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壊れた世界の旅人語り  作者: 夜天夜空
第2章――グランドピークでの顛末
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第30話

―――それは全ての終わりの切欠だったのかもしれない。


そんな切欠がなくとも、いつかはそれが起こりえたのかもしれない。


if、なんての話に意味なんてなくて、自分が”そう”思ったって事は多分”そう”だったんだろう。



多分、俺は今、夢を見ている。


いくつかの情景が思い浮かんでは消え、心の奥底に仕舞われて、思い出せなくなる。


触れれば消えてしまいそうな、まるで気泡のようなそれは、なんとも不思議な光景で、現実味がなく、これが夢なのだと思い知らされる。


そして浮かんだ情景が全て消えるわけでもなく、その内のいくつかは、ぼんやりと残り、その時の思いをフラッシュバックさせる。


これは、残った思いのほんの一握り。




――その場所は、どうやら何かの研究室のようだった。


いくつかの瓶に入った薬品や、怪しげな魔法陣、遮光カーテンで閉め切られた部屋は、薄暗く、気味が悪い。


そんな部屋で、若い男女がなにやら話し合っている。


男女の顔は良く見えないが、声からはいつも見る夢の、恐らく本当の両親である事が伺える。


俺は、扉の影から伺っていたのか、視界の半分が暗い。



「――かなかいい結果だな」


「そうね、成功すれば、この場所を」


「ああ……だが、真逆あの衝動買いの壷がヒントになるとは」


「ふふふ、私の感も捨てたものじゃないわよねっ」


「……衝動買い分の小遣いは戻さんぞ」


「えー?そんな事言わずにさー?」


「……扉の向こうで――が見ているぞ」


「うえ!?」



甘えたような声を出す女性は、びくりとしてこちらを振り返る。


どうやら男性のほうにはずっと気づかれていたようだ。


子供の俺が、観念して扉の向こうへ、と言ったところで場面が切り替わる。




先ほどとはうって変わり、明るく広い場所。


木々が覆い茂り、ぽっかりと開いたその広間には、見覚えのある家がぽつんと建っている。


その家の前で、両親がなにやら術式を発動させている。


魔方陣を見れば、その中心にあった置物が消えていくところだった。



「――いつは……」


「また、とんでもないわね」


「ああ、だが」


「ええ、目的とは違う」



なにやら落ち込んだ雰囲気。


地面に書かれた魔方陣は、なにがしかの効果を発揮しているようだが、子供である自分にはなんだか分からない。


だが、なんとなく両親が悲しんでいるのを察した自分が、二人に駆け寄ろうとしたところで、またも場面が切り替わる。




「――ねえ、***」


「いや、そんなつもりじゃなかったんだが」


「完成、しちゃったわね」


「あ、あはは」


「笑い事じゃないレベルの話なんだけど!?」


「しっかし、目的の物ではないほうが先に完成してしまったな」


「うう、これ、広めたらとんでもない事になるわね」



場所は初めの研究室。


男女は”消えたはず”の置き物を見て、何やら困ったように笑っている。


出来てしまった技術をもてあましたような、そんな会話。


俺は首を傾げつつ、部屋の中に、といったところで突然視界にノイズが走る。


耳障りな音と、目障りなノイズが段々と大きくなっていき、視界を埋め尽くしていく。



どうやら、今回はこの程度でおしまいのようだ。



そう、考えた途端、視界はノイズに埋め尽くされ、意識が途切れた。










「―――っは!?」


「うわっ!?急に起きるんじゃないわよ!?」



飛び起きた俺の目の前には驚いたようなユエの顔。


どうやらぶつかりそうになったようで、そのままユエは後ろに転がっていった。



気にせずに辺りをきょろきょろと見回せば、そこは宿の一室だ。


どうやら寝かしてくれていたようで、下には申し訳程度の布がひかれている。


隣に腰を下ろしていたソウが心配そうに覗きこんでくる。



「……大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ、問題ない」



腕をぐるぐると回して調子を確認するが、特に問題はなさそうである。


むしろ眠っていた所為で、調子がいいかもしれない。



「……よかった」


「悪い、心配掛けたな」


「本当よ。急に倒れるんだから、此処まで連れてくるの大変だったんだから」


「助かったよ」


「一つ貸しだからね」


「りょーかい」



一体後々何を要求されるやら。


俺が戦々恐々としていると、なにやらソウが不満げ。



「ああ、ソウにも何かお礼を」


「……ユエ、何もしてない、よ?」


