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壊れた世界の旅人語り  作者: 夜天夜空
第2章――グランドピークでの顛末
29/42

第28話


***





俺達は屋台から離れ、多少通路の開けた場所に出る。


何を話すにも、あの露天の前では狭すぎだった。




「しっかし、コイツどうするんだ?」




元値のほぼ十分の一に値切って買った、拳大の石を手のひらで弄ぶ。


元々は透き通った白だったと思われるその石は、赤黒い染みにより斑模様になっている。


しかもその赤黒い染みは前までの持ち主の血らしい。


曰く付きだ何だっていうのを信じているわけではないが、気分は悪い。



横を見ればユエも気持ち悪そうな顔をしている。



「……ん、精霊眼で視てみて」


「うん?」


「……あの人が言っていた、呪いの原因が分かる」


「ちょっと待ちなさい。精霊眼ってそんな物まで見えるの?」



ユエが慌ててソウに詰め寄る。


何をそこまで慌てて居るのか。


そしてソウもしれっと何でもないように答える。



「……呪いを、視る事の出来る眼は、ないわけじゃないけど、これはもっと別の原因」


「どれどれ」



ちょっと集中して、眼に魔力を集める。


時間があれば練習していたので、なかなか早く精霊眼が発動できるようになっている。



発動した瞬間、世界の色が変わり、あちらこちらに空を飛ぶ小さな人型―精霊が視える。


そして未だ自分の手のひらに乗った石にも一人。



「精霊?」


「……ん」



ちょこんと石に座って、こちらを眺める小さな闇色の精霊。


視えていると分かって居ないのか、長い髪を揺らして首をかしげている。


手を伸ばし、指先で頭を撫でると驚いたような顔をしてこちらを見上げてくる。



「本当。じゃあ今までこの精霊が悪さをしてたの?」


「いや、そんな感じには見えない」



撫でられることに抵抗せず、眼を細めているその姿には、持ち主を殺そうとする意思は感じられない。


むしろ優しそうな微笑を浮かべている。



「……ん、たぶんその娘は、術式安定のために括られているだけ」


「術式、って言うとやっぱり呪いなのか?」



よくよく眺めると、精霊の体を石から出た文字が帯状になって絡みついている。


指先で弄ろうにも細く薄く絡みついたそれは、下手に弄るとこんがらがりそうだ。


そもそも触れるのだろうか?この帯は。



「……下手に触ると危ない」


「先に言ってくれよ!?」


「当たり前でしょうに」



ぎょっとした俺が慌てて手を引くと、ユエが呆れたように嘆く。



「こんないかにもって感じのモノに触れば、巻き込まれるに決まってるでしょう」


「ぐ、でも」


「精霊に触れるのもナンセンスよ。曰く付だと知っての行動ではないわね」


「術式には気づかなかったんだよ」


「それこそその精霊の所為であると考えるべきでしょ」


「ぬ、ぬぬ」



おのれユエめ、こちらがミスしたと分かるや否や、急に攻めてきやがる。


なまじ自分でも考え無しだったと思うから言い返しにくい。



返答に詰まっていると、ソウが困ったように言ってくる。



「……えっと、とりあえず、その石を貸して」


「いいけど、どうするんだ?」



話がそれるならと、ソウに石を渡す。


ソウは術式があるとか、そんな事は気にした様子もなく石を受け取る。


そしてなにやら石に乗った精霊に向けて何かを嘆いた。



「……―――」


「うん?」


「なんて言ってるの?」


「いや、近くでも良く分からん」



すぐ近くに居るはずのソウの言葉が聞き取れない。


声が小さいとかではなく、言葉が分からないと言うわけでもなく。


その言葉を、理解する事が出来ない。


そうの手の中に居る精霊も、なにやらなにやら話して居る様だから、精霊の言葉と言う奴なのだろうか。


だが、精霊自身の言葉自体はそもそも聞き取る事が出来ない。


そして、理解していない俺とユエを置き去りに、一見独り言のようなソウと精霊の会話は続いてゆく。



