第01話
かつて、大崩壊と呼ばれる戦争があった。
法術を扱う人族と、魔術を従える魔族の、世界を二分したその戦争は、繁栄していたそれぞれの文明を数世代後退させるに至った。
それでも戦争が終わらなかったのは、双方には其の種族最強の指導者が存在したからであろう。
すなわち人族を統べた英雄王と、魔族に君臨する魔王である。
最後に残った両者の壮絶な相打ちにより、すべてを壊してしまった戦争に終わりが訪れた。
そうまでなり初めて、双方の種族は、もはや手を取り合わねば生きていけないということに気づいたのだ。
これは、それから120年の時が経ち、人と魔族の堺が無くなった頃の物語。
***
鬱蒼とした森の中、未だ少し冷たい風が木々の間から枝葉を揺らす。
もう何年も人の手が入っていないような森の中を、一人の男がゆっくりと歩いていた。
目の前の枝を避け、長く伸びきった草花にまぎれた魔物を警戒する。
ふと立ち止まり、男は辺りを見回す。
思い出したかのように男のお腹が、空腹を訴える音を鳴らした。
「此の森には、茸すら生えてはいないのか……?」
空腹だった。
男が此の森に入って一週間、既に携帯食料は食べつくしている。
辛うじて湧き水で汲み取った水で食いつないでいる状態だ。
それももう、だいぶ限界に近かった。
「く……目が霞む」
どうやら慎重に進んでいるだけが、歩みの遅い理由ではないようだ。
覚束無い足取りで足を踏み出すが、少し進むと出っ張った木の根に引っかかり、転んでしまう。
暫く起き上がろうともがいていたが、やがて気力も尽きたのかそのまま動かなくなった。
ここに、哀れな行き倒れが完成し……、
「……zzz」
……いや、意外と余裕は在るのかもしれない。
今の世界で旅をしていると、こうした食糧難と言うのはままある事だ。
文明が後退し、人が減り、人が住んでいる場所というモノが少なくなっているのだ。
交通網が減り、かつて人や魔族の賑わっていた町の大半は、手入れもされずに朽ち果てている。
魔物の脅威というのも計り知れない。
対抗する事の出来る者が極端に少ない今では、旅の最大の障害と言えるだろう。
それらを避けるためにも最低限の実力か、実力を持った護衛が必要となる。
それでも、旅をする者というのは何かしらの理由があるものだ。
大事なモノを探すためだったり、生活圏から抜け出すためだったり、はたまた魔物を倒して生活をしたりなど。
今、行き倒れた男も、例にもれずそうした理由のある旅人だった。
つん……つん……。
「んぁ……?」
誰かが自分の顔をつついている。
空腹で動きの鈍いまぶたを持ち上げると、目の前には女の子の……顔?
「……起きた?」
すい、と離れる女の子。
俺はゆっくりと体を起き上がらせ、少女を眺めた。
艶やかで真っ直ぐな黒髪を首下程度に伸ばし、不思議な紅と白の服を着ている。
多少切れ目な夕焼け色の目が、無機質ながら人形の様に整った顔に目立っていた。
身長は俺より少し小さい程度で、おそらく14、5歳といったところだろうか。
「こんなところで……お昼寝は危ないよ?」
「ああいや、昼寝していたわけではなくて……」
といったところで、再度お腹が空腹を訴える。
「……いきだおれ?」
「そうとも言う」
「……そう」
え、それだけ?
なんというかこういう時って大丈夫ですか?とかご飯を分けてあげるとかそういう……
いや、少なくともこの旅中にそんな優しい人には会ったことは無いけれど。
少女はすっと音もなく立ち上がると、何も言わずに森の奥へ歩き出す。
俺が呆気にとられて眺めていると、少し離れたところで立ち止まった。
そしてこちらに視線を送っている。
……もしかして助けてくれるのだろうか。
俺は残った気力を振り絞って立ち上がると、少女の背に向かって歩き出した。
じゅーじゅーと肉を炒める音がする。
俺は、美味しそうな色になった肉を、既に盛り付けてある野菜の上に置いた。
後は手軽ながら手作りのたれをかけて、料理が完成だ。
「……美味しそう」
そうだろう、自信作だ。
本当ならパンかご飯があればよかったのだが、食料を恵んでもらった上に贅沢はいえない。
あの後、少女の後を付いていくと、森の奥に一軒の建物が建っていた。
朱色の門のような囲いに石畳、奥には大きな木造建築。
荘厳な雰囲気を持つ建物の奥に少女の住処はあった。
しかし食材はあれど少女自身は料理をした事が無いらしい。
どうやって少女が暮らしてきたのかは知らないが、それならばと台所を借りて料理をさせてもらっているわけだ。
「君の分もある。一緒に食べよう」
「……いいの?」
「いいのも何も、此の食料は君のだろう?」
「……ん」
料理を食卓へと運び、向かい合わせで席に着く。
そして手を合わせて、いただきますとお辞儀をする。
「……なに、それ」
「ああ、なんと言うか。昔からの習慣なんだ。食材や、作った人に感謝を篭めて礼を言う」
「……ふうん」
少女も真似をするように、手を合わせていただきますとお辞儀した。
そのまま料理を一口、口に入れる。
「……おいしい」
そう言ってくれるなら作った甲斐があるというものだ。
俺も、パクパクと空腹を満たすために食事を口に運び出す。
なかなかに美味しく出来ていて、多めに作っていたものがあっという間になくなりそうだ。
俺は食事の序でに、少女のことを聴いてみることにした。
「そういえば名前も聞いていなかったな。俺はトキ。君の名前は?」
「……んぐ。……ソウ」
「ふむ、じゃあそのままソウって呼ばせてもらうな」
「……ん」
少女改めソウは料理に手を出しつつも、こちらに目を向けている。
どうやら質問には答えてくれる気らしい。
ならばと、気になっていることを聞いてみた。
「この家は……ソウは独り暮らしなのか?」
「……うん。ずっと、独り」
……親がいたり、お手伝いさんがいるようには見えなかったけど、こんな処で独り暮らし?
