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27 憂慮朝食

さて、僕は半分出していた下着を慌ててズボンで隠すと、解釈しかねると言った表情で小首を傾げるリーベに挨拶をする。


「お、おはようリーベ」

「え、あ、はい。おはようございますディヴェルトさん、ラントさん」

「おは!」


 ラントは元気だ。

 まだ疑問を残したように立ち尽くすリーベを部屋に促す。


「まだ越したてで散らかってるけど入るか?用事があって来たんだろ?」


こんな早朝に。まだ太陽は遥か遠くに見える黒い壁よりも下にあり、辺りは薄暗い。

何か特別な用でもなければこんなところにまでわざわざ歩いて来ないだろう。

嫌な知らせだろうか。例えば兄貴が・・・


「あの、これを持って来たんです!」

「へ?」


 バスケットが手渡される。なぜかリーベは頭を下げたまま焦げ茶色の木皮で編まれたバスケットだけを胸元へ押しつけてくる。

 籠の上に被せられた布の隙間から仄かな甘い香りが漂ってくる。これは・・・


「朝ごはーん!」


ラントが小躍りしながら言う通りこれはバターロールの香り。


「はい、その作って来たんです。学生寮でも食事をとることができるとは知っていたんですけど、やはり初めての環境でいきなり知らない人と交流となると疲れるんじゃないかと、あ、ご迷惑でしたか・・・?」


僕はバスケットを胸に抱えたままがくりと膝をつく。


心配性の僕が新しい環境で知らない人と食事に何の気がかりも持たないわけがないのだ。はっきり言って昨晩から心配でした。アウェーな環境でで食事とるの。

だからこそ、だからこそ。


「女神さま・・・!」

「ふえ?」


目の前の人物を神と崇めるしかなかった。


「ロールパン大好きだよ!」

「良かったです。あ、それでは私はお暇しますね」


 ラントも大喜びのようだ。まあ、愚妹に限って人付き合いに気がかりなことなんて何も無いのだろうけれど。

 少し日が出てきた。

 やはりまだ起床には早い時刻だが。

 3人でゆっくり食事をとるには良い時間だろう。


「何か用事があるのか?」

「いえ、特別なことは・・・」

「じゃあ一緒に食べよう・・・って作ってくれたのはリーベだけど」

「え、いいんですか?」

「ああ、迷惑か?」

「そ、そんなことは!食べます!ご一緒させてください」

「それじゃあ準備しよう。おいラント、ベッドの上でバク宙やめろ」

「ふぁーい」

「す、すごいですね」

「すごいか?いや、ていうか褒めちゃだめだ。こいつはすぐ調子に乗る」

「ディヴェルトには言われたくないね」


喧しいことを無視すれば着々と準備が進められた。なんと飲み物も籠の中に入れられていたので瓶を開け、中のミルクをコップに分ける。

二人掛けのテーブルに着く。行儀は悪いが一人は立って食事をしなければならない。

また喧嘩が勃発しようかというところでリーベからじゃんけんというものが提案され、ルールを理解したら勝負。負けたのはリーベ。いやいやなんで君もじゃんけんしたんだ。お客様だぞ。

立とうとするリーベを押しとどめ第三の案「一人がベッドに座る」が提唱され、僕がベッドに腰掛けたことで落ち着きが取り戻された。


3人でゆっくり食事をとる時間は失われたが。




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