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壊れた世界の旅人語り  作者: 夜天夜空
第2章――グランドピークでの顛末
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第25話

「―――魔力酔い?」



突然倒れたユエを診て、ソウが出した結論がそれだった。


魔力酔いとは、濃密な魔力に当てられ三半規管が狂ってしまうという、所謂乗り物酔いなんかと似たようなものだ。


確かに、魔力酔いの状態でそのまま濃密魔力内にいれば危険と言うこともあるのだが……。



「……ん。たぶん、精霊眼に酔ってる」


「え、と……対処法は?」


「……眼を解除して、寝てれば、治る」


「……とりあえず、素材だけ集めて、ユエ背負って帰るぞ」


「……ん」


「自分であるけ――うぅ」



ユエは無理にでも立とうとするが、うまく体勢を整えられないのか、すぐにまた倒れてしまった。


崩れ落ちる体を支え、ゆっくり寝かしてやる。



「いいからおとなしくしてろ」


「うぅ、情け無い」


「ほんとにな」



戦闘中にでも倒れてたらどうするつもりだったんだか。



「そこは、嘘でも慰めるとか……」


「……トキが、そんな事、すると思う?」


「……私も、大分キテるわね」


「失敬な」



俺は無駄な慰めをしない主義名だけだ。



そうして、採れる分だけの素材を集めきった俺達は、ユエを背負ってキャンプ地へと戻る。



ただの魔力酔いと言うのであれば、心配は要らないだろう。


安心しつつ、先ほどの焦った自分振り返って思う。



……なんだか、心配した自分が馬鹿みたいだな。



心配しすぎで夢の事まで思い出してしまった。


あの時脳裏をよぎった顔を思い出し、背負ったユエをの顔を見る。



「……全然似て無いし」



先ほどまでは意識朦朧としながらも起きて素材集めを手伝おうとしていたようだったが、今はもう静かになっている。


どうやら思った以上に精霊眼に精神力を持っていかれていたようだ。



辛かったなら解除するなりすれば良かったのに。



ユエの顔を見つつ呆れていると、隣を歩いていたソウがこちらを覗きこむ。



「なんだ?」


「……いたずらしちゃ、め」


「しないっての」


「……ユエの顔、覗きこんでるから」



俺が誰かの顔を覗き込むときは悪戯する時ですか、そうですか。



「そう言う事言うと今日も起こしてやらんぞ?」


「……じゃあ、寝ない」


「寝なさい」



ただでさえ慣れない生活で疲れてるんだろうに。



「……別に、わたしは寝なくても大丈夫」


「大丈夫だろうがなんだろうが、寝たほうが回復するだろうが」


「……トキの、いぢわる」


「ぐぅ…!?」



ソウの顔は表情こそ表にで無いがとても整っている。


成長すれば間違いなく美人になるであろうその顔で、下から覗きこまれつつそんな事を言われてしまえば、敵う訳が無いじゃないか……っ。



「わ、分かった。起こしてやるからゆっくり寝ろ」


「……ユエの、言った通り」


「うん、その話もっと詳しく」


「……トキが意地悪をしたら、わたしが下から覗きこんで攻めれば、大抵の事はトキが折れるって」


「コイツ、その辺に捨てていってやろうか」


「……だめ」



純真向くなソウにそんな交渉術を教えるとは、よくやっ…げふん、言語道断!