「……―――」


「……―――」


「……―――」



やがて、こくりと頷いたソウは、ぼそりと術式を嘆いた。


それは、この間ダート・ヴァルトを救った解呪術式だ。



「……《スペル(術式)ブレイク(破壊)》」


「おお?」


「黒い染みが、消えていくわね」



魔法が発動した瞬間、精霊を縛っていた術式は砕け散り、精霊が開放される。


そして、石にこびりついた様な染みは、まるで元からなかったかのように空中に染み出して消えてしまった。



「……これで、この石は安全」


「なんつーか、ソウって、そんな道具の解呪もできたんだな」


「……ん、それと、この娘、トキに憑いて行くって」


「うん?」



石から離れ、危なげなく浮いている精霊を見れば、なにやらじっと俺のほうを見ている。


期待しているような、不安げな闇色の瞳で見つめてきている。



「まだ俺、この間の光の精霊ですら満足に対話出来てないんだけど」


「……ん、大丈夫、だとおもう……たぶん」


「……」



大丈夫と言うなら自信を持って言って欲しいんだけど……。


正直不安しかないが、そんな不安そうな眼で見られれば断る事が出来ない。


俺はそっと精霊に向かって手を伸ばす。


精霊もこちらに手を伸ばしてきて、互いに指先が触れ合った瞬間。



「―――!」


「おお?」



言っている事は分からないが、この精霊が何かを話している事は分かる。


やはり先ほどのソウは、この精霊と話していたのだろう。



「……もっと、波長が合えば、言っている言葉も分かる」


「もしかして、俺があの光の精霊とうまく対話できないのは……」


「……触れ合っていれば、そのうち慣れる」



つまり、慣れて居ない所為で何も聞こえないと。


なるほど、と俺が納得すると、隣で納得のいかない声を上げるユエ。



「その話だと、ずっと一緒に居たはずの私はどうなるの?私も良く聞こえてないのだけど」


「……ユエは、たぶん聞こえている」


「聞こえてる?」


「……慣れてしまって、聞こえないだけ。次に話しかけるときは、それを意識して」


「慣れて……?」



ソウの言葉に再び困惑するユエ。


そして話は終わりだとばかりに、石を懐にしまうソウ。



「って、ちょっと待て、石をしまうな」


「……?」



首を傾げるが、ただ念話結晶を懐に置いておいても、買ってあげた意味がない。


念話結晶は、互いの念話結晶を登録して初めて、その相手と対話することが可能になるのだ。



「ということで、石をこっちに」


「ああ、ついでに私のも登録するわよ」


「……ん」



差し出された念話結晶に、俺とユエはそれぞれの念話結晶を軽く当てた。


するとこつん、と言う音と同時に、触れたところからまるで水面のように波紋がたつ。



「これで登録完了。念話したいときは相手の顔を思い浮かべて魔力を込めればいい」


「一応教えておくと、登録数を越えたところから勝手に消えて行くわ。ムーンストーンだと、そうね……16・7つと言ったところだったはずよ」


「……ん、覚えておく」



登録を終え、俺達はそれぞれの念話結晶を懐にしまう。


そして、ソウの装備に必要なものの、残りはなんだろうかと思考をめぐらせた。



「あとは、大きな小袋と、服だけね」


「服、に関してはユエに任せるとして、思ったより早く集まってきたな」


「そうね、後は大きな小袋が何処かで競売にでも出ていればいいのだけど」


「それに関しては、見つからなければ何とかなるから、のんびりでいいや」


「何とかなる?」


「詳細は、秘密ー」


「なんだか知らないけど腹がたつわね」


「理不尽!?」



俺が期待しているのはエリアルシードのことだ。


確か、エルが大きな小袋の術式を少し弄ったとか言っていたから、弄れるなら創れるだろうと踏んでの事だ。


ただ、あくまで推測であるため、詳しくは教えないで置く。



「まあ、とりあえず、食べ歩きしつつ、ソウの服を見つつ、大きな小袋を探して行きましょうか」


