9 沈思黙考の有意性2
「ぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
叫声が森中に響き渡り、どこに隠れていたのか鳥たちが一斉に青空へと飛び立つ。
「!?」
今後の動きを話し合っていた僕たちはすかさず立ち上がり、コンテナの裏に山積みにされていた武器を構える。作業着の男達が置いていったのであろうその武器は多種多様に取り揃えてあり、25人は刀や剣、槍、アックス、ハルバードなど大きさの違う獲物を携えている。
そしてこれらの武器全てが純白に輝いていた。
鞘、柄に限らず刀身、穂まで真っ白だ。
武器が置いてあった事も不可解だが、それ以上に白すぎるその姿は気味の悪いものだ。
しかし不気味だとも言っていられない。
未知の場所だ。何が起こるか分からない。
それに作業着の男達の言っていた「奴」が気がかりだ。
結局各々が自身にあった武器を持つことになった。
途端にこの悲鳴だ。
「・・・・」
先の叫び声以降沈黙が守られている。25人は腰を落としたまま微動だにせず声の方向を見る。
―そういえば25人?
「おい、黒髪の女と金髪の男はどこに行った」
僕の疑問を払拭するように義兄・リヒトが静けさを破る。
そう、今この場には23人しかいない。コンテナには確かに25人が乗り込んだはずだ。
「本当だ。クレーエ、あいつどこに・・・」
「ライアーもいないわ」
「・・・今の悲鳴。なんかクレーエの声に・・・」
「ちょっと!縁起でもないこと言わないで!」
一瞬でざわめきが広がる。
「ディヴェルト。どうしたの?」
僕の近くにいたラントが少し顔を覗き込みながら聞いてくる。
何があったか推測も出来ないのかこの愚妹は。
「悲鳴。近い。仲間。危険」
もうこれで十分だろう。取り敢えず危険だと言うことが伝われば。
「いや、ディヴェルトの顔色悪いから、どうしたのかって聞いたんだけど」
「・・・ラントみたいに平気な方がどうかしてるよ」
みんな顔を青くしている。
僕は多少の恥ずかしさでほんのり赤くなっている気はするが・・・
「よし、8人で声のした方を見に行こう」
考えがまとまったのかリヒトが提案する。
ほんの数十分でまとめ役になっている。大したカリスマ性だと感じる。
「ディヴェルト、ラントも一緒に来てくれ」
了解、という風に頷く。ある程度戦力になることは3対30の訓練の経験から導き出される。
「他にあと・・・5人誰か勇気あるやつはいないか?」
こちらに留まるより今から向かう先の方が遙かに危険だろう。
しかし、こんな聞かれ方ををすれば俺が私がと手が挙がる。
「あれ?ロリコンさんは行ってくれないの?」
ラントが例の幼女・・・10歳でかなり小さくて愛くるしいが幼女ではなくあくまで少女、を連れたあの男性に向かってそんな言葉を放つ。
「誰がロリコンさんだ」
強面の顔の額部分に青筋を浮かばせながら彼は言う。
「あり?違うの?」
「ラント。ロリコンが「私ロリコンです」って言うか?言わないね。俺なら言わない。・・・いや、俺ロリ好きじゃないぞ?ねえこっち見て?目をあわせて?話聞いて?」
小声になった俺をよそにラントと仮称ロリコンさんが会話を続ける。
「強そうなのに。背、高いし」
「・・・俺はこいつを守らないといけないからな」
「・・・ソッカ。ワカッタ」
「そういう意味じゃ・・・」
たわいもない会話をしている間にリヒトが選んだ8人が決まる。
「ここに残るやつも警戒を続けてくれ。いざとなればそこのコンテナを鳴らすなりで知らせてほしい」
忠告をした後に8人は森の奥まった場所へと歩を進めていった。