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B:Lue ~図書室の女王、夢見の人形~  作者: 湊波
図書室の女王、夢見の人形 ―the Truth ... the queen has, the doll dreams-
42/55

act.3


「なんで……」


 低く呻いた。


「どうして……」


 震える拳を握りしめた。

 そして。


「なんでなんだよーっ!?」

「うるさい」


 鉄格子に手をかけ、カイが悲痛な叫びを上げる。

 そのカイに向かって、ソラが容赦なく言い放てば、くるりと彼が振り返った。


「叫ばずにいられるかよ! イシュカに入って早々、牢屋に閉じ込められてるってのに!」

「誰のせいだと思ってるんだよ」

「う……」


 ソラがじとりとカイを見つめる。

 途端、憤慨していたカイが気まずげに目をそらした。

 ソラはため息をついて、堅い牢屋の壁に背を預ける。

 そう、牢屋だ。

 まごうこと無く、正真正銘の牢屋。


 門での戦いの後、本を破損したとかいうよく分からない罪でしょっぴかれた。

 問答無用で頭から麻袋を被せられ、しばらく馬車で輸送された先がここだ。


 イシュカに入って早々、こんなことになるだなんて誰が想像できただろう。

 出来るわけない。ソラは顔をしかめる。


「というか、カイはなんで、あんなにボロボロの本を持ってたんだよ?」

「だ、だってオーチャードが持ってけ、って言うから……」

「オーチャード……というと、あの風の龍か?」


 ソラの隣で、相変わらずリューを膝枕したジンが首を傾げる。

 ソラは一つ頷いた。


「そうだよ。ルーサンが契約者。その兄がチモシー。三人は確か、エレミアに行くって言ってたけど」

「ソラの故郷に? 観光か何かか?」

「まさか。あそこで龍によく似た魔物を見たって、僕が言ったんだ。そしたら、ドラゴンかもしれないから、見に行きたいって」

「ふむ……?」

「元々、ルーサン達は竜について調べるために旅してたらしいから……うーん、でもオーチャードが本を持っていけ、って言ったのなら、やっぱり何か意味が、」

「ま、俺が受け取ったのは条件反射だけどな」


 あるんじゃないか。そうソラが言いかけたところで、カイが自信満々に言い放つ。

 なんだか嫌な予感がした。

 それでも一縷の望みを持って、ソラは恐る恐る口を開く。


「ちなみに聞くけど、条件反射って?」

「旅人よ、これを持って行きなされ……っていう流れだと思ったんだよ! そしたら当然受け取るだろ! 受け取ってなんぼだろ!」

「……まともな返事を期待するのが間違いだった……」

「ってなんでそんな残念そうな顔するんだよ!? 大丈夫だって! セロリー道理なら、牢屋に入れられるのは王様に会えるフラグだから!」

「なんのフラグだよ!? ていうか、『セオリー』を『セロリー』って言ってる時点で不安しかないし!」

「む。好き嫌いは良くないぞ、ソラ。ちなみに私はセロリよりブロッコリー派だ」

「どうしてそこで、ちなんできたんだよ!?」


 ジンのマイペースな発言にソラが突っ込む。

 その時だった。


「呑気に会話なんかしてる場合じゃねーのですよ」


 鉄格子の軋む音にソラたちが振り返る。

 入り口に、あの銀髪の少女と数人の警備隊の男たちが見えた。

 ソラは体を強ばらせる。


「なんの用だよ?」

「そんなの決まっているのですよ。裁判なのです」

「さ、裁判って……」

「大丈夫なのですよ。緊張は不要なのです」


 銀髪の少女は、にこりとソラに微笑みかけた。

 それはもう、天使のような微笑みを浮かべて。

 言う。

 さらっと。


「どうせ、貴方がたの言い分は聞かんのですから」

「え、ちょ、それって裁判って言わないよね!? 理不尽だよね!?」

「理不尽? 失敬な! 女王様直々に裁いてくださるのですよっ! 立場をわきまえやがれなのですっ!」

「いやいや! こっちだって、ちゃんと言いたいことが……って、女王様……?」


 勢いで反論しかけたソラは、そこで、はた、と言葉を止めた。

 目を瞬かせる。女王様。その言葉をもう一度反芻してみる。

 そんなソラに向かって、銀髪の少女が得意げに鼻を鳴らす。


「この国では、全て女王様が裁かれるのですよ。罪人の身で、女王様の姿を見られること、光栄に思いやがれなのです」


 不本意にもカイと目があった。

 フラグは見事に回収されたらしい。


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