料理も出来ないのに?
「ご飯って如何してたの?」
「……食べなくても平気」
……血を吸ったりする訳でもないよ?と補足するソウ。
魔族の中には食事の代わりに、人の血を食料とする存在もいる故の補足だろう。
しかし、食事も血液も必要としない種族なんて存在しただろうか。
幻影種なんかは確かに夢や感情を食べるとか言われているけれど。
「……別に、夢や感情も食べない。どれも、食べようと思えば行ける気はするけど」
「……?」
……そんな種族いただろうか?
まあ、俺も総ての種族を網羅している訳ではない。
もしかしたらそういった種族がいても、おかしくは無いのかもしれないな。
「じゃあ、ソウはどうしてこんな森の奥深くに住んでるんだ?」
「……ここで、”なにもない”を祀って、護ってるの。……理由は、分からないけど」
気づいたら此処にいたから。と自分の事ながら無関心に料理を食べるソウ。
「なにもない?」
「……ん。”なにもない”の」
”なにもない”事に意味があるの。とソウは続ける。
……わけがわからないよ。
何というか、聞けば聞くほど謎が深まっていく。
と言うか謎が増えていく。
「護っていると言うなら、俺みたいな行き倒れを拾ってきてよかったのか?」
「……ん、大丈夫」
「理由を聞いても?」
「……なんとなく?」
いや、聞き返されても。
「……なんとなく、あなたは悪い人じゃないって……そんな気がする」
「そんな曖昧な」
「逆に……良くない事を考えてる人は、分かるの」
それでいいのなら、別にいいんだが。
聞いている限り、ソウは自分のことについて把握していない事が多すぎる。
把握していないというか、自分に興味がないようにも見える。
「……トキは、なんでこの森に?」
「俺?俺はちょっと探し物があって」
「……さがしもの?」
「うん。小さなころの記憶」
俺には5年ほど前から昔の記憶がない。
今が16歳位だから、それこそ人生の半分以上の記憶がないといってもおかしくは無い。
育ててくれた人の話では、真夜中に急にすごい音がして、その音の中心に倒れていたんだとか。
奴隷や人攫いの多いこの世の中、態々拾って数年とはいえ育ててくれた人には感謝をしてもしきれない。
在る出来事から、世界中を見て回れば自分の過去の記憶が戻るかもしれないと、わがままを言って育ててくれた人の家を飛び出してきた訳だ。
だがまあ、今回拾ってもらった事と言い、過去拾ってもらった事と言い、どうやら俺は悪運だけは強いらしい。
「……ふう、ん」
……?
興味があるのかないのかよく分からない反応だ。
質問がやんだとみると、ソウは料理を食べる事に集中しだした。
ご飯を食べ終えると、とりあえず今日はもう暗いし、泊っていけばいいと客間に通された。
多少埃は積もっているものの、屋根はあるし扉があって風が入らないと、野宿に比べ雲泥の差である。
俺としてはとてもありがたいのだが、若い娘としてこんな簡単に男を家に泊めるというのはどうなのだろう。
そう言うとソウは、分かってい無さそうに首をかしげていた。
もしかして、ただ世間知らずなだけなのではと、ちょっと心配になった。
日が沈み、辺りが暗くなると、この森は虫や獣の声など、普通なら聞こえる音が何も聞こえなくなる。
自分で灯した明かり以外は、完全に静かな、闇。
最初数日は確かに、違和感で眠りにつけなかった俺だが、もうすでに慣れてしまっている。
こうして気持ちを落ち着け、考え事をするにはとても良い環境だった。
―――さて、
もう、この一週間で何度考えたかもわからない考えを、もう一度整理する。
いくら探しても木の実や茸などの食料が無かったことから、この森には生き物がいないと見て間違いないだろう。
いや、正確には”この場所以外”というのが付くようだが。
ずっと辺りを警戒しつつ歩いてはいたが、動物どころか虫すらも結局見かける事は無かった。
その環境は間違いなく異常だ。
その環境に暮らしている少女”ソウ”はさらに異常といえる。
彼女の話では、食料は気づけば置いてあり、食べなくても特に腐ったりしていた様子は無かったらしい。
その状況になにも疑問を持たずにいたことから、本当に彼女は世間知らずであることが分かる。
または、そんな事も知らされず、この箱庭のような森に閉じ込められているのだろうか?
