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21 -memory of a memory-1

これは記憶だ。



 深緑の森に佇む彼女。

 直前まで走っていたのか肩で息をしている。



はて、今この記憶を覗いているのはいったい誰か。

あの人か、この木か、そこの虫か、はたまた彼女自身か。

知る術もなく記憶は流れる。



 彼女は周囲を眺め口を開く。

 何かを叫んだのだろう。

 決して大きくない身体を忙しなく回転させながら何かに呼びかけている。

 彼女は誰かと一緒にいたはずだった。



彼女の声はここには届かない。

緑という闇の中に彼女は一人だ。



 木漏れ日が彼女の快活そうな目元の尻に浮かんだ水滴を反射させる。

 叫んだせいで脳に酸素がいかなくなったのか彼女は湿った土の上に座り込む。

 手で顔を覆う。

 小さく嗚咽を漏らす。



 と、びくりと肩を震わす。

 音?音だ。間近で木々の隙間をぬう様な音がする。

 来たのだ。

 何が?奴か?

 手が腰の短刀へとかかる。

 カタカタと嫌な音。ああ、これは手が震える音か。

 震えを抑えようと考えた途端、目前に人影を見る。

 ああ、人だ。奴じゃない。

 安堵の息が漏れる。



息づかいを耳にする。

誰の?

あの人か、この木か、そこの虫か、はたまた彼女自身か。

吐息。

それを聞いたそのとき、時間が追いつく。


ここまでは記憶だ。

ここからは空白だ。



 


 

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