第1話
初めまして、よろしくお願いします。
「あー!! ムカつく!! なぁーにが『今はVライバーって手もあるよ』だ! 見た目で歌聞くか判断してんのはそっちだろうが!!」
お風呂で叫んでも許されたいから、郊外の一軒家を選んだ。近所の民家は歩いて5分以上だから近所迷惑になる心配もない。
格安で時々、奇妙な家鳴りや、私しかいない部屋で頭を撫でられることはあるが、文句はない。
「Vライバーだって考えたさ! こっちだっていろいろ考えてんだよ! 憧れだってあるよ! ちやほやされたいよ! かわいいって言われたいよ!」
産んでくれた母を恨むつもりはない。
メイクが下手な私が悪いのもわかっている。
でも――
「他人から遠回しに『ブス』って言われる人間の気持ちも考えろやぁぁああああ!!!」
アイドルに憧れて、かわいくなりたくて、何より、歌を聞いてほしくて。
私だっていつまでたっても『売れないアイドル』なのは精神的に辛い。
水音を立てながら立ち上がって、湯気の上がる体のまま、すっ、と息を吸う。怒りを鎮めるために大好きなバラードを歌い出した。
誰も聞いてくれなくてもいい。
ここなら思い切り歌える。
お風呂場は声が良く響くのですごく気持ちがいい。
そう思った瞬間、突然、お風呂が光り出した。
「え? え、な、なに? なにこれ!?」
パニックで逃げ出すよりも体が浮く方が早く、恐怖で目を閉じる。
ふわふわする感覚がなくなってから私が立っていたのは石でできた床だった。お風呂のタイルではなく、それよりもずっと硬くて冷たい。
「っ……全員、男は目を伏せろ! こちらは聖女様だ!」
低いけれどよく通る男の人の声。恐る恐る目を開けると青っぽい銀の目と、くすんだ、けれども艶やかな銀髪が見えた。
彼は私の前に一歩進み出て、
「我が求めに応じていただき感謝します、聖女様」
先程の声と同じ、低いけれどよく通る声でそう言った。
「……失礼します」
銀髪の男はそういうと、自分の着ていた魔法使いの服みたいな丈の長い服を私にかけてくれた。考えてみればかなり寒い。
さっきまでお風呂で温まっていたから余計に……
そう思ってなぜ服をかけられたのか、一瞬で理解してしまった。
「ぎ……」
「ぎ?」
「ギャアアアアアアアアア!!!!!!」
どうやら私は、全裸で召喚されたらしい。




