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壊れた世界の旅人語り  作者: 夜天夜空
第2章――グランドピークでの顛末
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第29話



不毛な言い合いを続ける二人を尻目に辺りを見回すと、とある一軒が目に付いた。



「お、あれは」


「……なにかあったの?}



なにやらすがるような目線を感じるが、無視してその屋台に近づく。


独特の刺激のある香りを纏った、様々な小瓶の並ぶ小さな露天。


店主らしき老婆は、カウンターの奥でゴリゴリと乳鉢のようなもので何かを砕いている。


一見、怪しさ満点の変な店だが、その並べているものには見覚えがあった。



「此処は、香味料を扱ってるのか?」


「おぉや、そぉうさ、こぉこはワシが各地で集めた香味料を扱っておるよ」


「一人で各地を?」



並べてある香味料は、本当にこの大陸各地に生息する珍しいものばかり。


魔獣たちが蠢くこの世界で、この腰の曲がった老婆が各地を練り歩いていたとは、とてもじゃないが思えなかった。



「くっくっく、先ぇ日、ワぁシの護衛をしてくれとった相方にぃ先立たれてな。此ぉ処にあるのは知り合いの傭兵どぉもから譲り受けたモノじゃよ」


「そいつは悪かった」


「だぁがあんたは運がいい。此ぉ処にあるモノで、こぉの店は店仕舞いさ」


「店をたたむのか?」


「ワぁシ一人じゃぁ、商ぉ品がもう確保出来んのじゃ。スぅトックももう此処にあるモノだけじゃ」



此ぉ処にある一つ一つが、ワぁシの大切な思い出じゃ。と、ゆっくり商品を眺める老婆。



「……此処の物が売れたら、どうするの?」


「さぁて、今ぁまでの売り上げでゆっくり隠居じゃろう。幸ぉ運にもワシには知り合いが沢山居るでの」


「へえ、溜め込んでるんだな」



ソウが変な目で見て来るが、俺の感想は変わらない。


ただ隠居して生活をするには、この世界は生きにくすぎる。


ただ働きの食い扶持が、一人増える事を許容できる村が早々あるとは思えない。


そんな話があるのは、相当に余裕があるところか、お人よしが沢山居るところ、そしてもう一つの例外だけだ。


そんなことわかっとるとばかりにカラカラと笑う老婆。



「貯ぉ蓄が尽きたら、おぉとなしく魔獣のえさになると腹ぁくくってんだよ」


「笑えないわね」


「なぁんの、ワぁシの年代は大体そうやって生きてきた」



なんて事のないとばかりにこの老婆は言うが、これはほぼ事実だ。


動けなくなったものは、有事の際にホンの少しの時間稼ぎとして置いていかれる。


そうまでして、人々は此処まで生きてきた。


ある意味、この老人は、そういった世界の在り方を見続けている者と言える。



そんな感傷からだろうか、買い足そうと思っていた香味料を、此処で購入する事に決めたのは。



「婆さん、それとそれと、後コイツ。ああ、そこの二つも、これでいくらだ?」


「へぇえ、おぉ前さん料理人かね」


「料理人って訳ではないけど、香味料はあって困るもんじゃないからな」



どんな不味い食材でも、無理やり香味料で味付ければ何とか食べられるからな。


常に食料が足りるわけではないから、旅をするのに最低限の香味料は必須である。


それが俺は少し凝っているだけだ。



「へぇえ、香ぉ味料の大切さを知っているのかい」


「旅をしてると食べざるえない状況ってのは良く在る」



料理が出来なかったらどうなっていたかと、旅にでてから何度思った事か。


特に二人目の師匠の時。


あの時、自分で料理が出来なかったら、俺は今ここにいないだろう。



と、少し昔の事を思い返していると、老婆はカカカと小気味よく笑い出す。



「おぉ前さんはわかっているね。どぉれ、こぉいつをおまけしてやろう」


「小瓶?何かの香味料か?」



製品と一緒に渡されたのは、その他の香味料の瓶より一廻り大きな瓶。


蓋を開けて香りを嗅げば、様々なスパイス系の香味料の混ざった、食欲をそそる香りがする。


色々な香味料が混じり馴染み切っているのか、色は濃い黒色だ。