「……なんで、手を握り締めてるの?」


「いや、とりあえず、さっきのは禁止で」


「……えー」


「起こさないぞ」


「………わかった」



しぶしぶながら、と言う様子で頷くソウ。


……ユエに色々任せてはいるが、ソウが余計な影響を受けないことを祈るばかりだ。













キャンプに帰りついたのは、大体正午を過ぎた辺りだ。


この時間、寝ずの番の傭兵達以外は寝ているはずだったんだが。


どうやらトランさんが何やら作業をしていたようで、起きていたようだ。


俺はとりあえず、ユエを暫く寝かしておくと告げる。



「もちろん大丈夫だけど、寝かせているだけで大丈夫かい?」


「ああ、問題ないよ」


「だが、毒とか細菌とかの類は?」


「ただの魔力酔いと精神力切れだ」


「……寝かしてれば、治る」


「魔力酔いって、この辺りにそんなに魔力の濃い所、あったかねぇ」



この辺は、あまり人が近づかないだけの森がある程度。


魔力酔いなんてモノ自体、そう起こる訳が無いのだ。


その辺を分かっているからトランさんは不思議がっている。


今回の魔力酔いはただの自滅だから、考えて分かるようなものでも無いだろう。



「まあいいわ。魔力酔いと精神力切れっていうなら、丁度いいモノがあるんだけど」


「へえ、そんな滅多になら無いようなものに対応するものがあるのか」


「滅多にならないわけじゃ無いさ。その症状は普段狭い工房なんかで、儀式魔法を行う人種には日常茶飯事だ」



何人か、そんな人種が知人にいるのだが、特に見た事はなかったな。


知っているやつらがただ優秀なだけか、はたまたそのモノとやらが眉唾なのか。



「それでそのモノとは?」


「ふっふっふ。これさ」


「魔法薬?」



トランが取り出したのは、なにやら蒼緑の液体の入った試験管。


体力や傷なんかの応急処置用の魔法薬をポーションと呼ぶ。


そして精神力を回復させる魔法薬をメンタルポーション。


幻影や毒なんかの状態異常を治す各種ヘルスポーション。


大体その三種類のモノが有名だ。


ちなみに先日、ユエとソウに渡したものは効果が瞬時に現れ、上記全ての効果がある魔法薬。


通称、エリクサーと呼ばれる高級品だ。



「そう、特製のメンタルヘルスポーションだよ」


「なんか、メンタルポーションとヘルスポーションをただ混ぜただけなような」


「名前はそうだけど、そんなことしたら両者の効果が消えちまうよ」


「ふうん」



調薬は良く分からないから、そうなのかと思うくらいしか出来ない。


だが、そういった効果を沢山付けたポーションというのは高いのが相場である。



「ちなみにおいくらで?」


「そうだねぇ、フライラッドの件の事もあるし、その素材一匹分とポーション一つで交換でどうだい?」



沢山採ってきたんだろう?と値踏みするような眼。


どうやら夫さんのほうとは違い、こちらはとても強かの様だ。


ちなみに、今回採れたフライラッドの素材は23匹分。


残りの24匹は黒焦げになって素材としては使用不可だった。



俺は暫く考え込み。



「良し、そいつ5つ交換で」


「ハイ毎度、5つ以上だから、ついでに買取のほうにも色を付けるよ」


「いいのか?」


「いいんだよ。これは家のの方針だから。勝手に取引してもその辺は守ってやるのよ」



へぇ、5個以上の取引で色を付けると。


そしたらこの間の取引なんかも色が付いてたのかね。



「ふむ、じゃあこれ全部で」


「……おや?思ったよりは少ないね」


「半分くらい黒焦げで使い物にならなかったからな」


「そんなに強い罠を?何かあったのかい?」


「ちょっと威力の調節をミスっただけさ。ほらユエの状態見たろ?」


「ああ、それでかい」



量が少ないとはいえ、それでも魔物の素材だ。


18匹分の素材を売れば結構な金額となる。


しかも今回は別途依頼、さらに色付だ。


一財産程度は稼げてしまった。



「毎度、じゃああたしはもう寝るからね。また明日」


「ああ、遅くまでありがとな」



礼を聞くと、こんな残業なら大歓迎だよ。と馬車の奥のほうに引っ込んでいってしまった。


大歓迎する残業とは、夫を気にせずに取引できたことなのか、素材が思ったより速く手に入ったことなのか。



強かな人だなぁと、振り返ると、ソウがユエに先ほど貰ったポーションを飲ませている。


なんとなく、ユエの寝顔が落ち着いたようにも見えた。


安心して、貰ったお金やポーションを仕舞い終わるとソウがこちらをじっと見ている。



「……なんで、嘘を?」


「うん?」


「……黒焦げの理由」



ああそれ?と馬車の奥を確認してから語る。



「マザーズ・スカイラッドの素材は貴重だからね。此処で取引するよりはグランドピークで珍しいモノと交換した方がいいのさ」


「……そう、いえばいいのに」


「知ったらたぶん結構いい値段は付くんだろうけどね。こういう稀少品は売るよりも交換した方がいい時も在るのさ」


「……ふう、ん」



いまいち納得のいかなそうな顔で頷くソウ。


まあ、今はそれでいいさ。



「あ、とりあえず商人さん達には内緒な」


「……わかった」



俺はソウの頭に手を載せる。



「ま、今日はお疲れさん。あの術式強化もいい仕事だったし」