「……別に、服は、いい」


「だーめ」


「……むう」



ソウが渋る声を上げるが、ユエは諦める様子がない。


精々可愛い服でも探してくれ、と、俺は肩を竦めて辺りを見回した。




作者 「ハイどうもこんにちわ。後書き対談のお時間です」

トキ  「こんにちわー。お久しぶりで」

作者 「いい訳はしません、何なら予定ではSW前半で二話程度上げるつもりでした」

トキ  「……前半、終了したと言うかもう後半じゃね?」

作者 「筆が進まなかったとです」

トキ  「既にねた切れ?」

作者 「そんな、話はもう決まっているのに、会話が出てこないのです」

トキ  「ぼっちぇ」

作者 「なんとか来週もあげてペースを戻して行きたい所存」

トキ  「……フェードアウトだけは」

作者 「……さて、今回のお話の解説です!」

トキ  「おいぃぃい!?はっきり否定しろよ!?」

作者 「今回はソウの念話結晶を手に入れるお話、とついでにトキの精霊を増やしちゃうお話です!」

トキ  「結局まだ光精霊と話すら出来てないから、魔法なんて夢のまた夢なんだけど!?」

作者 「闇精霊増やして難易度倍増ですね!」

トキ  「い、いつになったら魔法が使えるんだ」

作者 「さてはて、いつになるのでしょうねぇ」

トキ  「で、でも精霊眼については進歩があったよな」

作者 「発動が早くなっただけですがね」

トキ  「精霊が見えると言うのは、それだけで大きな進歩!」

作者 「あ、あのシーンなんですけど、一つだけ注釈を入れて起きます」

トキ  「うん?」

作者 「ユエは、―――が視えて居ません」

トキ  「……なんて?」

作者 「ブロックされましたね。考えれば分かりやすいですが此処では言えないようです」

トキ  「むぅ?」

作者 「後は、って中身薄いからもうねた切れですかね」

トキ  「自分で言って行くのか」

作者 「他に何かあります?」

トキ  「…石の登録数、やけに少ないよな?」

作者 「あー、確かに」

トキ  「前時代の遺物、って言うのなら、もっと登録数多くてもおかしくないんじゃないか?」

作者 「これは、石の耐久値によるものですね」

トキ  「はあ?」

作者 「当然、技術が発展して行けば、登録件数も、持ち運ぶべき石の大きさも改良されていきますよね?」

トキ  「そうだな」

作者 「つまり、石は小型化されていったのです。つまり頑丈さは?」

トキ  「でもそうなったら魔法で堅くとか」

作者 「そういう系統の魔法は長くは続きません。特に念話結晶は、内部に念話の術式を埋め込み、その外にそう言う外部補助をつけるため、耐久年数が短いです」

トキ  「お前の時代の携帯電話見たいなもんか」

作者 「小型化はいいけど耐久性あげて欲しいですよねぇ。そんな感じです」

トキ  「特に今の時代、大崩壊後百数十年たってるからな」

作者 「耐久値に優れた一定以上の大きさの念話結晶以外は残っていないということです」

トキ  「納得した」

作者 「と言う事で、次回予告に入りましょうか」

トキ  「この調子だとまだ続きそうだな」

作者 「後何話になる事やら」

トキ  「この町で2章〆ていいんじゃ?」

作者 「山梨落ち無しというのですかね?」

トキ  「たまにはいいんじゃね?」

作者 「ときがくるしまなきゃいみないじゃない」

トキ  「……おい?」

作者 「と言う事で買い物会が続きます。後トキが苦しみます」

トキ  「おい!?」

作者 「と、今回はこんな感じですかね」

トキ  「勘弁しろよう」

作者 「それでは皆さん、次回も終わる事のない夢の中でお会いしましょう」

トキ  「お疲れ様でしたー」

作者 「さー、今回も落ち無しで」

トキ  「だからって無理やり俺で落とすの止めろぉ!?」

作者 「何を言ってるんです」

トキ  「……?」

作者 「それが此処でのトキの役割です」

トキ  「次回こそは逃げ切ってやる!?」



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