表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

トランクの中の海 ~ぼくは大きな船に乗った~

掲載日:2026/04/08

ポカポカ陽気の午後。

ミナトは古いトランクをひっぱり出して、遊んでいました。


ずいぶん古いものです。

お父さんの、お父さんの、そのまたお父さんのトランクです。

えーと、ひいおじいちゃんと言うんだったかな。

船長さんだった、ひいおじいちゃんが船に乗る時に使っていたのだそうです。


ところどころ、すりきれていますが、しっかりした革でできていて、くすんだ金色の金具がついています。

ミナトのお気に入りです。


ミナトはトランクの中にすわって、いつものようにロケットごっこをしていました。

トランクの中が操縦席です。


ふと。


いつもとちがうことがしたくなりました。

何がいいかなぁ。

そうだ。船長さんのトランクだから、お船にしよう。


「大きな船になれ!」


ミナトがトランクから出て、大いばりで命令すると、突然「ボォ〜」と大きな音がして、トランクの中からザブザブザブと水があふれ出しました。

水は、ミナトのおもちゃを押し流して、部屋の中にどんどん広がっていきます。

魚がピチンと跳ねました。

部屋の中は、潮の香りでいっぱいです。


どうしよう。どうしよう。


あわてるミナトの頭を大きな手がなでました。

「ようこそ、私の船へ」


びっくりしたミナトが見上げると、白くてカッコいい帽子をかぶった、優しそうなおじいさんが目を細めてミナトを見ていました。

白い制服の胸には、勲章がいっぱいついています。


「お名前は?」


おじいさんがたずねました。


「ぼく、ミナト」


少し緊張しながら、そう答えると、おじいさんはもう一度ミナトの頭をなでて、ニコッと笑いました。


「よく来たね、ミナトくん。ほら、向こうを見てごらん」


おじいさんが指さしました。

広い、広い、海の上です。

いつの間にかミナトは大きな船に乗って、海を渡っているのでした。


青い空には白い雲が浮かんで、太陽がまぶしいほどです。

波がキラキラ光っています。

気持ちの良い風がミナトの体を吹き抜けていきます。


すごい!

すごいぞ!

うわぁ!


ミナトのほっぺたが、赤く輝きました。


「ミナトくん、船は気に入ったかな?」

「うん!」

「いつでも遊びにおいで。そうだ、これをミナトくんにあげよう」


おじいさんは、胸の勲章を一つはずして、ミナトの手のひらに乗せました。


「ありがとう!」


ーー気がつくと、ミナトはトランクの中に、ぼんやりとすわっていました。

部屋は、元通りに戻っていました。

日差しが少し傾いています。


「夢、だったのかな」


ミナトがギュッとにぎっていた手をひらくと、そこには白い貝殻が一つ乗っていました。

そっと耳にあてると、ザザァと海の音がしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