「あ、こら、ソウ!?」


「……トキは、わたしが此処まで運んだの」


「……ほう?」


「し、仕方ないじゃない。ソウ、見かけによらず力あるんだもの」



じーっとユエを睨み付けると、ふい、と目を逸らした。


それを持ってユエが何もしていないことを確信する。



危ない危ない、騙されるところだった。


まったく、油断も隙もあったもんじゃない。



「借りは無しだ」


「ちえー」


「ソウには後でお礼するから、何かあったら言ってくれ」


「……別に、いらないよ?」


「まあ、今すぐでなくても、思いついたらでいいよ」



何かして貰ったら、何かして返す、その辺の貸し借りはきっちりしたい。


その何かが、良い意味でも悪い意味でも必要なことだ。



と、そんな事を考えていると、俺のお腹がぐう、と鳴り出した。


そんなに時間が経ったのかと、窓の外を見ればもう真っ暗である。



「今、何時ぐらいだ?」


「大体21時位ね。私達は食事は済ませてるわよ」



1日は24時間であり、今が21時と言う事は、後3時間程度で日付が変わる夜半と言う事だ。


このくらいの時間なら、まだ酒場などの飲食店は開いているだろう。



「ちなみに何を食べたんだ?」


「屋台で買った串やら麺類やらって所ね。ソウが貴方を運んでる間に、私が買ってきてここで食べてたわ」


「ああ、通りで」


「あ、やっぱり匂い残ってる?」



起きた時から気にはなって居たが、部屋の中に美味しそうな香りが残っている。


先ほどの腹の虫は、その香りに釣られて鳴ったのだろう。


じと目でユエとソウを見ると、ソウが首をかしげて一言。



「……残ってない、よ?」


「期待してないから大丈夫だ」



食い意地張ったソウが居る時点で、食事が残ると言うことはないだろう。


そんな事は暫く一緒に生活して居れば嫌でも分かる。


だが、そう言うと不満げな声が帰ってくる。



「……むう」


「さて、じゃあ適当に酒場にでもいってくるよ」


「それなら私達は体でも清めてましょうか。ソウ」


「……ん」



暫く帰ってくるな、と言うことらしい。


まあいいか、と立ち上がり、財布を確認してから俺は宿を出た。







適当な酒場『ZacX BAR』で、軽めの定食を頼み、カウンターでのんびりと水の入ったグラスを傾けた。


待っている間、ふと思いついて本日購入した香味料のボトルを取り出す。


そしてそれぞれちょっとづつ舐めて味を見る。



「へえ、いい味」



加工する人の技術によってその味の出方などが変わるのが常だが、今回はその確認をし忘れていたのだ。


香りで大体高品質なのは分かっていたが、これは思った以上に高品質である。


置いてあった残りで店じまい、とか言っていたので、もう一度行って買い占めてしまってもいいかもしれない。


と、そんな風に味見をしていくと、酒場のマスターが覗きこんできた。


客も俺とテーブルのほうに一組程度で、暇なのだろう。



「へえ、兄さん、そいつぁウメ婆のところで買ったのかい?」


「ウメ婆?」


「今はどこだったか、確か此処から西側に3本位道を行ったとこで商売してる、香味料屋の変わったばあさんだよ」


「ああ、多分それだ」



昼間歩いた道は、なんとなくだがその辺だった気がする。


何分、ごちゃごちゃして似たようなところが多く、いまいち自信はないけど。



「有名なのか?」


「有名、というか、この町で長く商売してる飲食店で、あのばあさんを知らないならそいつぁモグリさ」


「品質的な意味で?」


「ソイツもあるが、あのばあさんホントに長い事此処で商売してるのさ。それでもって品数もある」


「ああ、そういうこと」



この街は少しずつとはいえ動いている。


それゆえに飲食店をする際、必ずある一定品質の食料品の店、と言うのは命綱と言ってもいいのだろう。


あの婆さんが顔は広い、と言っていたのはその辺が関係してくるのだろう。



「だけど昼間聞いた話だと」


「ああ、店じまいするらしい。まあ理由が理由だけにしゃぁないと言えばそうなんだが、やるせないなぁ」


「新しい所を探すのか?」


「一応、次の候補は決めてあるが、味が多少変わるからなぁ。不安っちゃ不安だな」



長い事同じ味でやってきた店が味が変わって客がこない、なんて話はよく聞く話だ。


マスターはその辺を懸念しているのだろう。



「ちなみに、その店ってどこにあるんだ?」


「此処からだと……北に通路2本の辺りだな。わりと新しいが、長く此処に留まるって話だ」


「へえ」


「いくのか?」


「まあ、見るだけ見てみようかと」


「行くなら気をつけな、なんと言うか、微妙に胡散臭いヤツだ」


「それでもそこが候補なのか」


「長くやるのなら、って感じだからな。この町の飲食店は結構そこを利用しようとしているらしい」