「……ん」



撫でてやると、眼を細めて成すがままになるソウ。


あまり長くやると止め時を見失うので、早々に切り上げる。



「んじゃ、お休み」


「……ん、おやすみ」



こうして、2回目の狩りの日はゆっくりと終わりを告げた。





作者 「ハイどうもこんにちわ。後書き対談のお時間です」

トキ  「ハイこんにちわ」

作者 「さて、全然筆、いや手が進まないものの、始めて行きましょう」

トキ  「とうとう後書きまで進まなくなったのか」

作者 「いえ、後ろで見ているアニメが面白すぎ……ごほん」

トキ  「集中しろ!?」

作者 「ハイハイ、時間も無いのでいきますよー」

トキ  「またぎりぎりか、というかもう火曜じゃ」

作者 「今回は土曜仕事の月曜休みと言う変則だったのです」

トキ  「いや、でも」

作者 「休み中ならセーフだと思うのですよ」

トキ  「何でそんなぎりぎりまで掛けるかなぁ」

作者 「追い詰められた時が一番進むのです」

トキ  「おい」

作者 「と言う事で、今回のお話です」

トキ  「話を逸らすなよ」

作者 「今回はトキの策略?回ですかね」

トキ  「そんな策略してなかったと思うが……というかこれもう俺いらなくね」

作者 「後はなにやらユエの扱いが酷いですが」

トキ  「自業自得だろう。というかポーションも与えたんだから別に酷く無いだろ」

作者 「まあ、前回あれだけ何かあるように引っ張っておいて結局魔力酔いですからねぇ」

トキ  「ちなみに魔力酔いに説明は?」

作者 「本編でも言ってましたが、高濃度魔力による三半規管の狂いで、乗り物酔いなんかと同じです」

トキ  「ホントにまんまだな」

作者 「研究職系の魔法使いやアルケミストなんかはよく掛かるんですが、一般的には魔物の群生地なんかにいかないと掛かりません」

トキ  「と言う事で本編では俺がそう勘違いするようにいったんだな」

作者 「そんな策略ばかりなへたれ主人公です」

トキ  「うるさいな。そうでもしないと勝て無いんだよ」

作者 「わりかし勝っている気がするんですけど」

トキ  「本編中はな。たぶん何度かソウやユエと戦えば負けるぞ」

作者 「引き出しが多いだけですもんねぇ」

トキ  「初見クラッシャートキと申します」

作者 「あとは、魔法薬に付いての説明が少し出ていますね」

トキ  「ああ、ポーションな」

作者 「説明自体は本編のモノでほぼ全てなので省きますが、

     通常、異なる種類のポーションは効果が重複しません」

トキ  「うん?今回のメンタルポーションとヘルスポーションみたいな?」

作者 「例外としてヘルスポーションでまとめられているのは重複するんですが、名前の違うものは重複出来ません」

トキ  「でも一章で出てきた俺のは?」

作者 「あれは超例外のエリクサーですね。全部の効果が載っています」

トキ  「まあ、恐ろしいくらいに高いしな」

作者 「ようは重複してしまうとそれはもうエリクサーの一種となってしまうわけです」

トキ  「それじゃ何かまずいのか?」

作者 「エリクサーは高い」

トキ  「……まあな」

作者 「効果に即効性のあるメンタルヘルスポーションは、エリクサーとして売られてしまう可能性があるわけなのです」

トキ  「ああ、確かにポーションで傷が治るといっても一晩は掛かるしな」

作者 「と、そんな理由でメンタルヘルスポーションは通常商人間でのみの販売となっているのです」

トキ  「5個も貰って平気だったのか?」

作者 「かなりお高くなっていますし、リスク考慮したうえじゃ無いですかね」

トキ  「やっぱり素材一匹分はぼったくりだったか」

作者 「ちなみに、ブラウさんのほうでは絶対に売ってはくれませんでした」

トキ  「トランさんは商売人と言うより職人だしなぁ」

作者 「性格的なモノはあるものの、ブラウさんは商才がありますから」

トキ  「ふうん」

作者 「と、そんな感じで、次回予告ですかね」

トキ  「次回は?」

作者 「ちょっと飛ばして、グランドピークに到着ですかね」

トキ  「ほう、結構飛ばすな」

作者 「話的都合です。考えて見れば、プロット自体もグランドピークに入ってからが序章みたいな感じだったはずなのです」

トキ  「……あれ、二章7話目?」

作者 「やっと次回二章が始まります」

トキ  「おいいいぃい!?」

作者 「いや、ホントはリアル2年くらいで8章書き終えるはずが、たぶんこの調子で4年は掛かると言う」

トキ  「……計画性ぃ……」

作者 「さて、ではこの辺で」

トキ  「ああ、終わりか」

作者 「それでは皆さん、次回も終わらない夢の中でお会いしましょう」

トキ  「お疲れ様でしたー」

作者 「さあ、夜勤だー」

トキ  「テンション高いな」

作者 「この時期昼間歩くのは阿呆だと思うのです」

トキ  「通常の仕事をしている人に謝れ!?」

作者 「すいません」

トキ  「ま、その時代だと建物の中は涼しいんじゃ無いのか?」

作者 「外の、体動かす系。しかも、本土最高温度の隣辺りの場所で」

トキ  「……死ぬなよ」

作者 「ハイ」


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