そして何者かが彼女を観察している。
それなら常にある食料や、彼女以外生き物が存在しない森に説明がつく。
……違うな。
それなら自分がこの森に入った時に何かしらのアクションがあるはずだ。
彼女を唯閉じ込めておきたいだけならば、近づくモノをすべて排除する事の方が理にかなっている。
それならば何故、彼女は何も知らされずに、こんな何もいないところに暮らしているのだろう
実は彼女は命を持たないゴーレムで、何かを守るためにこの場所に配置されているとか?
そう言えば何かを守っているとか祀っているとか?
ただ、それが何もない物を守っているとか……。
……分からん。
其処まで考えた時、扉の向こうにかすかな明かりが灯った。
「……眠れない、の?」
扉越しに、ソウの小さな声が聞こえてくる。
「いや、そう言う訳ではないんだけど、明かりを消した方が良かった?」
扉をあけると、ソウが表情も変えずに此方を見ていた。
彼女の周りには、仄かに光る珠がくるくると回っている。
……魔法?
「それはいい、けど」
「じゃあ、どうしたんだ」
「ん……何でもない」
ソウはふい、とこちらに背を向けると、自分の部屋に向けて歩きだす。
心配してくれたのだろうか?
ならば悪い事をしたかもしれない。
謝ろうにも、彼女は既に自分の部屋の中に入って行ってしまった。
「まあ、明日朝にでも言えばいいか」
そう言うと俺も扉を閉め、明かりを消した。
ぱちぱちと辺りの木が燃える音がする。
そして自分は苦しげな男女に抱えられ走っている。
……ああ、またこの夢だ。
自分の体は小さく、抱えているのは見覚えの無い2人。
恐らく、自分の本当の親。
やがて女が囮になり分かれ、男は追撃に倒れる。
最後の力を振り絞った男の魔法によって自分は何処かに飛ばされてしまう。
幾ら叫んでも、もがいても、暴れたって意味がない。
最後には自分は何処かへ飛ばされてしまう。
そう、何時もこうして最後には男が近づいてきて、
「……すまんな。次会うまでには全部終わってい―――」
「―――だから……次って、何時の話だよ」
ぽつりと嘆くと、俺は使いなれぬ布団から身体を起こした。
作者 「ハイ皆さん始めまして。あけましておめでとうございます。
今年からよろしくお願いいたします」
トキ 「あとがきはこんな感じの対談形式で進めていくらしいよ」
作者 「とはいっても、作者の余裕があるとき、または時間があるときに限ります」
トキ 「はい、一番最初から言い訳に入った」
作者 「こちらは何も考えずに一気に書くため、
上のような言い訳、ネタばれ、世界観設定、カオス、作者の泣き言など、
どうでもいいこと満載となっております」
トキ 「なあ、どうでもよくないこと、混じってないか?」
作者 「基本的には読まなくても、作中で説明は入りますので全く問題ありません」
トキ 「まあ急に来る設定なんかの前準備みたいなものか」
作者 「というかここで話した事は、本文かいてると変わることもあるのであてになりません」
トキ 「おいィ!?」
作者 「わたしの話ではよくあることです。ご了承ください」
トキ 「いや、少しかんがえて小説を書くとか」
作者 「ご了承ください」
トキ 「設定確り固めてから書くとか」
作者 「ご了承ください」
トキ 「……」
作者 「ご了承ください」
トキ 「ハイ、ご了承ください」
作者 「と、言うことでようやく本題です」
トキ 「前振り長ー」
作者 「よくあることです」
トキ 「都合悪いこと全部そうやって流すつもりか」
作者 「よく、ある、こと、です」
トキ 「ああ、はいはい。いいよもう、先進めよう」
作者 「はい、では今回のお話について」
トキ 「基本的には俺が主役で話が進んでいくんだよね?」
作者 「そうですね。偶に違う視点とかははいりますが、基本トキ視点となります」
トキ 「その割には俺の説明自体はほぼ出てこなかったような」
作者 「まあ、男の説明なんて書いても楽しくないですし」
トキ 「おいィ!?」
作者 「冗談ですよ。次回辺りにでも少しずつ分かっていくでしょう」
トキ 「とりあえず今回は旅しているってことと、記憶を探しているって事が出てきたと?」
作者 「そんな感じです」
トキ 「でも背格好くらい教えてくれてもいいんじゃないか?」