ホンの少し指先につけてなめて見ると、ひりひりとしたスパイスとまろやかな甘み、それらがうまい具合に混ざった味。



「美味い」


「そぉおだろうとも、秘ぃ蔵のスパイスさ。配ぃ合は自分で考えな」


「これ、売り物なのか?」


「いぃや、非ぃ売品さ。どぉうせもう終わりだからね。抱ぁえ込むのもおしまいさ」


「…ありがたくいただくよ」


「活ぅ用しておくれよ」



ふむ、一つ課題が出来てしまった。


この味を何とか再現して見たい。


と、考えてふと思う。



「これ、名前ってあるのか?」


「さぁて。とぉくに決まってはいないんだが、あぁの人が好きだったから、”ケィリースパイス”なんてどうだい?」


「ケリースパイス、ね」



上手く同じような味が出せたらそう名づける事にしよう。


そう思いつつ支払いを済ませ、俺達は露天を後にした。






香味料の露天を離れ、俺達は再び露天めぐりへと繰り出した。


先ほどユエの言葉にソウは嫌そうな感じではあったが、実は呉服を扱った露天と言うのはあまり見当たらない。


武器防具や魔法道具、食品など、服があっても実用一辺倒であり、デザインの凝った服と言うものが稀である。


ただ、あらゆる露天が集まる町と言うのは伊達ではなく、用途不明なよく分からない物は掃いて捨てるほどにある。


何かの部品らしき物を適当に組み合わせた置き物だったり、もしくはそのままジャンク品として売っていたり。


それらを売っている店主自身も、その使い方を理解していないのだ。


色々な廃墟で大崩壊以前の遺物を拾ってきて、貴重な物として売り売られをしているってわけだ


遺物には貴重なものは確かに多いが、同時に知識がなければ意味がないと言うことを物語っている。



そしてそれを体現したかのような露天が一つ。



「おっ、そこの女の子を侍らせた兄さん!面白い物がいっぱいだよ!見てってよ!」


「ほら、呼ばれてるわよ」


「うん?」



名指しで呼ばれた方向を見てみれば、そこにはごちゃごちゃとしたガラクタの積まれた、ビニールシートを敷いただけのスペース。


そしてその中心に胡坐をかいた若い男が一人。


金髪に染められた髪に刺青を入れた角、ちゃらちゃらとしたアクセサリーに細身の体と、いかにも貧弱そうな見た目である。


置いてある製品らしきものを観察してみれば、どこからか拾ってきたような何かの部品の欠片や、鉱石らしき物の欠片。


知っている者が見れば、それ単体では意味のない物だと分かるものばかりである。



「特にめぼしい物はないね」


「そんな事言わずにさ!ほら、たとえばこれなんてどうだ?この形、絶対何か重要な使い道があると思うんだ!」



そう言って見せてきたのは奇妙な形をした壷。


くねくねと曲がったその形は、確かに知らないものからしたら何かしらの意味があるように見えるかもしれない。



「そいつはただの水差しだ」


「うぇ!?」



その奇妙な形自体には意味はあるものの、今差し出された壷の形はそれを象って作ったただのデザイン花瓶である。


その形とは……クライン壷とか言ったか?中の面と外の面がどう辿っても繋がっているとか。



「へえ、良くそんなの知ってたわね」


「昔、教えて貰った事があってな」


「よくその人もこんな変な形を知ってたわね」


「ああ、だってあの人はっ……―――」




『―――ライン壷っていってね。中も外もずっと平面に繋がっているの』


『ほう、それはまた不思議な』


『おもしろーい!』


『とは言っても、これはただそれを象っただけの花瓶なんだけどね』


『へぇー』


『行商人が売ってたのをつい衝動買いしちゃった☆』


『おいおいリ―――』




「―――ぐぅ!?」



フラッシュバックしたのどかな情景。


大きな男女と……恐らくは小さな頃の自分。


女の人がクライン壷を俺と男の人に見せびらかしていた。


俺ははしゃいでいて、男の人は呆れて彼女を……と思い返したところで頭痛が走る。



「……大丈夫?」


「へ、いきだ」


「酷い顔してるわよ。一度帰ったほうがいいんじゃない?」



大丈夫だ。と言おうとして、頭痛と共に視界が暗くなっていく。



「……っ!?」


「え、ちょっとトキ!?」



