」
作者 「でもコーヒー飲みすぎで気持ち悪いです」
トキ 「おい」
作者 「次話、書きましょうか」
トキ 「寝ろよぉ!?」




