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12 沈思黙考の有意性3

散々だ。

今日一日で色々ありすぎる。


目の前の地面にはまき散らされた血痕や真っ白のカイトだったものが粉に成り果てて風に舞っている。


首都での生活が待っていると思いきや国外に追い出され、上乗せでこの化け物だ。


散々だ。

もう面倒くさい、どうにでもなれ、と思考を止めたくなる。


だがディヴェルトが化け物と戦っている。


―俺は考えることでしか役立てないからな


俺・リヒトはディヴェルトやラントほど戦闘能力に秀でていない。

孤児院の頃から戦うのがこいつら兄妹の仕事。

兄ちゃんの俺は頭を使うのが仕事。

ふてくされて仕事をこなせない奴は一緒に生きてく資格がないだろう。


―まだまだ一緒にいたいからな


これから何が待っているか分からない。でもこれからが無ければ何も待ってはいないのだ。


―まず観察


化け物は再度ディヴェルトとの距離を詰める。奴は斬られようが刺されようが死なないのを良いことに、ディヴェルトの突きをもろに食らいながらも前進してくる。

先ほどの交戦の時よりディヴェルトは押され気味だ。

苦しい体勢から半円を描き斬り上げても、避けることなく腕で受け止められる。


化け物の身体から(おびただ)しい量の体液が流れ血の池が出来上がっている。

人間であればまず行動不能になるその量はしかし化け物の戦闘力を削ぐには至らないようだ。


ディヴェルトは自らの頭部めがけて放たれた爪の一閃を腰を落とすことで回避し、一度大剣を身体の近くに寄せ抜刀するようなかたちで化け物の足に向けてそれを薙ぐ。


―普通無理だろう。片手で大剣振り回すなんて


義弟の力任せのその技に思わず化け物から意識を離してしまう。


先日ディヴェルトとラントが実の兄妹に違いないといった所以(ゆえん)はあの赤髪や顔つきだけでなく、この身体能力の高さにもある。


―しかし、弱点という弱点は・・・


化け物の両足は共に地面をしっかりと踏みしめたまま、(すね)から上だけ重力に引かれ後方に落ちる。

背が地に着くと同時にディヴェルトは化け物の身体を地面に縫い付けるように腹部を突き刺す。


だがやはり絶命せず。

赤ん坊がだっこをせがむように両腕を動かし続ける。

ディヴェルトは退きざまに片腕を飛ばすが化け物は気にした様子もなく脛から(・・・)立ち上がった。


もう辺りは血の池どころか赤黒い絵の具で作った海のようになっている。

ディヴェルトの身体も赤黒い雨を浴びてぐっしょりとしている。


―奴に疲労感はない・・・か


異常だ。足も手も無いが立ち上がり向かってくる。死なない。何もかも異常。


・・・と、そこで


―こいつ疲れもしなけりゃ、傷もものともしない。なら何でさっきの一撃は避けた?


思い起こすのは少し前、ディヴェルトが奴の脇腹を少し(えぐ)ったときだ。あの化け物は受け止めるどころか避けていた・・・。


「ラント」

「んにゃ?」


化け物には多少なりとも知性があるようだ。悟られないようラントだけに指示を出す。


「あいつの懐に飛び込める自身は?」

「全然ある」

「じゃあ左脇腹狙ってみてくれ」

「深め?浅め?」

「深めだ」

「りょりょーい」


「はいはーい」と「了解」をまぜんのやめなさい。


と言う間すら与えずラントは化け物との距離を詰める。


一瞬。


懐に滑り込む。


速く参戦したかったのか笑みを浮かべながら。


いつの間にか抜かれ右手に持たれた軍刀は下方から上方へ振り上げられ、化け物の残った右腕をいとも簡単に断ち切る。同時に打刀は横一文字に振りぬかれ数秒遅れて血しぶきが上がる。


流麗な絶技を見てやはり驚きが漏れる。

この兄妹は性格と剣技が一致しない。心配性な力業と大雑把な流麗さ。幼少の頃より、実に不思議で興味深いと感じていた。


チカッ


と、南中の太陽の光が化け物の体内にある何かを反射する。


「ディヴェルト!それだ!」


俺の言わんとすることを理解した義弟は静かにその一点のみを突く。


「ぴゅるるる」と小さく叫び声のようなものをあげ、化け物はくたりと身体を歪める。


色素が消えていく。

あんなにも禍々(まがまが)しさを放っていた赤黒さが突いた一点から真っ白になっていく。


ものの数秒で砂のように崩れたそれを見て

今度こそ奴の絶命を確信した。




以下茶番


甘一「戦闘続きですねっ」

ラント「やっとちょっと動けたね」

甘「刀とか剣とかってかっこいいですね。なんていうかかっこいいです」

ラ「馬鹿っぽいコメントありがと」

甘「ちょ、じゃあ私の代わりに何かコメントできますか?できないでsy」

ラ「明治19年制式の軍刀は旧型軍刀、旧軍刀などと呼ばれ実戦には不向きとされていたが1935年量産された九五式軍刀はより実用」

甘「ちょ、メタい話やめて!知識ひけらかすのやめて!君ばかっていう設定なんだから!」

ラ「ん?」

甘「ばかっていう設定なんだから!」

ラ「・・・」

甘「ばかっていう」

ラ「・・・」

甘「設定、なんだから」

ラ「・・・」

甘「え?あれ?ちょっと軍刀振り上げるのやめましょ?うわっちょっと」

       甘一さんがログアウトしました

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