作者 「んー、体は中肉中背。旅のためか長めの黒い髪をぼさぼさにしている感じ?」
トキ 「いや、聞かれても」
作者 「おそらく16才かそこらと思われます」
トキ 「今なら高校生といったところか?」
作者 「そんな感じで」
トキ 「顔は?」
作者 「とりあえず、ソウも言ってたとおり、人畜無害そうな顔で」
トキ 「どんな顔だよ……」
作者 「んー、優男?ヘタレ顔?超童顔?」
トキ 「OK、もういい、黙ろうか」
作者 「まあ次回辺り、ソウの印象が書かれるので楽しみにしといてください」
トキ 「もう楽しみに出来ない自分が居る……」
作者 「はいはーい、落ち込むのは後にして、次進みますよー」
トキ 「へーへー、後は世界観か?」
作者 「こことは違う、剣と魔法と魔物の世界。以上」
トキ 「早い!?そして大雑把!」
作者 「細かい設定は後々出てくるとして、とりあえずそれだけ分かっていれば大丈夫」
トキ 「雑ぅー」
作者 「まあ、大崩壊と呼ばれる戦争で、文明が後退しまくって、
かつての文明の名残を見つけるだけでもお金になり、重宝される。そんな世界です」
トキ 「で、人間と魔族が交じり合っていると」
作者 「魔物にすら怯えなくてはいけない状態になったため、両者に垣根はほぼなくなっています」
トキ 「実力者が軒並み居なくなった感じだね」
作者 「まあ唯、そこから120年。まれになら実力者が出てきている時期ですね」
トキ 「で、実力者は町のガードなんかになるんで、旅人は珍しいと」
作者 「一応、ギルドなんかもあるんで、魔物狩りが出来る人はいるんですけどね」
トキ 「俺の実力は?」
作者 「ある理由により辛うじて一人旅が出来る程度となっております」
トキ 「……説明がわからなすぎる」
作者 「まあ、割りと強いですよ。わりと」
トキ 「……信用ならねー」
作者 「さて、後は魔法の説明ですかね」
トキ 「それは次回でいいような」
作者 「ま、確かに。次回軽く本文で説明が入るんで、そうしましょう」
トキ 「ああ、後最後に」
作者 「はい?」
トキ 「この小説の更新頻度だ」
作者 「ああ、基本的に暇があったらひたすら書くので、ほぼ毎日目標で」
トキ 「目標で?」
作者 「たぶん週3くらい?」
トキ 「もっと頑張る気は?」
作者 「間に合わなかった時は、はじめのほうは自作HPのほうで掲載してた二次創作のほうを挙げていきます」
トキ 「確か40話くらいあるんだっけ?」
作者 「そうですね。HPのほうは放置してたら更新不可能の詰み状態になったので」
トキ 「どれだけ放置したらそんな状態に……?」
作者 「それと他の小説なんかもちょくちょく挙げていくのでしばらくは毎日更新ですね!」
トキ 「あ、はい、無視」
作者 「メインはこれでいくので、他のほうの更新はあまり期待はせず待っていてください」
トキ 「忘れた頃に書いたりするんだろうなぁ」
作者 「さて、そろそろ長くなりすぎた感はあるので、お開きにしましょう」
トキ 「なあこれ俺の合いの手必要あったか?」
作者 「それでは、次回も終わることの無い夢の中でお会いしましょう」
トキ 「本当に終わる事が無ければいいけど」
作者 「お会いしましょう!」
P.S.
トキ 「さて、始まったな改訂版」
作者 「始まっちゃいましたね改訂版」
トキ 「エンディングどこ行ったのかしらないけど」
作者 「答えは実家に戻ってくるときにメモリーカードごと忘れてきた。です」
トキ 「だから先に改訂作業?」
作者 「一応EDは書き終えていたので、簡単に直して行こうかなと思いまして」
トキ 「まあ実家に居る間まったく進めないわけにも行かないしな」
作者 「とりあえずこれから改訂版にして上げて行きます」
トキ 「毎回ここの対談空間はいれるの?」
作者 「いえ、気分によってですね。改定と言っても文章へんなところを直したり程度なので、あまり変わらないですし」
トキ 「じゃあほぼ無しか」
作者 「書き忘れがあったりしない限りはです」
トキ 「まあすでに後書きのほうが多い話とかあるしな」
作者 「その話の時は自重します」
トキ 「自重って何だっけ……?」
作者 「と、言う事で、改訂版、始まりです」
トキ 「よろしくー」