不味い、と思うまもなく、意識が、ぷっつりと…途切れて―――。





作者 「ハイどうも皆さんこんばんわ。後書き対談のお時間です」

トキ  「ばんわー」

作者 「いやー、眠いです」

トキ  「はあ、何さ急に」

作者 「最近いくら寝ても寝たりないのです」

トキ  「なんと言うか、無呼吸症とかでそんな話が」

作者 「息はしてますよ!?」

トキ  「自分では分からないだろ」

作者 「……今度一晩中録音でもしてみましょう」

トキ  「おいおい、それはなんと言うか気持ち悪いな」

作者 「と言う事で、今回のお話です」

トキ  「唐突に話題変換!?」

作者 「今回は、香味料の露天と、前回言ったトキに苦しみを」

トキ  「おい!?というか苦しみとも違うだろあれ」

作者 「そうですね。ちょっとした記憶の欠片を取り戻したお話です」

トキ  「あのクライン壷とやらは何か今後にかかわってくるのか?」

作者 「なんといいますか、強化アイテム?」

トキ  「……ただの花瓶だよな?」

作者 「そうですよ?」

トキ  「……?」

作者 「きっかけみたいなものですよー」

トキ  「ふむ」

作者 「でもトキは買う前に気絶」

トキ  「おい、それって」

作者 「次回はいつ出てきますかね」

トキ  「そう言う話か」

作者 「そもそも次回まで無事かどうかも分かりません」

トキ  「起きたら急いで買いにいくんだ俺!?」

作者 「所詮は瓶、割れ物ですからねぇ」

トキ  「く、まあ確かに」

作者 「後は、香味料ってそんなに重要ですかね?」

トキ  「自分で書いておいてそれか」

作者 「いやー、わたしも相方に重要!で言われまして」

トキ  「……たとえば泥臭い動物を狩ったとする」

作者 「ふむふむ?」

トキ  「お前は調味料無しで焼くか煮るかして食べられるか?」

作者 「まあ最悪何も無ければ」

トキ  「そこにカレー粉があれば?」

作者 「た、確かに、その味があればいくらでも食べれそうです」

トキ  「歩き回ったりしないといけない旅の最中、食べれないと言うのはつらいよ」

作者 「な、納得してしまいました」

トキ  「……(ちょろい」

作者 「と言うのが相方とわたしの間にあった会話です」

トキ  「納得」

作者 「あと、あのケリースパイス、所謂カレーです」

トキ  「うん、なんとなく分かってた」

作者 「そのうちそれについてのお話も入るかもね」

トキ  「後はあのばあさんの喋り方?」

作者 「方言みたいなものです。分かりやすいですよね?」

トキ  「分かりやすいけど読み辛い」

作者 「自分で書いててそう思いましたけど」

トキ  「でも変えないんだ?」

作者 「分かりやすいじゃないですか」

トキ  「……」

作者 「と言う事で次回予告!」

トキ  「さくさくー」

作者 「次回はー、次回はー……うーん」

トキ  「おい」

作者 「とりあえずトキを起こしてー、素材売りにいったりー、買い物したりー?」

トキ  「……きまってないのか?」

作者 「そ、そんな事無いです……よ?」

トキ  「決まってないのか」

作者 「あ、ちなみに、来週はあげれないかも」

トキ  「またか?」

作者 「ちょいと家族旅行とやらにくっついていきます」

トキ  「旅行、好きだな?」

作者 「偶々重なってるだけですよ。普段はあまり動かないです」

トキ  「引きこもりと言うヤツダな!」

作者 「そこまでじゃないですよ!?」

トキ  「……怪しいものだが」

作者 「さ、今回もこの辺で」

トキ  「最近短いな」

作者 「それだけぎりぎりに書いていたと言うことです」

トキ  「……今回も?」

作者 「後30分後には出ねば」

トキ  「ぎりぎりすぎぃ!?」

作者 「さて、それでは皆さん、次回も終わる事のない夢の中でお会いしましょう」

トキ  「お疲れ様でしたー」

作者 「さて、次はどうしましょう」

トキ  「精々考えてくれ」

作者 「まあ、まだ一週間ありますしね!」

トキ  「それ思い浮かばないフラグ!?」


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