「ふうん」



香味料を扱う店自体は他にもあるのだろう。


だが、常にある店と言うのは限られてくる。


香草自体を取りに行く必要があるためである。


ウメ婆さんの店は、旦那さんが拾いに行って、婆さんが加工売買と言うスタンスだったのだろう。


と、そんな会話をしていると、食事が出来たようだ。



「へい、タマナー定食お待ち!」


「ありがとう」



お皿にどっさりと緑の葉が盛り付けられた定食が眼の前に出てくる。


タマナーと言うのは葉っぱが沢山丸まったような形をした野菜で、サラダなんかでよく食べるものである。


本日の夜食はそんなヘルシーな感じの定食である。



「ああ、そう言えばマスター、この辺で大きな小袋を売ってる店を知らないか?」


「うん?昼間から常に歩き回っているわけじゃないからなぁ、オークションにでも行けばいいんじゃないか?」


「あー、やっぱそうなるよなぁ」



こうして、酒場のマスターと話しこみつつ、グランドピーク1日目の夜は更けていった。




作者 「はいどうも皆さんこんばんわ。後書き対談のお時間です」

トキ  「本日もどうぞよろしくー」

作者 「という事で、また一週開き更新です」

トキ  「どうせそのうちまた月一更新になるんだろ?」

作者 「前回は、旅行帰りで実家に居ました。PCも持っていってなかったので、何も出来ない状態でした」

トキ  「ハイハイいいわけー」

作者 「い、いやホントですよ?」

トキ  「じゃあ次回更新は?」

作者 「来週ですとも」

トキ  「今週勤務は?」

作者 「……一謹ですとも」

トキ  「また再来週だな」

作者 「来週更新しますってば!?」

トキ  「ほら、下らんこと話してないで、今回のお話紹介いくよ」

作者 「そうですね。くだらない事はおいて起きましょう」

トキ  「お前がくだらないとか言うなよ!?」

作者 「と言う事で、今回は会話回となります」

トキ  「最近いつもじゃね?」

作者 「後はトキの過去話が半分くらいですかね」

トキ  「書かれた場面については思い出した、って事でいいのか?」

作者 「そうですね。あの3シーンについてはトキの中にしっかり残りました。初めに浮かんでは消えた気泡については覚えて居ません」

トキ  「と言うか思い出す度に俺は倒れるのか?」

作者 「その量によりますね。今回思い出したのは結構な量だったので脳内がオーバーフロー起こしました」

トキ  「ちなみに今までは?」

作者 「初めの時以外は、頭痛程度で済んで居ます。その所為で慢性的な頭痛持ちとも言えます」

トキ  「うげぇ」

作者 「ちなみに、今回出た記憶は、ある意味重要な手がかりと成るでしょう」

トキ  「って、言われてもなぁ。なにがなにやら」

作者 「そのうち分かりますよ」

トキ  「ふうん、ならもう半分、と言うかウメ婆さんだっけ?何でまたでてきたんだ?」

作者 「このグランドピーク編における、ある意味主人公なので」

トキ  「え」

作者 「もう、このグランドピークで一章分書く事に決めました」

トキ  「おい」

作者 「だってもう12話ですよ?二章入って。二章の予定の5分の1位の進行速度ですよ!?」

トキ  「……まさか」

作者 「はい、なので消す予定だったエピソード突っ込んで、2章として仕立てます」

トキ  「ちなみに、そうすると今は起承転結どのへん?」

作者 「承……ですかね?」

トキ  「もう半分続くと」

作者 「後は此処から急転直下させるので」

トキ  「直下はしないで!?」

作者 「此処からはもう本当に何もないので、別の事に嵌ったりしない限りはペースアップします」

トキ  「(絶対嵌るフラグd」

作者 「さあ、他に疑問はありますか?」

トキ  「最後に出てきたタマナーって、説明聞く限りキャベ――」

作者 「ハイ、キャベツと思って貰って結構です。ちなみにこの世界のキャベツは、品種によっては魔力が回復します」

トキ  「きゃべつすげぇ!?」

作者 「エーテルキャベツといい、寒くて魔力の濃い所でしか育たない極悪な存在です」

トキ  「人間獲りに行けねぇ」

作者 「なのでとても貴重です」

トキ  「……」

作者 「ちなみに頼んだタマナー定食に使われているのは普通のタマナーです」

トキ  「まあ、そうだろうな」

作者 「本日はこの編で」

トキ  「そうだな、お疲れ様でした」

作者 「さて、それでは皆さん、次回も終わる事のない夢の中でお会いしましょう

トキ  「しましょうー!」

作者 「っと、明日起きれるかな?」

トキ  「ちなみに後何分?」

作者 「仕事まで後3時間です」

トキ  「睡眠は?」

作者 「起きてからそろそろ16時間になります」

トキ  「速くねろぉ!?」


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